第82話 おかしい
夏休みに入り、私たちは野球部の勝利の女神として称えられ甲子園でもよろしく頼むとお願いされた。
甲子園では準々決勝以降の合流で、アイドルサマーライブの調整とも両立している。
しかし私たちは予期せぬニュースに見舞われ、芸能界を大きく揺るがす出来事に遭遇する。
「衝撃的ニュースです。モノクロ団との戦いに勝利した英雄アルコバレーノの桃井さくらが活動休止、さらにアルコバレーノも解散に危機に見舞われています。これから中継が入ります。」
「はい。こちらは虹ヶ丘エンターテイメント前です。先程からずっと取材を申し込んでいるのですが、事務所側は取材を完全拒否。桃井さくらさんの安否と精神状態の回復を確認しているとの事です。原因はあの写真通りの男の子を抱きしめている写真が原因なのでしょうか、UTAU STATION以降は姿を見せなくなりました。」
「ええっ!?アルコバレーノが解散!?」
「これはどういうことなんだい…?」
「UTAU STATIONとは30年以上も続く音楽番組でございますが…一体アルコバレーノさんに何があったのでございますか…?」
「そんな…私たちのライバルがここで終わりなの…?」
「あっ!黒田社長がお見えになりました!黒田社長!桃井さくらさんについて何か一言を!」
「まずは彼女の気持ちを整理させるのが先です。取材は後にしてください。これ以上は通行人や近隣住民に迷惑ですのでどうかお引き取り願います。」
「社長!あの男の子は一体誰なんですか!?本当に桃井さくらさんの彼氏さんなのですか!?」
「最近のアイドルって恋愛はOKなんじゃあ…?」
「そのはずなんだけど…わけがわからないよ…。」
「あのひまわりでさえ把握していない何かがあるのね…。」
「これは何か裏がありそうだな…。」
「ん?そう言えばもみじはどこに行ったの?」
「もみじなら東京に用があると言って今朝出ていったぞ。」
「そっか…。」
「皆の衆注目だ。今はアルコバレーノの緊急事態だが、後ろを向いている場合ではないぞ。アイドルサマーライブを控えている以上、ここで立ち止まるわけにはいかぬ。それに…UMD48も出場し、西日本のアイドルを代表するグループと同じ舞台に立つのだ。不安な気持ちはわかるが集中するのだ。」
「は、はい!」
もみじちゃんは一人で東京に旅立ち、残された私たち6人は花柳先生の稽古に励む。
一方で野球部は甲子園の宿泊施設に着き、練習で調整を始めた。
もみじちゃんは東京で何をするのかな…?
~紅葉もみじside~
私は桃井さくらさんが何者かによって嘘のスキャンダルをされたと確信し、一人単独で東京に向かいました。
忍びとして何か情報があればと従姉妹のしのぶと連絡し、アルコバレーノを陥れようとした人物のリストを聞き出します。
東京に着いた私は改札を出たところにしのぶと待ち合わせをし、10分ほど待つとしのぶと合流できました。
「もみじお姉さま!ただいま参りました!」
「ええ、しのぶ。その体つき…鍛練を怠っていないようですね。」
「もちろんです!紫吹流に負けないように忍術を極めるために鍛えてますから!それより…どうやら高飛車きららと深い関係があるようですの。」
「やはり高飛車きららさんですか…。実は東京で仕事があり、早朝のランニングに赴いた際にそのきららさんに会ったんです。」
「え…?お姉さま…その女は危険ですわ!その女に関わったら最後ですわよ!」
「いいえ…彼女は悪い人ではありませんでした。ただ…両親に甘やかされて作られた道を進まされているからくり人形のようでした。」
「お姉さま…。お姉さまが嘘をつくのが下手だというのは知ってますが…にわかに信じられませんわ…。」
「そこでしのぶと私で高飛車財閥に忍び込み、ある有能な記者さんに情報提供をし、きららさんに実体を知らせます。そしてアルコバレーノの関係者に証拠を見せ社会的制裁を下すんです。これ以上…きららさんを操り人形にするわけにはいきません。」
