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第63話 生まれ変わるなら

元々は西暦の人間だったアクドーはかつての人間の醜さと脆さに失望し、悪魔と契約を交わして今の様な姿になり、アクドーの意志を受け継いだオロチマルを筆頭に幹部が生まれた。


ザイマ一族は全員が家族で構成され、家族の絆があるとは思えませんが彼らなりに気遣いはあるみたいでした。


先程からオロチマルは兄妹たちが心配なのでしょうか、天を仰いで何か祈っている様子でした。


その隙に私は攻めたのですが、やはりオロチマルの戦闘能力と勘には敵わず攻撃が通りませんでした。


「貴様の底力はこの程度なのか?もう少し我を楽しませぬか。」


「まだ…まだこのままでは終わりません!秋風隠れ!」


「ぬっ…奴はどこに…?」


「ここです!」


「何だと…ぐふっ…!」


「まだまだっ!」


「くっ…どこからその様な力が…!」


私には父上の教えと母上の愛情があり、それが私に大きな力を与えてくれました。


同時に今までに出会ってきた皆さんの温かい心を思い出し、オロチマルに諭されて一度は折れかけた心を立ち直しました。


そこから新たな技である秋風隠れを習得し、木の葉をつむじ風に舞わせて身体を包み、あたかも消えたかのような錯覚を起こします。


正体不明にする(ぬえ)の能力と、風属性の魔力が上がる天狗の能力を同時に使いこなして成せるものです。


オロチマルは新技に驚きを隠せず、冷静でポーカーフェイスの表情が少しずつ曇ってきました。


「なかなかやるではないか…。ならばもう遠慮はせん!我の本気を受けてみよ!」


「そちらこそ人間の無限の底力を甘く見ないでください!」


「世迷言を!無力な人間にそんなものなど幻想にすぎぬ!これでもくらうがよい!ぬぅぅぅぅぅぅぅん!」


「では思い知らせましょう!はぁぁぁぁぁぁぁっ!」


オロチマルは大太刀を大きく振り回し、私は二刀を木枯らしのように斬りかかりました。


さすがに私も限界が訪れ、いつ気力が尽きるかわからなかった。


同時にオロチマルも余裕を失いつつあり、お互い気力と体力の勝負となりました。


ついに私は意識が朦朧とし、オロチマルは間合いを取って最後の一撃を私に込めました。


「貴様の底力は見事だった!我を随分楽しませてくれたものだ!人間も案外悪くはないと思わせたことは褒めてやろう!だが…これで最後だ!闇に葬られて死ぬがいい!」


「あなたこそ最高の好敵手でした。価値観こそまったく違えど刀を交えた事を誇りに思います。ですが…ここで終わりです!暁ノ華厳大滝斬!」


「うおぉぉぉぉぉぉっ!」


「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「ぐぬぬ…!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


私の華厳の大滝のような斬撃がオロチマルに命中し、ついにオロチマルを討ち取ることが出来ました。


しかし忍びには残心(ざんしん)というまだ戦いは終わっていない、死んだふりして奇襲を仕掛ける可能性も否めないという姿勢を持ちました。


すると意識を取り戻し目を開けたオロチマルは虫の息の状態で私にこう言いました。


「見事だ…紅葉もみじ…。ザイマ一族最強の我をここまで追い込み…そして妖刀大蛇丸を粉砕するほどに成長した…。貴様の底力…しかと見届けたぞ…。」


「そちらこそ…全力でぶつかった最高の果し合いでした。あなたを倒せたことを誇りに、アクドーを討ち取ってみせます。」


「言ってくれるな…。最期に貴様に言っておこう…。我は人間が大嫌いだ…醜くて自分勝手で…そしてそのクセに傷つきやすく脆い…。だがそんなものを抱えつつも受け入れ…成長する人間もいる…。貴様なんかがそうだ…。最期にそう思わせてくれて…感謝する…。さぁ我の胸と喉に刀を刺し出せ…。そうすれば裁きの鏡から脱出できるぞ…。」


「オロチマル…もしも生まれ変わったらもう一度私と戦いましょう。そして今度は…このような敵対する関係ではなく…対等に戦える好敵手として再会しましょう。」


「ああ…貴様の忍術道場の門下生として生まれ変われるのなら…それも悪くはないな…。さらばだ…紅葉もみじ…。我が心の恩人よ…。」


こうして私は二刀でオロチマルの喉と胸を突き刺し、オロチマルは幸せそうに笑顔で息を引き取った。


そしてオロチマルはそのまま灰になり、私は幹部の長男に勝利しました。


すると鏡の世界が崩壊しはじめ、私は吸い込まれるように脱出しました。


「もみじ!無事だったんだ!」


「もみじちゃん凄い…!あのオロチマルに勝っちゃうなんて!」


「先輩方、お待たせしました。残るは他の先輩方ですね。」


「うん!」


「ほう…長男のオロチマルに勝ったか…。奴は我が子で最も強く、最も好戦的だったが…まさか一番の餓鬼が勝利するか…。」


「彼は私と正々堂々戦い、武を示された最高の好敵手でした。人間への価値観こそ冷酷で残虐でしたが…彼は思い直して転生する事でしょう。」


「そうか…。オロチマル…奴は罪魔の子として、あまりにも純粋すぎた…。思えばお前は我の言いつけもきちんと守り、そしていつも信じてくれていたな…。」


「…?」


「まぁいい…オロチマルは確かに幹部では最強を誇るが、知に特化したアマジャーク、心に特化したサトリーヌ、力に特化したオニゴロー、そして動に特化したドクロスケがいる…。奴らは総合力でこそオロチマルには全く敵わぬが…特定の能力ではオロチマル以上だ…。戦闘慣れしている貴様だからこそ勝てたが…他の連中はどうなるのかね…?」


「何ですって…!」


「その…もみじちゃん…。えっと…後ろの鏡を見て…!」


「え…?」


はな先輩は私が無事なのを喜んだのですが、喜び方が安心したようでどこかまだ不安そうな顔でした。


ひまわり先輩は私が帰ってこれたことに完全に安心し、はなが鏡を凝視するまでは満面の笑みでした。


ところがはな先輩の言う通りに後ろの鏡を見たら…曲者揃いの他の幹部に苦戦を強いられている先輩方がいました。


そして隣にはその光景をはじめて見たひまわり先輩の顔はだんだん曇っていきました。


つづく!

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