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第91話 リョウマ・モリモト

~常盤わかばside~


私はみんなと散り散りになり、海の波がさざめく浜辺に不時着していた。


そこで私ははずれてしまった眼鏡を必死に探し、あれがないと視力が大きく落ちるので踏んで壊さないように必死になった。


すると誰かが私の左肩をポンポンと叩き声をかけた。


「すみません。眼鏡とはこれの事ですか?」


「えーっと…かけてみますね。あっ、これです!ありがとうございます!」


「いえいえ。見つかってよかったですね。見たところ君は旅人かい?」


「はい。人間界から七人将を探すために妖魔界に来たんです。ヒメギクと一緒だったはずだけど、突然引き寄せられるようにみんなとバラバラにはぐれちゃったんです。」


「なるほどね…。となると僕の町に寄る必要があるかもしれない。トサガハラの町ってところだけど、そこは海と山に囲まれた自然豊かな町だよ。ついてきて。」


「はい。ありがとうございます。」


私は親切な亀の妖怪に案内され、トサガハラの町に向かった。


そこは南には海があり、北には大きな山々があって、浜風と山風を同時に感じる気持ちのいい場所だった。


山からは天狗や鬼などの陸の、海からは魚型や蟹や海老、貝などの海の妖怪が入り交じり、個性豊かな集まりだった。


亀の妖怪曰くここは七人将の一人の故郷で、元々は人間だったんだけど先代の妖魔大王に認められ特別に妖怪と同じ寿命になったらしい。


七人将は全員人間のままで、妖魔の力が普通の人間よりも大きいとか。


トサガハラの町に着いた私は亀の妖怪と別れ、早速七人将について聞き込む。


「七人将に会いたい?」


「はい。実は人間界で最も恐ろしい大罪の女神ホロビノミコが現れたんです。そこで七人将さんの力を借りて討伐するためにここに来ました。」


「やはり人間界も…七人将のヒミコさまならこの事情は知っているが、生憎ここに来たことはないんだよね。有力な情報じゃなくてごめんね。」


「いいえ、いいんです。そのヒミコさんを探せばいいんですね。」


「いやいや、その必要はないよ。この町にもう七人将の一人がいるんだ。リョウマ・モリモトという方なんだ。彼は嫉妬に溺れる人間たちを意識改革で更生させ、そして新たな道へと進ませる凄い魔術師なんだよ。」


「どんな方なのかしら…。ありがとうございます。そのリョウマ・モリモトさんを探します。」


「いえいえ、あまり無理はしないようにね。」


リョウマ・モリモトさんという方はきっと人間の心理状態をより理解し、その人に合ったやり方で導いていくスペシャリストなのかもしれない。


嫉妬に溺れると他人を蹴落としてでも自分だけがのし上がり、そして相手がどう傷つこうがなりふり構わず地に落とす。


この弱い心理こそ悪い嫉妬で、もし嫉妬を活かせるのならライバルとして競い合い、そしてお互いを高め合って成功する方がカッコいいのにね…。


考え事をしていると不覚にも足を絡めて転んでしまい、また眼鏡をなくしてしまった。


「ああ…またやっちゃったわ…。眼鏡…眼鏡はどこかしら…?」


「ん?どうしたんじゃ?眼鏡というのはこいつの事かのう?」


「ん…またつけてみます…。あっ、これです!ありがとうございます!」


「よいよい。おや、驚いたのう。同じ人間がまだここにおったとは。それもワシの希望通りの人間とはのう。」


「あなたは一体…?あ、申し遅れました。私は…」


「常盤わかば、平安館女学校高等部2年、趣味は盆栽と日本文学を読むこと。勉強が得意で料理と運動が苦手。月光花のリーダーを務める理性派。こんなところじゃな。」


「どうしてそれを…!?」


「そりゃあ、ワシが七人将をやっとるからの。妖魔大王さまの魂も感じるぞ。」


「ということはあなたが…リョウマ・モリモトさん!?」


「いかにもワシが森本龍馬じゃ。」


おおらかで仁王立ちが似合う豪快そうなこの男性こそがリョウマ・モリモトさんで、どこか私の心が惹かれるくらい魅力的な雰囲気だった。


彼について行けば何か新しい発見が出来るというか、理論と完璧さばかりの私でさえ納得できる言い方が出来そうな感じだった。


少し見惚れていると私は理性を取り戻すべく首を横に振り、人間界での出来事を全部話した。


「なるほど…ヒミコが言ってたホロビノミコがついに現れたんか。これはワシにも手に負えん…。」


「そうですか…。」


「じゃが安心せい。人間が最も陥りやすい嫉妬の感情をコントロール出来ればホロビノミコに屈する事はなかろう。どれ、ワシが徹底的に鍛えてやろう。ワシについて来るんじゃ。」


