第93話 ノブナガ・ヒノ
~日向ひまわりside~
みんなと一緒に妖魔界に行ったはずなのに、そのみんなとはぐれてしまった私はジッとして様子を伺うのも無駄と判断してとにかく移動する事にした。
それに私は何者かに引き寄せられている気がして、どうも落ち着いて考えることが出来なかった。
とりあえず珍しく策を考えずに移動していると、そこには竹林と接している町並みがあった。
人々の姿は完全に人間ではないので、妖魔界に本当に来たんだと確信する。
すると鳥人間のような妖怪が私に声をかけた。
「おや、人間がここに来るとは珍しい。本来なら罪人の奇襲に巻き込まないためにも人間は立ち入りは禁じられているが、君からは大きな妖魔の力を感じるよ。」
「やっぱりわかるんだね!ここは本当に妖魔界なの?」
「そうだよ。ここは妖魔界のキョウラクの町だよ。とりあえずこの町でゆっくりしておいで。君のような人間は特別さ。」
「ありがとう!」
妖怪の世界といえばもっとドロドロとした湿地みたいなところと思ったけど、意外と人間の街並みと変わらないというか、奈良時代から江戸時代の街並みがそのまま現代化風にアレンジされた感じで、あの銀SOULというアニメみたいなものだった。
翼がない妖怪はバイクや車を運転したり、鉄道も普通にあるし、テレビやスマートフォンも普及している。
あまりにも人間界と変わらないのに不思議と人間とは違う生活で海外に来た気分にもなった。
「って、感心している場合じゃないや!早く七人将の手がかりを探さないと人間界が危ない!」
私はいろんな妖怪たちに七人将の聞き込みをしようとした。
ところが妖怪のみんなはあまり答えようとしないというか、どうも何かに気を遣うようにかくまっている感じがした。
さとりの能力を使おうも妖怪相手だと閉心術で簡単に読めないしどうしようと思った。
「そういえば…罪人の奇襲があるってさっき言ってたような…。」
「気が付いたんか?」
「うわっ!いつの間に!?」
「七人将さまは罪人共を率いていたザイマ一族の奇襲以降、あまり姿を出さなくなったんだ。これ以上妖魔界を戦場にしたくないって言い残してね。」
「確かにそうですよね…。無神経に探そうとした私たちは悪者なのかなぁ…?」
「これこれ、お前さんはただ七人将さまを探しているわけではなかろう。それも暗殺でもないし、悪い計画も立てておらんだろ。そうだな…この町にかつて将軍として罪人裁きを率いたノブナガ・ヒノさまについて少し語ろうかな。彼は少しばかり気が短いが、それでも妖魔界の平和のために自ら指揮を取って先頭に立ち、私たちを導いてくれたんだよ。最近は先代妖魔大王さまを守れなかったというショックで太ってしまったが、最近はダイエットに成功したそうだ。そんな彼を探して何をするんだ?」
「七人将を探して人間界に現れたホロビノミコから平安館を取り戻し、人間界から七つの大罪をエネルギーとしている罪魔の力から解放し、もう一度京都だけでなく世界中を守りたいんです。私たち月光花はザイマ一族と戦い、勝利をしたもののホロビノミコの存在を知り、まだ戦いは終わってないとわかりました。だからこそ…もう二度と人間たちが醜い姿で罪を重ねないためにも、七人将の力が必要なんです!」
「なるほど…返答に感謝する。なら妾の前でその揺るぎない意志を見せよ。」
「え…?どういうことですか…?」
「ああ、すまないな。あまり妖怪たちに注目されて目立ったら野次馬が飛ぶのでな。変装を解くために竹林に入るぞ。」
「は、はい!」
謎のおじいさんに声をかけられたと思ったら、七人将を何か知っているかの口調で私を竹林の中へと連れていった。
竹林の中は薄暗くて、まるで亡霊が出てきそうな雰囲気で少しだけ怖くなってきた。
奥に進んでいくと、おじいさんはもういいだろうと立ち止まり、股旅姿から甲冑姿の威厳ある男性へと変貌した。
「ある時は股旅姿の老人、そしてまたある時は七人将の一人である男、妾こそは日野信長だ。ザイマ一族との戦い、ご苦労であったな。日向ひまわりよ。」
「やっぱりあなたがノブナガさんだったんだ!通りで強すぎる妖魔の力を感じたわけだ!」
