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第97話 七つの大罪

花柳先生夫妻の後押しもあって、吹っ切れずにいた私はみんなの(げき)で前を行くことになった。


先生たちも武術の心得があり、罪人たちをことごとく倒していった。


私たちはホロビノミコの構えるところへと奥へ進み、長い階段を登っていく。


しかしあまりの距離の長さにわかば先輩はバテはじめ、私たちについて行こうとムリして走ったりもする。


口寄せを使おうも大きすぎる罪魔の力でかき消され、自分たちの足で進むしかないと判断した。


ところが体力自慢のすみれちゃんでさえ限界が訪れ、罪人たちも湧いて出て着た瞬間だった…


「おい!お嬢ちゃんに触れんじゃねぇ!」


「えっ…サクラオー!?どうしてここが!?てか…喋れたんだ…!」


「人間の足でここまで走れたのは大したもんだな。俺様はこう見えて妖怪の馬だから人間界の馬より体力には自信あんだ。他の舎弟たちも連れてきたぜ。お前ら、武器を持って乗りな。」


「サクラオー…ありがとう。」


突然の救援で私たちの足を休ませ、サクラオー率いる口寄せ馬たちに乗せられて上へ進む。


罪人たちは棒を持って暴動レベルで襲いかかる。


それでもひまわりちゃんが槍を片手で振り回して道を開き、私とわかばちゃん、るりりゃんで遠距離から倒し、すみれちゃんも棒で突いたりした。


もみじちゃんは両手が塞がる武器なので普段から携帯している手裏剣を投げ、毒を盛っているので罪人たちは苦しんでいた。


しかしひまわりちゃんは浮かない顔をしていて、ずっと何か深い考え事をしていた。


「ひまわり…?」


「どうしたの?お腹痛いの?」


「ううん…どうもおかしいなって思って…。敵の罪人たちは確かに本気で向かっているけど、何故か力を感じないんだよね。なんか…上手く誘われているっていうか、罠にかかっている気分なんだ。」


「ひまわりも感じたか…。私も薄々そうじゃないかと思っていた。」


「じゃあこのまま引き下がるの?」


「ううん!罠だってわかっててもいずれ行かないといけないもん!罠だって覚悟の上で乗りこんだから引き下がらないよ!」


「決まりだな。では参るぞ!はっ!」

罠だとわかっていてもひまわりちゃんは臆するどころか猪突猛進のごとく手綱を引いて馬を走らせる。


(やぐら)狭間(さま)からは多数の矢と鉄砲の弾が放たれてサクラオーたちはそれをかわす。


土塁(どるい)もかなりの急傾斜で今にも崩れそうながらもそれを強引に飛び込んで登りきった。


しかしサクラオーたちはここまで長い距離を走ってきたので、もう体力の限界がいつ来てもおかしくなかった。


神社で保護しているはずなのに綱を引きちぎってまで平安館まで駆けつけ、そしてかなり登ったはずの私たちまで追いついたくらいだからマラソンより長く走っているはず。


そしてついに限界が訪れた…


「きゃあっ!」


「くっ…すまねぇ…!はぁ…はぁ…!ちくしょう…もう限界だ…!」


「サクラオー!もういいよ…あなたは十分頑張った!今度は私たちに任せて!みんなはここで休んでて!」


「さて…ここが相手の居住でございますね…。」


「正面から入るか裏から入るか…ひまわりにだけ作戦を考えさせると彼女も頭が疲れるだろう。私も作戦考えてもいいかな。」


「すみれ…ありがとう。私一人だと確かに私が倒れた時に依存したせいで士気が下がっちゃうもんね。」


「今までずっと考え事してて疲れたろう。頭をゆっくり休めるといいよ。ここはやはり…正面突破しかないだろう。挑発だとわかってても、計画通りだったとしても…裏から入ったところでホロビノミコは私たちの事を見ているかもしれない。だったら正面からあえて入り、対峙(たいじ)する方がいいだろう。」