「はい!」


リョウマさんは自分ではホロビノミコ相手にしても敵わないと踏みつつ、私に後を託すように祭壇へと案内した。


きっとホロビノミコの罪魔の力に対抗する新しい何かを取得するチャンスだと判断した私は言われるがままについて来た。


祭壇に着くと、そこには真ん中に大きな穴が開いていて、そこに落ちたら奈落の底へ転落するという雰囲気だった。


その穴に近づくように促された私はリョウマさんの隣まで移動した。


「この穴は無間地獄に繋がっているんじゃ。この妖魔界で悪さをした迷い人、いわば死んで間もない人間の悪い魂を蹴落とすための穴じゃ。今からお前さんにはここに飛び込んでもらう。」


「え…?それだけですか?」


「それだけじゃ。だがただ落ちるだけではない。落ちている間は悪い考え事をしてしまい、自分が不幸だと思い込むようになり他人を妬むようになる。その間に魂は穢れ、地獄界に相応しい嫉妬に溺れた醜い獄魔になるんじゃ。お前さんにその嫉妬と不幸に立ち向かう勇気はあるか?」


「軽い気持ちでやると危険ね。でも…この試練、受けて立ちます!リョウマさんはここで待っててください!では!」


「おい!もう行くんか!ったく…理性派はどこに行ったんかのう…。さてと…ワシは常盤ノ旋風弾の強化を試みるかのう。あれは相手を撃ち抜くだけでなく空砲にすることで移動にも使える究極の銃じゃ。かつてワシが妖魔の力で開発した火縄銃が彼女に使えるんかのう…。」


私はホロビノミコに勝つためには最善の策だと判断し、迷いながらも即決でその穴に飛び込んだ。


飛び込んだ瞬間に身体がどんな向きなのか、目の前はどうなっているのか、肌は一体何を感じているのかがまったくわからないくらい真っ逆さまに落ちていき、次第に後悔と苦痛がよぎってきた。


するとだんだん悪い考えが浮かび、学業で自分より上の子やアイドルとして私よりも目立っているみんなに対して憎しみが浮かんできた。


これが走馬灯…なのかしらね。


「いいえ…このネガティブな考えは幻よ…。確かに努力せずに才能だけでやっているかもしれない。でも…才能だけでやっていてはいずれ限界が来るのを妖魔の力で知っているわ…。みんなだって…自分を磨くためにどうすればいか…どうしたら自分の武器を活かせるか…偉人たちだって悩んで這い上がってきたはずよ…。憧れの坂本龍馬さんやトーマス・エジソンさんだって…多くの挫折を味わって自分の武器を活かしてここまで来たじゃない!私にだって出来ない事はないわ!天才だからって何でも出来るわけじゃない!嫉妬は…弱くて無力な自分と向き合うのが怖いだけなのよ!その恐怖に勝てば…前に薦めるわ!それに…感謝の心を忘れなければ必ず恩は来る!みんな…生まれてくれてありがとう!真・常盤ノ旋風弾!」


「何だと…!?」


「はぁ…はぁ…!まさか火縄銃から…大きな妖魔の力が…!」


「何てことじゃ…ワシの得意技の常盤ノ旋風弾を越えようとは…!その火縄銃はワシが開発し、後世の人間が妖魔使いになる時に召喚されるようにヒミコさまの呪術で人間界に託したものじゃ。まさかお前さんがその使い手とはのう…。」


「じゃあこれは…リョウマさんが作られ、そして私に託した最高の火縄銃なんですね…!」


「そうじゃ。大切に使ってくれて感謝するわい。ワシら七人将が人間時代に敵わなかったホロビノミコを地獄界に封印だけでなく、必ず討伐してくれい。お前さんの強い感謝の気持ちと、競い合うことの大切さを学んだ心の強さがあれば大丈夫じゃ。お前さんがリーダーになったんは、その感謝の心が故の人徳じゃよ。自信もって頑張れよ。」


「ありがとうございます!でははぐれたみんなを探します!」


「おう!きっと皆も試練を受けているじゃろう!いい結果を待ってるけぇ!」


こうしてリョウマさんと別れ、この託された火縄銃と共に人間界の運命を守ってみせると誓った。


私は妖魔の力を使ってみんなの気配を探し、そしてみんなはある場所に無意識に向かっているとわかった。


でも…私も何故かその場所を知っているような…そんな気がして無意識に向かっていった。


奈落の底に落ちて実感したけれど努力が必ず裏切らないとは限らないし、才能が開花する事がない可能性もある。


それでも成功者や幸福な人は才能をどう開花させようか模索し、そして方法を見つけては努力を続けてここまで大きくなれた。


その信念を信じて悪い嫉妬をせず、自他共に切磋琢磨していこうと思うわ。


つづく!

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