第75話 人間をやめるぞ
人間や妖怪のみんなの協力で立ち直ることが出来た私は、勇気を出してアクドーに矢を放った。
わかば先輩も私を援護するように何度も弾丸を発射させアクドーをけん制した。
ひまわりちゃんは持ち前の観察眼でアクドーが片足立ち状態になったのを見計らって槍で連続で叩いた。
もみじちゃんとすみれちゃん、つばき先輩、そしてるり先輩による殴打と斬撃で一気にダメージを負わせた。
さすがのアクドーも私たちの底力に押されはじめる。
「ぐっ…!妖魔の力というのはこれほどのエネルギーとなるのか…!?貴様らのどこにそんな力が…!?」
「みんなに支えられ、そして私たち自身もみんなを支えてきた。人間は確かに無力で罪を何度も重ねてきているけれど…その中には小さな出来事でも支え合い、弱いところをカバーし合える対等な関係でもあるんだよ。あなたはずっと孤独な生活を送ってきたからわからないと思うけど…私たちのように過ごせれば、あなただって幸せになれたはず!」
「バカな事を…。我は貴様らみたいに甘い生き方など認めぬ!我は悪魔となり、この世を人間のいない極楽浄土にする使命があるのだ!貴様らのような軟弱者は…妖怪諸共滅びるがいい!無間魂滅業火斬!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
「どうだ…これが地獄で編み出した究極奥義だ。無間地獄のように熱苦しかろう…。だがその熱さを越える冷たさも同時に味わうがいい…。無間魂滅極寒斬!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「絶対零度よりも冷たく血液をも凍える寒さで震えて眠るといい…。地獄とは熱くて寒い世界なのだ。貴様らには身も心も…魂も焼け凍えるといい。」
「地獄界はこんなに理不尽な温度差でございますか…?」
「まさに生き地獄って感じね…。」
「あの剣さばきを攻略するには…。」
「剣さばき…そうだ!この技の攻略のカギはつばき!あなたしかいないよ!」
「私が…?」
「ひまわりちゃん…?」
ひまわりちゃんはアクドーの剣さばきの攻略法をいつの間にか見つけ、その攻略のカギはつばき先輩だと言い出した。
私だけでなく言われた本人もみんなも困惑していた。
それでもひまわりちゃんは自信ありげにつばき先輩を見つめ、どこで習得したのかわからないけどテレパシーで私たちに作戦を伝えた。
(作戦としてはシンプルだけど、わかばが先制攻撃を仕掛け、装填している間にはなが矢を連射し、わかばの準備が出来たらまた発射するんだ。おそらく矢も弾もあの刀で弾き返そうとすると思う。そこですみれとるりが接近してあいつのバランスを崩し、スピードのあるもみじが動いて翻弄、そこでつばきが遠心力を活かしたパワーで…あいつの胸元に一撃必殺を放つんだ。)
(私はすみれほど力に自信はないぞ。だが…薙刀であればこの中の武器で最も遠心力を活かせ、リーチにも困らない武器なのは確かだ。その作戦、乗ってみようではないか。皆も協力を頼む。)
(OK。やってみるわ。)
「何を見つめ合っているのだ。貴様らはここで終わりなのだから今更悪あがきなどする必要なかろう。さぁ…地獄の招待券をここで与えてやろう。」
「させない!ここで……放てっ!」
「無駄だ。」
「まだまだぁっ!」
「くっ…!その大きな弓で連射する技をどこで…!?」
「どこを見ているのですか?私も忘れてもらっては困ります!」
「くっ…おのれぇっ!」
「隙ありでございます!」
「まだこんなものじゃないよ!」
「よそ見は禁物だよ!」
「小賢しい…ぬぅん!」
「うわぁぁぁぁぁっ!」
「下等生物が…」
「その下等生物も知恵を使えば貴様のような悪魔をも超えるのだぞ。」
「何…!?」
