第95話 スメラギ・ヤタノ
~焔間ヒメギクside~
はながヒミコさんの試練を突破し、私たちはヒノモト山へ向かう。
そこでは日本を建国に導いた神である八咫烏が祀られていて、妖魔界でもレジェンド的存在になっている。
でもその姿を見た者は歴代妖魔大王の中でもパパだけで、人間界でも見た人がいるかいないかわかっていない。
そんな伝説の妖怪に会いに行くと思うと、妖魔大王になったとはいえ緊張してきた。
ヒノモト山はヤマトミヤコの町からはとても遠く、馬を使おうも足場が悪く途中で疲れてしまいそうなので私たちは歩いていく。
途中で休憩しようとしても人間界が危ういのでそうも言ってられず、妖魔の力で体力をカバーするしかなかった。
やっとたどり着けば…山頂まで登るのにまた歩くことになる。
「ヒメギクちゃん…大丈夫…?」
「心配しないで…。これでも妖魔大王として体力は鍛えているつもりだから…。はなは大丈夫?」
「なんか…戦いで体力がついちゃった。流鏑馬もやっていたから…足腰には自信あるんだ。」
「確かに乗馬は足腰と体幹が強くないと出来ないよね…。私にも試練はあるのかな。」
「ヒメギクちゃん…やっぱり自分は無力だと思ってる?」
「あはは…やっぱりはなには敵わないな…。」
「ヒメギクちゃんがあの時に足止めしなかったら…私とひまわりちゃんはザイマ一族にやられていたんだよ…。それに最後はヒメギクちゃんも妖魔使いとして…一緒に戦えて嬉しかったんだ。今は妖魔大王さまになっちゃったけど…私たちは友達だよ?」
「はな…。その言葉を聞いて安心した…。頑張って一緒に登ろう。」
「うん。」
山頂に行くにはデコボコの足場だけでなく、鎖を登ったり滝の後ろへ回ったり、突風が吹いたり寒暖の差が激しかったりと並の人間どころか妖怪でも心身に堪えるほどの辛い道のりだった。
それでも私は案内してくれたヒミコさんに託された人間界のために私たちは登り続けた。
ようやく山頂に着くと、そこにはボロボロながらも吹っ切れた顔をしたみんなが待っていた。
「遅いよーはなー!」
「ようやく全員集合でございますね!」
「みんな…!」
「ということは、はなも七人将の試練を終えたんだね。」
「えっ…じゃあみんなも…?」
「もちろんよ!私たちは七つの大罪を乗り越えたんだから!」
「でも不思議と私たちは何故かここに行かなければならないと使命感を感じてここに来ました。」
「何故だか知らないが、これも運命なのかもしれないな。」
「実は…七人将の一人のヒミコ・ハナヤギさんが言ってたんだけど、ここは日本建国の神である八咫烏が祀られている社なんだって。みんなもおそらく導かれるように向かっているからそこに行くようにって促されて…」
「じゃあはなだけ知ってたの!?ずるーい!」
「でも全員無事でよかったじゃないか。」
「うむ。これで月光花は集合した。残るはここで何をすればいいのかだ。」
「そうね…ここは旧日本神話の神様がいるというけれど、どうすればいいのかしら…?」
「この社では妖魔大王が祈りを捧げ、妖魔界と人間界の日本を結ぶ儀式を行うだけでなく日常に潜む神々に感謝を伝える儀式も行うんだ。一時期は人間の勘違いで生贄があったけど、今は科学の発達でその必要もなくなったんだ。元々生贄なんていらなかったんだけどね…。その生贄の犠牲になった人間もここで祀っているんだ。」
「そうなんだ。妖魔界って人間界と切っても切れない縁で結ばれているんだね。」
「うん。そういえば…パパにもしもの事があったら妖魔大王を襲名し、この地を訪れよ…と言われてたの思い出した。それが今だとすれば…みんな!篠笛を演奏して!」
「えっと…いつもの篠笛よね?」
「はて…何故篠笛なのでしょう?」
「この篠笛は初代妖魔大王が妖魔の力を受け継ぐ人間が妖魔使いとして悪と罪を絶ち切るのをサポートするために作られたものなんだ。七人将は紀元前時代から最近の新暦までホロビノミコの手先と戦ってきた。最後の手先がザイマ一族で、他にももっと古い組織があったんだ。でも七人将のうち六人がたった一人でそれぞれの時代で壊滅させたんだけど…腑に落ちないのが組織のトップの全員が自らを生贄にホロビノミコの召喚に貢献してしまったことなんだ。その7人目がアクドーになり…古文書に書いてあった最悪の条件が揃っちゃったんだ。」
