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第88話 サスケ・アキミチ

~紅葉もみじside~


妖魔界にたどり着いた瞬間、私は何かに引き寄せられるように吸い込まれては山の中に不時着し、皆さんとはぐれてしまいました。


その山の中は深い森になっていて、いかにも妖怪が現れそうな暗い雰囲気でした。


私は立ち止まっても何も始まらないと判断し、川を頼りに前に進みました。


歩くこと数分でもう川を見つけ、その流れに沿って歩くと、何やら集落らしき村が見えました。


勇気を出して村に上がり込むと、般若のお面を被った妖怪が私に声をかけました。


「その魔力は人間だな。人間が妖魔界を訪れるとは珍しいな。」


「えっと…私はヒメギクさんに妖魔界を案内され、七人将さまのお力を求めてこちらに参りましたが…ヒメギクさんや仲間の皆さんとはぐれてしまいまして…。」


「ならばこのイガニンの里でゆっくり休むがよい。今はもう夜だ、子娘一人で出歩くのは危険だ。たまに地獄の罪人共が荒らしに来る。我々妖怪の平和を壊す罪人共には頭を悩ませているのだ。」


「そうなんですか?」


「ザイマ一族が妖魔大王さまを暗殺してから物騒になったのだ。罪人共の罪魔の力は人間では太刀打ち出来ぬ。この里でゆっくり休み、七人将のサスケ・アキミチさまを訪れるとよい。」


「ありがとうございます。…七人将とおっしゃいました?」


「ああ。サスケさまは人間でありながら大きな妖魔の力を持っている。だが彼は夜になるとどこかへ修行に行ってしまう。朝になればここに戻り、剣の稽古をする。話は以上だ、君は誰かをあたって休むといい。」


「お気遣いありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます。」


妖魔界はザイマ一族のクーデターによって、地獄界から罪人たちが這い上がり好き放題荒していっているのが現状で、妖魔大王さまがいかに平和を築こうと努力してきたのかがわかりました。


ヒメギクさんも妖魔大王になりたてで、まだ統率が取れていない状況だというのもわかりました。


般若のお面の妖怪の紹介でツノが生えた黒装束の妖怪のご自宅に寝泊まりし、朝を迎えるまで眠りにつきました。


そして翌朝になり、私は早起きをして自己鍛錬に励みました。


剣術だけでなく走り込みや筋トレをして自分の心身を鍛え抜きます。


すると先ほどの般若のお面を被った妖怪が私に声をかけました。


「ほう、人間でも自己鍛錬を積む者もいるのだな。私は感心したよ。」


「はい。紅葉流忍術師範たるもの、自己鍛錬を怠っては忍びとして廃りますから。」


「紅葉流…なるほど、サスケさまに会うにはいい器かもしれん。君にサスケさまの居場所を教えよう。まだ里には戻られていないが、いつもの稽古場であるこの森の奥に滝が流れている小さな湖がある。そこに向かうといい。ここから東に1km進めばそこに出るはずだ。」


「重ね重ね感謝いたします。では私はサスケさまの元へ向かいます。」


「うむ。健闘を祈るぞ。」


サスケ・アキミチ…もしも紅葉流忍術の言い伝え通りならば、初代紅葉流忍術使いの紅葉暁ノ介さまの師匠にあたる秋道佐助さまになります。


もし彼がサスケ・アキミチさんと同一人物であれば、私は彼のお力を得るにはもってこいかもしれません。


1km進むと、そこには黒装束の男性が森の木々と一体化して風を感じながら座禅を組んでいました。


声をかければ無礼だと判断し、私は隣にこっそり忍び込み共に座禅を組みました。


呼吸を整えると私は自然と心身が軽くなり、まるで風や木々と一体化した気分になり気が付けば無心で自然と共に過ごしました。


すると男性は私に気が付き、そしてこう声をかけました。


「お主、なかなかの忍術の使い手であるな。拙者が気が付かぬほどの忍び足を会得している上に、まさか10分ほど気配を感じぬほど隣で座禅を組むとは、大したものだ。」


「あなたは一体…?いえ、名を聞くからには名乗るのが礼儀ですね。私は紅葉もみじと申します。」


「その礼儀正しさ、覚えているぞ。かつて拙者は死を予感し、秋道流忍術を隠滅させて新たな忍術を編み出そうとした時に真っ先に拙者を師と仰ぎ、持ち前の礼儀正しさと勤勉さで紅葉流を編み出した暁ノ介にそっくりだ。お主の妖魔の力でわかる、あの暁ノ介の子孫だな。」