「貴様は確かに強い。だがその慢心が貴様の敗因となるのだ!雪月氷晶斬!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ふぅ…まだ終わっていないか…?」
「でもこれでアクドーは倒れたよね…?」
アクドーはつばき先輩の一撃で胸元を大きく斬られ、憎悪の元となった罪魔の力は失ったかのように見えた。
駆けつけてくれたみんなは勝利を確信し、大声で喜ぶ人たちも多くいた。
でも私たちはまだ戦いは終わっていないと残心を示した。
するとアクドーは足元を震わせながら立ち上がり、苦しそうに私たちにこう言った。
「やるではないか…妖魔使いの女どもよ…。やはり人間の姿では…貴様らを葬る事は不可能だったか…。これで勝ったと思うとは…人間共はやはりまだ下等生物であることは変わらぬな…。」
「何だって…?アクドー…まだあなたに奥の手があるというの…?」
「その通りだ…妖魔界の姫君よ…。貴様らは踏み出してはいけない領域に踏み出してしまったのだ…。そしてその領域に踏み出したことを…いずれ後悔するであろう…。地獄よりも深く…熱くて冷たい…。無よりも苦しく…暗い…。そんな思いをこれからするのだからな…。しかし我は不幸な事に…悪魔になったとはいえ…まだ人間の姿をしている…。故に我は…さらなる新世界の神になるために…この人間の姿をやめるぞ!覚悟しろ!そして永遠の地獄の苦しみを味わうがいい妖魔使い共!」
「うわっ…!」
「自分の首を刀で…!」
「それよりも…この禍々しい罪魔の力の大きさは…!」
「ふははははは!人間の姿をやめた我の真の力をここで見せ、下等生物の人間共やその下等生物である人間の味方をする妖怪共を滅ぼし、新世界の神として極楽浄土を創り上げるのだ!我の優秀な後継者である我が子たちの犠牲は痛いが、我一人でも野望を叶えてみせるぞ!」
「気を付けて!奴は強いよ!」
「みんなはここから早く離れて!」
「その方がよさそうだね!みんな!早く避難を…」
「嫌だ!みんなを置いて逃げるなんて…そんな薄情な真似はしない!」
「でも!みんなの命が…」
「だったら我々の微弱な妖魔の力を受け取ってくれ!君たちが最後の希望なのだから!」
「逃がしはせんぞ!はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うわぁっ!!」
「みんな!」
「動けない…!足が動かない…!」
「クソッ…姐さんすまねぇ!俺たちが弱いばっかりに…!」
「貴様ら雑魚共はここで見ているとよい!!妖魔使い共の戦いを目の前で目撃し、奴らが地獄に堕ちるところをよく見ているといい!その後に貴様ら雑魚共も後を追わせてやる!」
「みんなに何をしたの!?」
「心配するな!奴らには貴様らが死ぬのを見てもらうだけだ!そして貴様らや我の攻撃を受けぬよう、どちらかが全滅するまで解けぬ結界を張った!信じられぬなら雑魚共を目掛けて攻撃するといい!」
「そんな事…出来ない!」
「なら一番安全な私が参るでございます…!やぁぁぁぁぁっ!きゃぁっ!?」
「るりが弾かれた…!?」
「結界は本当だったんだ…!」
「姫さま!月光花の皆さん!我々妖怪たちの力を皆さんに全部分けます!どうかご無事で!」
「妖怪のみんな…!私たちは必ず勝つ!だからここで見守ってて!」
「日ノ本を護る最後の希望…妖魔使い月光花!」
「いざ参る!」
「うおおおおおおおおお!」
私たちが負ける前提でそれを目の前で見てから後を追わせるというアクドーらしいやり方でみんなを巻き込んだ。
怒りよりも先に死なせない事に少しだけ感謝をしてしまったけれど、私たちが負けたせいでみんなも一緒に殺されるのを避けたいという責任感も重く圧し掛かる。
私たちはアイドルの時とは違う掛け声と共にアクドーの第弐形態に立ち向かった。
つづく!




