第四話
翌日。無事、実力を認められたアーデルハイト。盾持ち装備の姿で、市街へと足を運んでいた。
もちろん、冒険者としてギルドに登録する為である。
「お嬢様、くれぐれも家名を悟られないようにお気を付けくださいね」
「ええ。分かっていますわ」
アーデルハイトに付き従うのは、冒険者らしき姿となったクララ。専属侍女たるもの、どこにでも付き従う。また、庶民の習慣、常識にうといアーデルハイトの補佐役でもある。
無事、冒険者ギルドに到着した二人。中へ入ると、数多くの冒険者たちで賑わっていた。
目を輝かせながら、辺りを見回すアーデルハイト。
このギルドは、食事処が併設されているタイプの様子。軽食を取りながら、作戦会議らしきことをやっている冒険者。真っ昼間から酒を飲む冒険者。色々な民の姿が見て取れた。
どれも、アーデルハイトが初めて見る姿である。
「お嬢様。まずは登録を」
「そうでしたわ。行きましょう、クララ!」
クララに言われて。アーデルハイトは受付らしきカウンターへと足を運ぶ。
「ようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付の女性が、アーデルハイトに尋ねる。
「冒険者として、登録をしたいのですわ」
「冒険者登録ですね。後ろの方もでしょうか?」
「どうします、クララ?」
アーデルハイトが振り返り、尋ねる。クララは少し考える仕草を見せてから答える。
「これから常に行動を共にしますから。同じく冒険者であった方が都合が良いかと思います」
「では、二人とも登録をお願いしますわ」
「はい。かしこまりました。では、こちらに必要事項をご記入下さい」
受付から手渡された用紙。名前や、職業。アピールポイント。住所など。様々な記入欄があった。
これを受け取り、アーデルハイトとクララは順に書き込んでいく。
中でも、アーデルハイトは全て本当のことを書くわけにはいかない。住所は、この為に用意した一軒家の住所。クララも同様の住所を記す。
そして名前。アーデルハイト=レイヴンアローなんて記入をすれば、騒ぎが起こる。故に偽名として『アディ』とだけ書き込んだ。
そうして必要事項を記入し終えると。アーデルハイト――アディとクララは用紙を受付に渡す。
「はい。確認いたします。それでは、この間に能力審査に入ります」
言って、水晶玉らしきものが付いた道具を取り出す受付。それを差し出すと、説明を始める。
「こちらの水晶は、触れた人の資質、能力を測る能力を持っている魔道具です。冒険者となる方は、この道具を使って定期的に能力の査定を行います」
「能力の査定、ですの?」
初耳の情報。アディは聞き返す。
「はい。近年導入された仕組みなんです。より正確な冒険者様の評価をする為に開発されたものなんです」
「どのような形で評価されますの?」
「測定出来る能力は五つ。生命、身体、耐久、魔力、抵抗の五つになります。そして、これらの総合数値から、ギルドの方で総合的な攻撃力と防御力の評価を下します。基本的には、総合評価の方を冒険者の方の能力としてみなします」
と、受付に説明されて。なるほど、と納得するアディ。クララも同様であった。
実は――この辺りは、この世界とそっくりな、ゲームの世界と全く同じ仕組みになっている。
この世界の人間には、ステータスが存在する。それが、受付も説明した五つである。
生命は、言わば最大ヒットポイント。これが多いほど、多くのダメージに耐えられる。
身体は、文字通り身体能力の高さ。また、ダメージ判定の成功、失敗の判断に使われる『命中率』や『回避率』も、この数値に大きく影響する。
また、多少ながら与えるダメージ量の増減にも影響する。
耐久は、文字通り耐久力の高さ。受けるダメージ量の軽減に影響する。
魔力は、本人の持つ魔力の強さ。魔力、という言葉を使っているけれど。実は魔法に限らず、武器攻撃も魔力によって威力が強化される。
そうした理由から、与えるダメージ量の増加に大きく影響する。
最後に抵抗。これは状態異常などの特殊効果に対する抵抗力を指す。
例えば当たると相手を転倒させるスキルや、吹き飛ばすスキル。相手を痺れさせるスキル。火傷させるスキル。そういった副次効果をどの程度無効化できるかに影響する。
だから抵抗が高い人間は、炎を直接触っても火傷はしない。耐久の数値次第で、ダメージは負うけれど。
――といったようなシステムが、ゲームの世界には存在していた。
それと全く同じものが、この世界にもあって。冒険者ギルドで測定まで出来るのである。