「はい。初代をご存知ということは…あなた様が…秋道佐助さまですね!」


「いかにも拙者が秋道佐助だ。ここではサスケ・アキミチと呼ばれている。お主が拙者を探していると風の噂から聞いている。どうやら憎きザイマ一族を倒したらしいな。」


「はい。ですがまだ戦いは終わっていませんでした。ザイマ一族の将軍であるアクドーをたぶらかし、人間を自滅に追い込もうとしている黒幕がいたのです。ホロビノミコと呼ばれる者でした。」


「やはり奴の仕業だったか…。妖魔大王さまは拙者ら人間を七人将に任命し、妖魔の力で妖魔界の平和を保ってきた。だが拙者らは地獄界からの罪人共が大勢現れ、そいつらに構っている隙に妖魔大王さまは暗殺された。不覚であった…拙者らがもう少し早く奴らの計画に気付いていれば…妖魔大王さまは殺されずに済んだのだ。だがお主たちが見事討伐し、妖魔界もヒメギクさまが襲名してから少しずつ平和になってきた。本当に感謝する。そして…ヒメギクさまの頼みでお主たちを鍛え、拙者ら七人将の力を伝授せよとの事だが…まさか暁ノ介の子孫が相手とはな。運命引き寄せの術は大したものだ。」


「ということは…皆さんとはぐれたのはあなたの仕業なのですか…?」


「無論だ。お主たちを個人的に鍛えるために引き寄せたのだ。他の皆も同じだ。お主に怠惰を乗り越える試練を受けてもらう。」


「サスケ様の試練…乗り越えてみせます!」


「では…拙者が編み出し、門下生が習得できなかった究極奥義、秋道流秋風木枯斬(あきみちりゅう・しゅうふうこがらしざん)を3日以内に習得せよ。万が一休息以外に怠惰な行為を行ったら…お主の首を容赦なく斬りつける。編み出せなかったら試練失敗と見なし、お主を見限って妖魔界から追い出そう。拙者は座禅を組むがお主の行動は手に取るようにわかるぞ。」


「その試練…お受けいたします!」


「これが究極奥義の書だ。きちんと読んでから訓練するといい。では…始めっ!」


こうして私は究極奥義を会得すべく修行に励みました。


サスケさまの門下生の皆さんはご先祖さまである初代でさえ習得できなかったと聞き、私には無理だと思われているのが少しだけ腑に落ちませんでした。


そこで私は少々ムキになって絶対習得してみせますと意気込み、何日もかけて書物を読み切り座禅だけでなく滝に打たれたり、大地に自ら埋まったり天候を読んだりしました。


それでも私は何もコツが掴めず、そのまま3日目を過ぎてしまいました。


「はぁ…はぁ…!これだけやっても習得出来ないとは…!私に何か原因があるのでしょうか…?やるべき事は全部やったつもりですが…やはりまだのようですね…!どうすれば…!?」


(まさかここまで勤勉に修行を積むとは…。暁ノ介でさえ習得するのを諦めて怠惰に陥り、自己流に走ったというのにまだ粘るか…。しかも怠けているわけではなく、休みながらも自然と会話できるほどになるとは…。この子娘…ただ者ではないぞ。)


「いいえ…やるべき事をやったつもりの時点でまだまだです…。何か…何か原因は…っ!?そうでしたか…一番大事な呼吸でしたね。今までは吸って調整しましたが、今度は吐いてみましょう…。はぁ~~~~~っ…紅葉流究極奥義!真・秋風木枯斬!」


「何と…!」


「はぁ…はぁ…!やりました…!」


「見事だ…。拙者の編み出したやり方では息を吸って整え、吐く瞬間に一気に力を入れるのだが、お主はあえて吐ききる事で自然に酸素を吸い、そこから無駄な力を排除して最低限の力で最大限の威力を編み出す。どうやら勉強不足だったのは拙者の方だ。お主…いや、紅葉もみじ殿…そなたを秋道流の名誉門下生と認めよう。そして…もみじ殿は怠惰を乗り越え、勤勉さと負けん気で究極奥義を進化させた功績を認め、その奥義をもみじ殿に伝授する。」


「サスケさまに認められたことをありがたく思います。」


「ではもみじ殿を里まで送ろう。拙者はもう少しだけ修行を続け、もみじ殿に負けない忍びになろう。今度は是非手合わせを願おう。」


「サスケさまとお手合わせなんて恐縮です。では…ホロビノミコ討伐に参ります。」


「では…秋道流奥義…風の運び屋。」


こうしてサスケさまの究極奥義を伝授され、私はサスケさまの忍術で里まで送られました。


私が帰ってきたのを確認した妖怪たちは、私が紅葉もみじだと知りザイマ一族討伐の件を称えられました。


子どもたちには筆でサインを求められ、お母さん方には握手を求められ、若い男性には頭を下げられるなどおもてなしをされました。


もう少しだけこの里で休息し、その後に皆さんを探しに行こうと思います。


つづく!

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