「その条件はもしかして…七つの大罪の悪魔となった人間のうち、最も罪魔の力が強い者が7人も生贄に捧げる事で降臨するということだね。」
「うん、すみれの言う通りだよ。そしてその篠笛は現世であるみんなに受け継がれた…。妖魔界の伝説が本当なら、その篠笛で八咫烏の力を得られるはず。」
「だったらやってみる価値はあるだろう。ヒメギクが嘘をつくような者ではない事は皆も知っていると思う。私はその伝説を信じてみるぞ。」
「つばき…。」
「決まりでございますね。もう全員ヒメギクさんを信じ、伝説を受け継ぐ覚悟は出来ているでございますよ。それでは皆さん…準備はよろしいでございますね?」
「はい!」
「ありがとう…。私も篠笛を用意するね。じゃあ…私の合図でいつもの怪しい曲を吹こう。せーの…」
私の合図でみんなも篠笛の演奏をし、妖魔界の言い伝えを信じる事にした。
演奏を終えても何も起こらないので所詮は言い伝えなのかな…と思っていたら、突然黄金の神々しい光が降り注いだ。
同時に足元から黒い霧が吹き上がり、一体何をされるのか不安になった私たちは変身しようとした。
ところが変身することが出来ず、罠だったのかとみんなを巻き込んだ自分を責めた。
すると不思議とみんなは安心した表情をしていて、私も徐々に癒されていく気持ちになった。
しばらくすると、神々しい男性の声が聞こえ私たちに声をかけてきた。
「私を呼んだのはお前たちか?」
「あなたは…?」
「私はスメラギ・ヤタノ。人間界では八咫烏と呼ばれている。お前たちが妖魔使いの後継者か?」
「はい。月光花といいます。そして彼女は妖魔大王に襲名した焔間ヒメギクです。」
「お前が新たな妖魔大王か。長きに渡り妖魔界を平和と繁栄を築いた事を感謝しよう。だが人間界にはどうやら届かなかったようだな。」
「それは…」
「自分自身を無力だと責めて現実から目を逸らすな。お前にはお前にしか出来ない事がある。それは歴代の妖魔大王や、数々の大罪を背負った悪の組織を討伐した七人将たちの無念を晴らす事だ。残るはホロビノミコの完全討伐のみだ。私が直接手を下したいのだが、かつて国ではなかった日本でホロビノミコと一騎打ちをし、相討ちとなって力を使い果たしてしまったのだ。そしてまだ回復には至っていない…私の無念をもお前たちは晴らす役目がある。人間たちに大罪を悪として滅ぼす事は永遠に不可能だが、その大罪を利用して大罪から成長にする事は出来る。妖魔使いの後継者たちよ…私の力を…罪魔退散・妖魔月光斬は覚えているな。」
「はい。最後の生贄になってしまったアクドーことザイマ一族に放ちました。」
「アクドー…最後のザイマ一族の将軍だな。ザイマ一族は紀元前の頃から存在し、ホロビノミコの力を得た悪魔となった人間が何度も結成し、そして自らを生贄にしては解散を繰り返してきた末永き悪魔の組織だ。日本の平和と安寧のために…お前たちの健闘を祈ろう。そして今のお前たちなら…真・罪魔退散・妖魔月光斬が使えるはずだ。ホロビノミコが弱った時、最後の力を振り絞る時、そして決着をつける時に使いなさい。さぁ行け、妖魔使い月光花よ。私でさえ成し遂げられなかった平和な世界を日ノ本国…今は日本と呼んだな。日本から掴み取るのだ。」
スメラギ・ヤタノさまはそう言い残し、神々しい空間は消えていった。
消えた瞬間に意識が遠のき、私たちはそのまま眠るように倒れ込んでしまった…。
そして気が付くと人間界に戻っていて、きっとスメラギ・ヤタノさまが日本を託すために送ってくださったのかもしれない。
覚悟を決めた私たちは平安館に乗り込むのだった。
紀元前の頃から妖魔使いとザイマ一族は何10万年も前から戦っていて、追い込んで勝利しては生贄を出してしまって降臨に貢献してしまったりというのを繰り返してしまった。
それが私たちの代にも受け継がれてしまい、ついにホロビノミコが召喚され降臨してしまった。
そして私たちの学び舎である平安館に居住を構えていた。
だからこそこの最後の戦いは絶対に負けられない!
つづく!




