第86話 壊れた日常
クリスマス当日、平安館女学校にもうすぐ冬休みが訪れる。
アイドルとしても順調でUMD48さんにも認められ、大阪ドームのライブ中継が海外にまで広まって世界的人気アイドルにもなれた。
学校も学力での成績もキープされ、学力に自信がないと言っていたひまわりちゃんも問題なく過ごせた。
ヒメギクちゃんも編入試験を合格してからも厳しい学力テストを突破し、月光花はそれぞれの平和な日常を送る…はずだった。
「では本日も稽古を行う。それぞれの仕事、ご苦労であった。」
「はい!」
「焔間さん、いつもサポートすまぬな。そなたがいなければ月光花はこれほど人気ではなかっただろう。」
「ありがとうございます。私は人間界をずっと見ていて、人間の文明をずっと学んでいました。おかげでこのような役目を与えられ今では天職です。」
「妖魔大王になられた身でありながら、それに驕らずいつも通りに過ごすか。焔間さんは将来、いい妖魔大王になると約束しよう。」
「ありがとうございます。」
大阪ドームでのライブ以降は京都を拠点にしつつ、地上波で放送される東京のテレビ番組や、西日本を中心とした地域のイベント、さらにはアフレコやドラマ撮影など人気スターにまでなった。
同時に学校生活との両立もこなし、文武両道をモットーとする平安館生として恥ずかしくないようにもした。
冬休み前の修了式にあんなことが起こるとは…私たちはまだ何も知らない。
修了式が始まった私たちは、中等部と高等部で集まって冬休みを健康に過ごすように校長先生の演説で言われる。
しかし高等部の校長先生はさっきから不審な動きをしていて、何かを警戒しているようだった。
校長先生は伊勢神宮の血統があり、妖怪や神の力を少しだけ感じられる。
すると校長先生は突然咳ばらいをし、私たちに大声で叫んだ。
「というわけで諸君…早く武道館から出ていくなさい。早く!」
「ざわざわ…!」
「もしかして…今から何か起こるんじゃあ…!?」
「念のために注意しよう!」
「うわっ!何だこの揺れは!?」
「きゃあああああああっ!」
「助けてくれぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「皆さん!落ち着いて外へ避難しなさい!私は最後まで残る!皆さんの安全が優先だ!」
「校長先生!足元が!」
「うわっ!」
「危なかった…!」
「何だ…このザイマ一族よりも禍々しいこの気配は…!」
「校長先生!生徒の避難は私たちに任せてください!」
「月光花の諸君!くれぐれも無茶はしないでくれ!」
「かしこまりました!」
校長先生の足元が大きく地割れを起こし、ギリギリのところで変身して校長先生を救助する。
生徒のみんなを武道館から全員避難させ、先生方は点呼を取って全員の無事を確認する。
すると武道館だけでなく、大学や中高、小学校に幼稚園などの校舎、長い年月をかけて作った庭園や神の社など、平安館大学の敷地が全部破壊されていった。
同時に下から黒くて近づくだけで痛々しくなる針の山と邪悪な城が浮き出た。
そして美しく憎悪に満ちた女性の声が聞こえた。
「うふふふ…どうやら私は完全なる身体を手に入れられたようですね。」
「その声は…ホロビノミコ!」
「えっ…?もみじちゃん…?」
「一体何者なのでございますか?」
「最近アルコバレーノのライブに現れたアンゴル・モアの姉妹です!何故あなたが平安館に来たのです!?」
「よくぞわかりましたね。私は大罪の女神ホロビノミコ。あなた方に葬られたアクドーをザイマとして転生させ、それ以前から罪深き人間を滅ぼすために2万年の時を経て力を得たのです。」
「穏やかな口調なのに…何て禍々しいの…!」
「月光花…忌々しい妖魔使い…。私はあなた方のような妖魔の力を使う者に太古の昔に魂を封印され、身体は消滅されました。ですが罪魔の力さえあればいつでも取り戻せるほどの軽い問題でした。そこで2万年もの間、世界中で罪魔の力を受け継ぐ者を見つけては生贄を捧げてもらいました。アクドーが生まれてからはまた可能性を感じ、幼少期からずっと彼を利用してザイマとして目覚めるのを待ちました。その結果、彼は私が編み出した禁術で契約を交わし、ザイマとして覚醒しました。ですが妖魔の力を受け継ぐ春日兄弟によりアクドーは地獄に封印され、なかなか罪魔の力を集められませんでした。そこでアクドーと共に子を作り地獄の罪人たちの魂を利用し、理不尽に裁かれた怒りと憎しみで妖魔界にクーデターを起こしました。あの世と妖魔界を支配し、春日兄弟の兄である妖魔大王を暗殺しました。地上界へ復讐を果たし、存在してはならない人間を滅ぼすことこそ極楽浄土としました。」
「じゃあアクドーは君が生み出し、そして利用し続けたんだね?」
「はい、その通りです。そして私は人間の七つの大罪によって生まれ、人間の罪魔の力をエネルギーとし、2万年分の罪魔の力を溜め込み、今や全盛期を迎えました。さて、私を倒したくば月光花の8人だけで私がいる大罪の城の天守までたどり着くことです。ですが…その間は人間によって同じ悲劇を繰り返すでしょう。向かうも逃げるもあなた方次第ですが、逃げた場合は人間が自分たちの首を絞め、そして上手く絶滅を迎え、地球は極楽浄土どころか、毒しかない荒野と化すでしょう。では皆さま…ごきげんよう。」
そう言ってホロビノミコは霧の中へと消えていった。
ホロビノミコは私と同じ巫女装束で、同じ黒い巫女でも神聖なものとは思えなかった。
むしろ地獄そのもので悪魔を越えた魔王よりも大きな破壊神というものだった。
私たち8人はこれからどうするかを即座に判断し、敵陣へ乗り込むことにした。
「ダメだ!無茶はするな!今お前を失ったら、俺たちの婚約は破棄されるどころじゃないぞ!」
「でも!私が行かないとみんなが!」
「ダメよ!家元の子として認めないわ!」
「お母さま…!」
「いくら可愛い孫娘でも、行かせるわけにはいかないよ!」
「陽二郎おじいちゃん…!」
「そんな危険な場所へ行かせる親がどこにいるとでも?」
「父さん…!」
「諦めるまでこの手を離さんぞ!」
「父上…母上…!」
「つばき…こればかりは姉さんも認めないわ!」
「つつじ姉さん…!」
「ここであなたを失ったら、誰を愛でればいいんだい?」
「おばあちゃん…!」
「行っちゃダメだ!いくら妖魔大王の責任があっても君は私たちの娘でもあるんだぞ!」
「春日さん…くっ…!」
私たちは家族や友達、大切なみんなに引き留められる。
私たちが行かないとこの世界を救えないのにみんなは私たちを失いたくないと引き留めた。
でも…このまま黙っていたらまた西暦時代の悲劇が繰り返されてしまう。
アルコバレーノもSBY48も行方が分からないし、この世界を救えるのは私たちしかいないのに…どうすれば…。
つづく!