「お姉さま…わかりました!私はお姉さまを信じます!それで高飛車財閥の場所ですが…有楽町の近くにございますわ!」
「では参りましょう。高飛車財閥の本当の姿を…。」
「はい!」
私としのぶは小柄ではありますが、最低限のパワーで最大限の威力を発揮できるほどの戦闘力を持っていて、並の人間では絶対に敵わないほどだと自負しています。
有楽町に移動した私たちは高飛車財閥の本社に着き、一見普通の高層ビルに見えましたが、何か邪悪な気配が3つほど感じました。
どうやって侵入するか考えたところ、ちょうど私たちに似ている女性社員が入社しようとしていましたので、睡眠薬と麻酔を塗り込んだ吹き矢で少しだけ眠ってもらう事にしました。
「うっ……zzz」
「上手くいきましたわね、お姉さま。」
「はい。後はこの女性の方の正装をお借りしましょう。」
「何だかスパイみたいですね。」
「本来の忍びとはこういうものですよ。まさかこの現代に本当にやるとは思いませんでしたが。」
「では参りましょう、お姉さま。」
「はい。」
私たちは髪形をアレンジしてリボンをほどき、社会人に見えるように鵺の能力でコントロールして変装します。
財閥の社員たちは私たちだと気付かず、いつも通りの挨拶を交わしました。
どんな女性なのかはわからなかったですが、相手の言葉の雰囲気でわかったことは、彼女たちはあまり人と会話せずに仕事に打ち込むタイプと推測しました。
警備員の方々にも少しだけ眠ってもらい、防犯カメラをハッキングして天井裏に忍び込みます。
そして会長室にたどり着き、私たちは証拠を掴むために隠しカメラと盗聴器を設置します。
すると高飛車会長が会長席に座り、葉巻を吸いながら何か独り言をつぶやきました。
「アンゴル・モアは上手くいったようですね。これで桃井さくらの絶望を集め彼女は力をつける。そして買収された企業共や陥れられた人間共の憎しみや怒り、そして復讐心が私の力となるのです。高飛車勝利…私たち地獄の魔女三姉妹のためによくぞ役立ってくれました。」
「ははっ。アンゴル・モアさまだけでなく、ホロビノミコさまに認められて光栄です。これで人間共に復讐を果たせる…。今まで私をコケにした恨みをここで晴らすのだ…。」
「ホロビノミコ…おそらくアクドーをたぶらかした大罪の女神…。」
「えっ…?じゃあお姉さまの戦いはまだ終わってないという事ですか…?」
「はい。私たちの戦いは…アクドーが自分自身を生贄にホロビノミコを召喚したのですが、まさか東京に身を潜めていたとは…。」
「夫のアクドーはザイマ一族として十分働いてくれました。人間でありながら大したものです。しかし彼は所詮人間…私の力をつけるための駒としてよくやってくれました。ですが…せっかくアクドーと共に作り遺した我が子を全滅されるとは…。妖魔使い…念のために京都でも活動をするのです。」
「ははっ!」
私たちはこの一大事に気付き、これ以上ここにいたら見つかった時に最期だと悟り…その場を後にしました。
そしてホロビノミコは京都ではなく東京で身を潜み、高飛車財閥やアクドーを利用して罪魔の力をつけたこと、きららさんはその会長の手のひらの上で踊らされた被害者だということがわかりました。
京都に戻った後にきららさんからLINEのメッセージが届き、「パパが悪魔と契約を結びましたわ。アンゴル・モアと名乗っていましたわ。」と来ましたので、私と従姉妹が忍び込んだ時はホロビノミコだったと伝えました。
そしてあれから高飛車きららさんは全てを告白し、高飛車財閥は失速しては倒産し今まで陥れられた皆さんは救われました。
きららさんはアイドルから身を引き罪滅ぼしの活動をすると言い、それから連絡を取り合う事はありませんでした。
つづく!