「人間には太古の昔から世界各地で七つの大罪として戒めたが、いまだに克服どころか悪化していく一方である。それを憂いているのだが、なくすことは完全に不可能だ。だがその七つの大罪をなくさずコントロールする事で利用するくらいは出来る。お主、暴食という罪を知っているか?」
「えっと…確か食べ物を無闇に貪るように欲張って食べ尽くす…でしたっけ?」
「まぁ間違ってはいないな。だが食事は生きる上で絶対に重要だ。食すことを罪にしたら飢え死にしてしまう。だから逆に妾はこう思う。食事をする上で礼儀とマナーだけでなく、食事のために犠牲になった命への感謝を忘れ、自分の欲望を満たすだけの食事をし、そしてもったいないの精神を捨てるが故に食品ロスをしてしまう。環境だけでなく食べたくても食べれない人間への冒涜、自然や動物たちの命を無駄な犠牲にする侮辱、そして暴食による自分の身体の健康への無関心が本当の大罪だと妾は思う。」
「確かに…今の人間たちは食事への感謝と礼儀を忘れ、無駄に処分している気がするし、犠牲になった命を何とも思わず自分さえ満たされればいいやと思っているかも…。」
「多く食べる事は場合によっては重要だ。それは仕方のない事だし、きちんと感謝と懺悔をしていれば問題はない。だが…それすらも忘れて欲求だけで生きる事はダメだ。お主に暴食の試練を与えよう。お主は欲深いようで実は節度を保てると妖魔界から見ていたぞ。」
「うー…それってある意味傷つくんだけど…。」
「それは失礼した。妾はつい口に出してしまうのだ。では…ここらにイノシシとニワトリ、そして川魚などがいるだろう。それを狩って普通に食事をするがいい。それにここには木の実もある。原始時代に遡って生活せよ。」
「現代人には難しいかもしれないけど…私だって月光花としてのプライドがあるもん!その試練…絶対に乗り越える!」
こうして私は妖魔変化をして武器を持ち、イノシシとニワトリを狩ってはアユを釣り、竹林を出て森林の中へ入り食べられそうなリンゴを、土からは根菜類を採る。
そして私は火を起こして川の天然水を使って煮込んだり焼いたりし、普通に食事する。
「全ての命に感謝し、黙とう…いただきます!」
「これだけ食べるのか…果たして食品ロスを避けられるのか。それだけでは暴食をコントロール出来ぬがな。」
「これ…美味しい!味付けがなくても普通に美味しい!これなら全部食べれるよ!…………うん!ごちそうさまでした!」
「本当に全部食べきりおった…。その後はどうするかね?」
「そっか…私の手で自然の命を葬ってしまったんだったね。それじゃあ…イノシシさん、ニワトリさん、アユさん…私が生きるためとはいえ、大切な命を奪ってごめんなさい。あなたたちの分まで絶対に健康に生きてみせるからね…。ゆっくり眠ってね…。」
「まさか…骨を土に還し、臓物などはクマなどに与えるときたか…。そういえば平安館系列は食事前に黙とうするのが習慣だったな。」
「うん。平安館は武士道精神を忘れない伝統的な学校で、あらゆる宗教教育もしているんだ。普段は業者さんが処分したりするけど、今みたいに自分から殺しちゃった場合は自分で落とし前をつけないとなって思ったんだ。自分勝手だなってことくらい、私にだってわかってるよ。だからこそ…この命を無駄には出来ないよ。」
「そうか…はっはっはっは!お主、気に入ったぞ!食べきるのみならず普段からそういった教養を受けたが故に感謝と慈悲、そして懺悔を忘れずにいたとはな!それに臓物を野生動物に与えるとは大した器だ!お主を合格じゃ!それじゃあ…妾の究極奥義、龍ノ火炎車を教えよう!」
「はい!」
~伝授後~
「いきます!…太陽よ…私に熱い妖魔の力を…今だ!真・龍ノ火炎車!」
「何だと…ぬおっ!?」
「はぁ…はぁ…!」
「何と…感謝と節度を覚えると龍はまた神となるのか…!日向ひまわり、妾の負けだ。その気持ち、二度と忘れるでないぞ。」
「はい!ではノブナガさん!みんなを探しに行ってきます!」
「うむ!くれぐれも無茶はするでないぞ!罪人共には気をつけるのだぞ!」
こうして暴食を克服した私はみんなを探しに行く。
とはいっても…何故かこっちの方へ行かないといけない気がした。
また私は何かに引き寄せられているのかな…。
つづく!




