街道
数十年後――。
ダルティアの街は今日も栄えていた。
交易が盛んで、街道の要所でもあったこの街は、幾多の苦難を越えて今の状況に至ったという。
もちろん、そんな場所で冒険者がいないはずもなく――。
「お、このロング・ソード、良いなあ」
「銀5枚にまけとくよ」
そんな会話があちこちで沸き上がっていた。
そんなときだった。
「おい、ガキ! 俺にぶつかって、何の礼もないだと?」
ひとりの柄の悪そうな戦士が少年に文句をつけていた。
「まあ、少年じゃろうて。許してやんなさい」
パーティーの老魔術師が止めに入る。
少年は足を止めない。
「おい、糞ガキ! 謝りの一つもないのかよ!」
戦士が少年の肩を掴んだそのときだった。
少年がゆっくりと振り返った。
老魔術師が少年に「まあ、ちょっとは謝ったら――」と言ったときだった。
次の瞬間、悲鳴に変わった。、
「この者、呪われておる! 近づくな!」
「は? ガキの呪いくらい、どうってこと――」
戦士の右腕は、肩まで溶けていた。
「ひぃっ!」
街道が悲鳴に包まれると同時に、人は雲散霧消し、商品だけが残った。
「……怒っちゃダメなんだ……。まだ……」
少年は誰も居なくなった街道を、唯一人、蹌踉めきつつも歩き続けていった。