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第74話 抵抗

アクドーの大きな雄叫びで耳が裂けるように痛み、目が大きく回って激しい頭痛に苛まれた。


まるで憎悪に包まれているような声は、心までも痛むほどで逃げ出したいくらいだった。


それでも私たちは戦わなければならないし負けるわけにはいかなかった。


アクドーは私たちを見つめながらニヤリと微笑み、私たちにとって最悪のシナリオを語りだした。


「ふっふっふ…我の雄叫びを人間ごときが耐えられたことを褒めてつかわそう。通常の人間が我の声を聞いたものは恐怖のあまりに死よりも怖い思いをして逃げ出し、そして狂気に包まれて永遠のトラウマを抱えるのだが…やはり妖魔の力がひときわ強い貴様らは耐えられるようだな。」


「でも耳が裂け、目が回り、心まで痛んだよ…。」


「よっぽど人間に憎悪を抱いていたのでございますね…。」


「ほう、我の雄叫びをそう解釈するとは、低脳の割にはいい知能を持っているな。」


「へへっ、これでも平安館大学の系列は世界でも学力が高い事で有名なんだよ!」


「なるほど、返答に感謝する。だがいいのかね…?そんなにジッとしてても。」


「何が言いたいんだい…?」


「先ほどの我の雄叫びは人間を恐怖で包み込み、死よりも恐ろしいトラウマを抱えると言っただろう。だがもしそれが動物や妖怪が効いたとすればどうなるかね…?」


「それってまさか…人間とは効果が違うって事ですか…?」


「その通りだ、オロチマルを破った少女よ。動物が我の雄叫びを聞けば野生本能が開花し、自分たちの平和な暮らしを脅かす人間を襲うようになっている。野生本能が開花する事で防衛本能が働き、爪や牙を研ぎ澄ませて襲うのだ。そして妖怪がこれを聞けば…我の手駒として操り人間を滅ぼすのだ。貴様らにも宿っている妖怪の能力も時期に使えなくなるだろう。」


「そんなのハッタリだよ…私たちは妖怪たちのサポートでここまで来たんだよ!これ以上…悲しみを増やさないで!」


「待って!はな!理性を失っちゃダメだ!」


「ひまわりちゃん!止めないで!私には…巫女としての役目だけじゃなく…家族の仇でもあるの!」


「こういう時だからこそ落ち着くんだ!今お前が無茶をしてやられたら…意識こそ失ってはいるが、まだ生きている家族を悲しませることになるのだぞ!お前は将来、人妖神社の巫女として今後も信仰の対象になるんだぞ!その責任を放ってまで理性をなくす必要はない!無駄な犠牲を出したいのか…?」


「つばき先輩…。でも…妖怪たちや動物たちを洗脳して人間が滅ぶなんて…私には耐えられない…。」


「絶望したか人妖神社の巫女よ。それでいい…今は迷い、理性をなくし我を攻撃せよ。そして仲間内で揉め合い、時間を稼いだところで洗脳した動物や妖怪たちがもう時期貴様らに牙を向ける。それまでせいぜい脆くて壊れやすい絆とやらをなめ合うといい。」


「卑怯な奴ね…。最初からこうなる事を予想していたみたいだわ…。」


「はな先輩…。」


「うう…ぐすっ…。嫌だよ…これ以上同じ歴史を繰り返して…また破壊と殺戮の世界が訪れるなんて…嫌だ…。」


家族の仇だけでなく人妖神社の巫女としての責任が重く圧し掛かり、私は早くアクドーを倒して平和を取り戻すことばかり考え焦っていた。


理性を失って立ち向かうのは危険で、仲間を置いてけぼりにしてしまう事は私にもわかっていた。


それでも私のご先祖様の運命のせいでみんなを巻き込み、私とヒメギクちゃんだけで立ち向かうべきなのに戦わせてしまった。


けじめをつけるべきだと自分で責め続け、私は混乱してみんなを困らせてしまった。


さらにアクドーの雄叫びで妖怪たちがもう一度西暦時代のように人間と争おうとしていると聞かされ、さらに責任と重圧があり私は極限まで追い込まれ心が壊れて泣き出してしまった。


