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盾持ち令嬢の英雄譚  作者: 雨降波近
第二章 今更戻れと言われても、もう遅いですわ!
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第一話




 決闘騒動から一年。アーデルハイト十二歳の時。

 とある目的から、レイヴンアロー家の庭には複数の使用人たち。そしてマックスハイム。アーデルハイト。クララが集合していた。


「――では、実力を証明してみせなさい」

「はい、お父様」


 言うと、アーデルハイトは盾を構える。

 この日。アーデルハイトは、ある目的の為に父を説得しようとしていた。


 その目的とは……『冒険者』として活動すること。


 世間一般に、戦闘向けの職業を持つ人々は、戦闘を生業とすることが多い。

 騎士、兵士、傭兵や警吏。様々な職業があれども、絶対数は少ない。戦闘職に就いた者が最も多い生業とは。それが『冒険者』である。


 この世界、各地いたる所に魔物という生物が存在している。人間でいう、職業スキルや魔法のような力を使う獣のことだ。

 そんな魔物が跋扈する自然界は、極めて危険な領域といえる。


 けれど、人々はそんな魔物との戦いを制してきた。

 歴史の中で、最も長く、多くの魔物を討伐してきたのが冒険者である。


 魔物と戦う人々が寄り合いを作り、集団となった。やがて力を増した人類は生活圏を広げ、大都市を作り上げる。

 それでもなお、人々は戦い続けた。魔物を狩り、安全を確保し、食料や資源を求めて。


 そうした活動は、やがて魔物を追うように。さながら『冒険』を求めるかのように、自然界の奥深くまで手を伸ばすようになっていった。

 やがて、魔物と戦うことを生業とする人々が、冒険者と呼ばれるようになった。


 ――そして現代。冒険者は、冒険者ギルドという組織によって管理されている。

 魔物を討伐するだけでない。危険地帯から貴重な資源を採集したり。時には市街地で一般の仕事の手伝いをすることもあったり。

 と、ある種の便利屋のようなことまでするようになっている。


 そうして人々の生活に根ざした、冒険者という生業は。

 アーデルハイトにとって、正に民を守るという一つの理想形であった。


 故に、冒険者になりたいと思った。冒険者とは何か。そして民の幸せとは。望みとは。守るべきものとは何か。

 それを知りたいと思ったのだ。


 だから――ある日、アーデルハイトは思いを父に伝えた。

 すると、マックスハイムはこう答えた。


「……どうしても、と言うのなら。それに相応しい実力を身に着けてからにしなさい。それに冒険者になれるのは十二歳からだよ。まだ一年近く時間がある。ゆっくり考えなさい」


 言われた言葉を真に受けて。アーデルハイトは日夜訓練に励んだ。そうして、今では単なるシールドバッシュを自在に操るほどに成長している。


 が――娘がまさか、そんなびっくり人間に成長しているとはつゆ知らず。

 普通のお披露目会か何かのつもりで、マックスハイムはこの日、この時を迎えた。


 彼だけではない。使用人たちも皆、アーデルハイトの修行の成果のお披露目会のつもりであった。

 微笑ましいものを見るような。優しい目を向ける人々。

 そんな中で、ただ一人。練習にずっと付き合っていたクララだけが、表情を引き攣らせていた。


「では、まずはわたくしの習得した技を順番に披露させていただきますわ。――クララ、準備はよろしいですわね?」

「は、はいっ!」


 アーデルハイトに言われて、クララが頷く。そして、他の使用人に合図を出す。

 すると、数人の使用人が複数の荷物を運び込む。


 それらは、見るからに頑丈そうな、立派な重装鎧。


「――では、御覧くださいな」


 優雅にカーテシーをして見せて。いよいよ、お披露目会が始まる。

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