第68話 三男オニゴロー
~藤野すみれside~
裁きの鏡に入った私は、力自慢のザイマ一族幹部で三男のオニゴローと対決する。
オニゴローは金砕棒で力任せに振り回し、まるで狂気に溢れた鬼そのものだった。
その金砕棒に直撃すればおそらく粉砕骨折では済まなさそうだ。
私は杖を前に構え、間合いを取ってオニゴローの攻撃に直撃しないようにする。
「がははは!テメェのパワーはその程度か!」
「何というパワーだ…。私のこの杖では少々分が悪そうだね…。」
「ふん!計算するところが人間の悪いところだな!そうやって自分だけ助かろうとするのだろう?」
「まさか…仲間たちが待っているのに逃げるだなんて出来ないさ。私にだって守りたいものがあるのだからね。」
「やっぱり人間ってのは群れないと弱いんだな。俺様がその仲間ってのもぶっ壊してやるぜ!」
「そんな事はさせないよ!私の仲間は私が守るんだ!やあぁっ!」
「どうした?随分と慈悲深い殴打だな。手本を見せてやるよ…こうだよっ!」
「うっ…!」
オニゴローの力技で金砕棒が腹部に直撃し、骨や内臓には異常がないものの激痛と痺れが起こった。
同時にその勢いで岩場まで飛ばされ背中を岩に強打した。
私はあまりの衝撃に息をすることを忘れ、そのままうつ伏せに倒れ込んだ。
オニゴローの圧倒的パワーはザイマ一族の中でも強く、そして力では誰も止められそうにない。
それでも負けたくない一心で杖で支えて立ち上がると、オニゴローは鈍い動きで近づき私にこうそそのかした。
「何だ…テメェはあの強打を喰らってもまだ立ち上がるのかよ…。随分タフな奴だな、褒めてやるよ。だが人間はやっぱり弱いな。力に溺れては権力を振りかざし、下の人間を奴隷のように扱いやがるしよ。」
「弱肉強食ってことかい…?」
「そうだ。俺様は力が強く、その人間共が上に立つことが嫌いでな。力がない癖に偉そうに力を振りかざす奴らを力で支配するってどんな気分なのか楽しみだぜ。そして人間は…感情任せに暴力暴言で訴え、立場が弱いフリして人権だ差別だと都合よく訴えては認められれば自分勝手に無法地帯に変えているではないか。結局…力を得れば人間はこうも暴力で訴え、暴言や誹謗中傷で心をへし折り、自分がやられればやれ差別だやれ人権侵害だ何だって負け犬のように吠え叫ぶ。力がない癖に言う事だけは一丁前で、いざやろうとすると逃げてばかりの腰抜けだ。そんな人間に存在する価値なんてあんのかよ?」
「さぁね…。私はまだ子どもだからそこまでの事はわからないけど…。随分人間の事を知ってるように言うね…。」
「ああ、知っているとも。テメェら命の短い人間より悪魔は長く生きれるからな。その分、人間の醜く弱いところを見る事も多いぜ。親父はそれを俺様たちより多く長く見てきたんだ。人間を憎み嫌うのも無理はねぇよ。だから俺様は親父の夢である極楽浄土を叶えるために力をつけ、その無力な癖に威張って力を振りかざす人間共を支配するんだぜ。テメェにはその生贄になってもらうぜ。」
「そんな事…っ…!?身体が動かない…!」
「ふはははは!俺様のパワーに身体まで恐怖を覚えたようだな!そしてこのままテメェは…死ぬんだよっ!」
「うぐっ…!」
「やっぱり人間は弱いな…。自分より強い者には媚びを売り、弱者のフリして生き残る。そして自分より弱い者には何をしてもいいかのように叩きのめす…。所詮人間なんて…力がなければただのゴミだな。」
「そうか…君もまた…力に溺れた可哀想な者なんだね…。」
「あんだと…?」
「力に溺れて暴力で支配するって君は言ってたね…。確かに人間は一度大きな力を持てば…人格が変わり…欲望が溢れ…他人を自分のいいようにする者が多いさ…。弱者のフリして自分だけ助かろうとしては…いざその自由が認められれば…やりたい放題するだろうね…。」
「ほう…わかってんじゃねぇか。人間なのに大した理解力だぜ。」
「だが君の言っている事と…やっている事は…その大嫌いな人間たちと同じ事をしているんじゃないかな…。」
「あ?テメェ…何が言いたいんだ?」
「ふふっ…君も力をつけてきたんだろう…?それで誰にも屈しないパワーを身につけてきた…。それは立派な強さだ…。だが…それを暴力で支配するなんて…古い歴史の人間たちと同じ事を無自覚でやっている…。それって自分さえよければそれでいいって…言っているのと同じじゃないかな…?君たちザイマ一族は人間よりも長生きな分…人間の悪いところばかり見てきた事は想像がつくよ…。でも…君は間違っている…!」
「ほざくほど口だけは達者だな!いい加減に地獄に落ちろ!これでも喰らえ!」
「ふんっ!」
「何だと…!?」
「力は…身体的パワーや上に立つ権力だけじゃないんだよ!本当に必要なのは他のものを受け入れ、自分の成長のために様々な知識を得て、新たな道を切り開く心の強さも必要さ!それがないと人間はどんなに躓いても立ち上がることが出来ないよ!君みたいに力に溺れ、弱者を踏みにじる行為は残念だけど同意できない!見下しているはずの人間たちと同じ事をしているって言われた気分はどうかな?」
「ああ、ムカつくぜ…!俺様は人間の様な下等生物と違って圧倒的な力を持っているのだ!醜くて弱い人間をどれほど見てきたかテメェにはわかるか!?結局西暦から…いや、西暦以前から人間共は何も変わってねぇ!人間は存在自体がちっぽけで存在する価値なんざねぇんだよ!弱者の分際で強がって支配しようなんざ図々しいにもほどがあんだよ!」
「ならその図々しい人間と同じ行動をして自分を滅ぼすといいさ。私は…君のような力に溺れているものを見ると…悲しくて涙があふれるんだ。もう二度と…力を手に入れても自ら崩壊していく姿を見たくないんだ。」
「綺麗事を抜かすな!もう頭に来た!テメェを骨一本も残さぬようにぶっ殺してやる!」
「させないよ…!言っただろう?私には待っている仲間がいる。彼女たちと約束したし、もう待たせるわけにはいかないよ。本当の人間のパワーを見せてあげるよ。」
私はオニゴローの主張に同意するところもあったけれど、人間へ言っている事と今やっている事を振り返ってみるとどうも筋が通っていなかった。
彼は人間は弱いのに強がり弱者のフリしては自由を得た時に好き放題やる。
だからこそ滅ぼしてもいいと主張するが、それは結局彼らと同じ事をしているというのに気が付いた。
もしその事に気付かなければ、私は今頃オニゴローの言う事が正しいと誤った判断をしただろう。
折れかけの杖をもう一度握りしめ、私は金砕棒相手に互角の力で立ち向かった。
オニゴローも次第に押されはじめ、徐々に私の方からも力が湧いてきた。
「ええい!めんどくさい!俺様のフルパワーを受けてみやがれ!」
「このまま勢いに乗るだけでは勝てないね…。ならば!妖魔の力!塗り壁!赤鬼!我に力を与えたまえ!」
つづく!