ひまわりちゃんは私を抱きしめて同情して涙を流し、つばき先輩は言い過ぎたと言うように頭を撫で、るり先輩は悔しそうに涙を流し、もみじちゃんはアクドーを鬼の形相で睨みつけ、わかば先輩とすみれ先輩は周りを心配していた。


涙が一滴こぼれると聞き慣れた声がしはじめ、ひまわりちゃんに声をかけられて私は涙を拭いて向こうを見渡した。


「はな…あれ見て…!」


「え…?」


「はなちゃん!僕だよ!天風ハヤテだよ!さっきの雄叫びをかなり近くで聞いたけど、もう二度とあいつの言いなりになんかならないよ!君たちの活躍はずっと妖怪のみんなと見ていたよ!僕たちなら大丈夫だ!動物たちも我々の力で理性を取り戻しつつある!だから戦うんだ!僕たち妖怪を信じ、人間の底力を見せてくれ!」


「ハヤテさん…。」


「はなお嬢さま!私の能力も一部ありますが、皆さんの頑張りでこんなに幸運な出来事が起こったんですよ!人間たちも危険を顧みずに駆けつけてくれました!」


「アイドルと正義のヒーローの二足の草鞋だったなんて知らなかったよ!」


「月光花頑張れー!」


「俺たちの大和魂と…」


「私たちの撫子魂を見せて!」


「コールげっこうかー!そーれっ!」


「月光花!月光花!月光花!」


「みんな…!」


「どうやら私たちはみんなを信じ切れてなかったみたいだね。疑ってしまった自分が恥ずかしいよ。」


「こんなに陰で支えられていたのだな…。人間だけでなく妖怪たちにも…。」


「それに…京都市長だけでなく宇治市長や八幡市長、日向市長などの隣接地域の皆さんまでいらしているでございます…!」


「あれは…はなのご両親とおじいちゃんじゃない!?」


「はな!私たちならもう大丈夫だ!思いきり戦うんだ!」


「そうじゃ!ワシはそんな孫娘に育てた覚えはないぞ!巫女の意地をアクドーに見せつけるのじゃ!」


「あなたは私たちの自慢の娘よ!誇りを持っていきなさい!」


「ありがとう…疑ってごめんね…。」


「おのれ…どこまでも逆なでする人間共め…!」


「あれは…!」


「…?」


さらに一番後ろへと視線を向けると、そこにはボロボロなはずの花柳先生がお千代先生の肩を借りてこちらに向かっていた。


お千代先生は花柳先生を気遣うように歩幅を合わせ、花柳先生の右手にはいつもの扇子が手に持たれていた。


花柳先生は大きく息を吸って、私たちだけでなくみんなにこう言った。


「皆の衆よく聞け!そやつは彼女たちだけでなく、某にとって因縁の相手でもある!そやつの正体は皆がよく知っているであろうザイマ一族の将軍アクドーだ!神話でも聞いたことがあるであろうが…そやつは某とは直系のご先祖様なのだ!」


「えっ…?」


「花柳小次郎氏の直系の先祖…!?」


「だから某から頼みがある…!そやつの無念と共に魂を葬るために、某が見守り支えてきた彼女たちを…月光花を応援してほしい!某は…彼女たちが危険な状態になれば…彼女たちの盾にでも何でもなると決めている!皆の衆…頼んだ…ぞ…」


「旦那さまっ!」


「花柳先生っ!」


「花柳先生の意志…無駄にしません!」


「お覚悟はよろしいでございますねアクドー…。私たち月光花は…あなたを絶対に許さないでございます!」


「みんな!いくよ!」


「うん!」


弱気になっていた私を、妖怪たちのアクドーへの離反や人間のみんなの応援、さらに家族や花柳先生の復活で気持ちの整理がつく。


おかげで不安だった精神も安定し、私自身がアクドーへの憎しみで獄魔になりかけたところをみんなに助けられた。


きっと今まで助けた恩返しなのかもしれないけれど、人間にとって助け合うのはごく自然な事で何も特別な事ではない。


私はより一層アクドーとの戦いに集中した。


つづく!

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