第64話 次男アマジャーク
~常盤わかばside~
裁きの鏡に入った私とアマジャークは創られた荒野で睨み合い、いつ動くのかを伺っていた。
アマジャークは槍を前に構えて、妖魔の力の火縄銃では装填こそ時間はかからないものの、発射までに多少のロスがある。
このままでは不利とすぐにわかり、私はやむを得ず苦手な徒手で戦う事にした。
「おや?徒手での戦闘は苦手と仰いましたよね…?」
「ええ苦手よ…。でも生憎火縄銃ではあなたの知略と槍での素早い動きに対応できないもの。何かいいものがあれば使うのだけどね…。」
「なるほど…返答に感謝します。あなたほどの頭脳を人間のままにしておくのは、あまりにも勿体なさすぎますね。どうでしょう?僕たちと一緒にザイマ一族になり、世界を極楽浄土にしませんか?」
「あら、自分が認めた人間にはスカウトもするのね。そうね…それも悪くないかもしれないわ。でも…残念だけど私は非情になりきれないみたいね。仲間たちが私の帰りを待っているもの。そう簡単にあなたたちの話に乗れないわ。」
「いい話だと思うのですが…残念です。人間は嘘をついて保身をすると聞きましたが、あなたを見て考え直す必要がありますね。僕の思い違いでした。だからこそ…あなたの本音を聞けたからこそ…遠慮なく戦えるという事です!」
「そう…なら私も遠慮なくあなたの野望を止めてみせるわ!」
アマノジャークは槍を上まで振り上げ、私の頭上を思い切り叩こうと下に振り下ろす。
私はそうはいかないと火縄銃を頭上に持ち上げ、上からの打撃を防ぐ。
日本の槍は木材を芯に竹などで包んで丈夫さとしなりをよくすると聞いたことがある。
ひまわりと何度も間合いの練習を取ったからか、槍のリーチの長さに苦戦はするものの、火縄銃で打撃を防ぐという荒業も習得した。
「まさか銃を防御に使うなんて思いませんでしたよ。人間にもそういった頭脳はあるのですね。」
「そっちこそ悪魔にしては随分鬼畜じゃないわね。まさか様子見かしら?」
「様子見ですか…確かにそうかもしれませんね。まだお互いの本気の戦闘力を知らないのですから。それに心理戦は僕ではなくサトリーヌの方が得意でして。僕はどちらかと言えば駆け引きや作戦考案が得意なのです。」
「同じ頭脳戦でも心と技の違いなのね。あなたは技…つまり作戦考案をして相手をいかに自分の思い通りにさせるかということね。なるほどね…これは私も生半可な頭脳じゃ勝てないわね。」
「お察しが早くて説明をせずに済みましたね。さすが妖魔使いの頭脳ですね。しかし残念ながら人間はあなたのような賢い者だけではないのですよ。」
「何が言いたいのかしら?」
「さて、人間は西暦…いや、西暦以前から争い憎み合い、そして奪い合って発展しました。人間だけでなく自然や動物をも犠牲にしてまで自分たちがいかに発展するかに力を注ぎ、ついに驕りすぎた人間たちは自らを滅ぼす愚かな行為に何度も行いました。あなたもご存知でしょう?核やウイルスなどで世界を滅亡しかけたあの忌々しい事件を。」
「第3次世界大戦…!」
「そして人間たちは思い直し、平和の世界を創るために反省して新たな条約を作りました。ですがそれで人間は所詮は下等生物でしたね。結局自分が生き残るために略奪や嘘、そして相手を陥れては自分だけのし上がり、簡単に他を切り捨てていかに自分だけ得をするかを考える。現に人間はまだ格差を広げ、悪い人間が得をして、いい人間が損をしているではないですか。そんな人間は裁きを受けて当然の事です。父さんはその事をずっと嘆いておられました。そして文明が発達し、心を失った人間は不特定多数の人間同士で罵り合い、悪口を言い合っては心を壊し、命を簡単に奪えてしまう。あなた方にもあるでしょう…?自分さえよければ手段を選ばずにのし上がる…例えそれが他のものを陥れ滅ぼしてでも…。」
「それは…ない…と思うわ…。だって…私は…」
「下を向いて声がこもるという事は…反論できないほど図星を突かれて自信を失ったようですね。無理もありません…人間たちはわかっているのにやめられない。現実から目を逸らすことで自我を保っているのですから当然の反応ですね。さてと…あなたにも僕たちの理念がわかったところで…この戦いを終わらせましょう!」
アマジャークの言っていることは尤もで、人間たちは確かに自分の利益のためだけに他人や自然、動物たちを犠牲にしてはせっかく手に入れた頭脳や言葉などを悪用して詐欺をしたり、暴言や誹謗中傷をしたり誰かを操って悪用させては自分だけ逃げたりもしていた。
人間は頭脳が進化したからこそ文明が発達し、言葉も話せるようになり、文字や科学、それに音楽や美術などの文化も発展した。
それでもその頭脳を悪用してしまえば他のものを滅ぼし、自分さえ成功すればいいという知に溺れる人間も少なくはない。
私はせっかく学校で手に入れた学力と、様々な日本伝統文化に触れて長い歴史を誇る日本の文化の知識と、みんなと出会って今まで楽しかった出来事を思い出し、アマジャークにありったけの反論をぶつける。
「あなたは兄妹とお父さんであるアクドーとしか接触していないからそう言えるのでしょうけど…人間は確かに知識を誤った使い方をして心を失い、他のものを犠牲にしてでも成功したり生き残ろうとしたりしているわ…。」
「何が言いたいのですか…?」
「あなたに教えてあげるわ…。知識というのは…人間が最も必要とすべきもので、それのおかげで言葉を話し、家族や友達、恋人に好きとかありがとうなど感謝の言葉も伝えられた…。好きなものは正直に好きと言えること…感じたことを喜怒哀楽で表せること…文明の発達で長い歴史や新しい可能性を見つけられることなど…案外悪くないものよ。西暦時代はあまり評価される時代ではないけれど、今の新暦になって随分平和になったのよ。そんな平和な日本を…世界を…あなたたちの欲望だけで渡さないわ!」
「欲望…僕たちが…?笑わせないでください!僕たちは地球や妖怪、自然や動物たちのために人間を滅ぼす役目があるのですよ!それを自分たちの欲望だと…?下等生物の人間と一緒にしないでください!あなたは僕の禁断の領域に踏み入れました!ここで死んでください!」
「いいえ!私はまだ日本文化をみんなに交流してもらう夢があるの!そう簡単に死なないわ!」
「ふざけたことを抜かさないでください!これでもくらいなさい!うあああああああああああああっ!」
「見える…一つ目小僧の能力は動体視力をも上げるのね。これなら…勝てるかもしれないわ!」
つづく!