「そうね…悔しいけど相手は神だものね。」


「人間なら裏から入れるでございますが、そうはいかないでございますからね。」


「私もそれがいいと思う。妖魔大王なのに足を引っ張ってごめんね。」


「私も最初は弱気になっちゃって…。ここからは本当の命がけの勝負…行こう!」


「うん!」


体力の限界が来たサクラオーたちを休ませるために置いていき、私たちは天守のさらに奥へと進んだ。


罪人たちはさすがにここまで湧いたり追ったりせず、本当に待ち構えられているようだった。


最上階まで行くとそこにはアクドーだけでなくもう6人のうめき声と怒りや憎しみの声が聞こえてきた。


そこには西暦時代からずっとホロビノミコにたぶらかされ、その声の正体は追い詰められては生贄として自ら命を絶った悪魔になった人間たちだった。


アクドーは人間への憎悪と嫌悪だけで怒りに任せ滅ぼそうとした憤怒という罪だった。


金儲けのために何でもやって世界中を貧困に追い込み誰かを蹴落としては捕まった時も命乞いも下強欲の大企業の会長。


自分だけ美味しいものを食べ国民を飢餓に追い込み民衆が不治の病にかかっても無視して食べ続けた暴食の将軍。


やるべき事を一切やらず学ぶことをサボった結果一族どころか国の信用を落とし堕落して一族を滅ぼした怠惰の貴族。


異性を快楽に溺れさせ依存症に陥れて病気だけでなく性的中毒を多くパンデミックさせた色欲の遊女。


劣等感が強く誰にでも執念深く気に入らないからといって大粛清を繰り返してきた嫉妬の政治家。


そして自分を崇めよと言わんばかりに他人を見下して神と自称し混乱を招いた傲慢の宗教家とどれも教科書に載っていた悪魔となった人々だった。


鏡に映る悪魔になった人々は私たちに威圧的に大罪を押し付けようとしていた。


そんな誘惑に負けなかった私たちは奥へと進み、そして黒い鳥居をくぐって祭壇にたどり着いた。


そこには巫女装束を着ている人とは思えないくらい青白い肌と美しくもツヤがない長い黒髪、その眼差しは魂まで吸いとられそうだった。


勇気を出して私たちは妖魔の力をキープして禍々しい女性に近づく。


「よくぞ参りました…妖魔使い月光花よ。どうでしょう…私が育て上げた大罪の獄魔たちは。彼らが大罪を背負ったおかげで私は忌々しい神々に復讐することが出来ます。世界中を罪魔の力で混乱を招き、そして神々に救われて追い込まれた私は極東の日本にたどり着きました。そこなら罪魔の力で支配できると思ったのですが、忌々しい八咫烏と日本の神々が私を地獄界に封印し、罪魔の力をエネルギーにするしか復活する方法がなかったのです。そこで見込みのある人間を利用し、生贄として捧げる事で私は復活するのです。そしてこの結果…私は見事封印を解き復活したのです。人間よ…何故(なにゆえ)罪を背負ってもなお生き続けるのでしょう…。存在自体が罪ならばその罪を背負ったまま罪人として私が自ら裁きを下しましょう。そしてついに理不尽に裁かれる罪人たちは地上と黄泉の国、輪廻の世界に復讐を果たすときが来ました。あなたたちを葬り、永遠の罪を背負ったまま苦しみを味合わせましょう。」


「そっか…人間にそうやって罪を背負わせ、世界を自分の思い通りにして自分だけの極楽浄土を創るんだね…。アクドーはあなたに利用された哀れな人間の一人だったんだ…。だったらアクドーを長い苦しみに陥れたあなたを許さない!ホロビノミコ!1万年以上続いたこの因縁に終止符を打つ!人妖神社の巫女として!」


「幼なじみだってここまで来たんだ。ここで逃げたら女が廃るよね。人間に罪を背負わせるなんて最低…!お前を倒して白黒ハッキリつけさせてもらうよ!」


「太古の昔からあなたは存在しているのでしたね…。忍びとしてのプライドよりも…先輩方ともっと一緒にいたいです…。紅葉流の名に懸けてあなたを必ず討伐してみせます!」


「みんな罪を背負いながらも償おうと頑張ってきたんだ。感情によってそう簡単にいかなくても…みんなだって懺悔をして心を潤してきたんだ。君のような最低な悪魔には絶対に屈しないさ!」


「よくも長い間も人間たちを陥れてくれたな…。貴様みたいな悪魔は人間にとっては切っても切れぬ縁だろうが…私がその縁を切り、貴様によって背負わされた罪という十字架から解放してやる!」


「ここまで罪魔の力が大きいとはね…。でも私たちも妖魔の力を受け継ぐ妖魔使いとして使命を果たすわ。ご先祖様が長い年月をかけて築き上げた平和を壊そうだなんて…絶対にあなたから世界を守るわ!」


「あなたのせいで…どれだけの人々が背負うことのない罪を背負った事でございましょう…。そしてその罪を背負ったまま堕落し、本当に罪人となられたことを何も思わないのでございましたら…私はあなたを決して許さないでございます!」


「もう二度と人間に罪を背負わせないように何度祈ったことかな…。みんなとここまで来たことに後悔はないよ。地獄界の罪人を巻き込んでよくもパパを…。過去にも妖魔界を荒してきたんだよね…。あなたのせいで何度も妖魔界までメチャクチャにしてくれて…妖魔大王としてあなたを絶対に許さない!覚悟しなさい!」


こうして私たちは妖魔使いとしてホロビノミコと戦いを始める。


人間界だけでなく妖魔界も何度かホロビノミコによって侵攻されたみたいだった。


人間界と妖魔界、そして輪廻の世界を守るために私たちはホロビノミコに立ち向かった。


つづく!

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