第60話 罪深き人間たち
ヒメギクちゃんを加えた月光花で平和への誓いを立て、私たちはザイマ一族との決戦に向かう。
本殿から出ると京都の街並みはまだ壊されていなかったけれど、人々から罪魔の力が感じられ、人間に擬態した妖怪たちを襲っていた。
同時に欲望を丸出しにして暴れたり好き放題やったりしていて、獄魔にならずとも操られた人々は暴徒と化していた。
変身を遂げたヒメギクちゃんを除く私たちは篠笛をもう一度取り出し、怪しく演奏して変身する。
「闇に潜む黒き影よ…我に力を与えよ!妖魔変化!」
「それじゃあみんな…行こう!」
「うん!」
「人間でも妖魔の力が強い著名人や心が強い平安館出身のOBや在学生、妖怪と接触が多い人間たちは無事だったよ。彼らの京都府外までの避難はもう私が済ませてあるから思う存分戦えると思うよ。」
「さすがヒメギクだね!」
「今は京都から離れているのだな。」
「よかった…皆さんがご無事で何よりでございます…。」
「でも人間たちをどうしよう…?」
「はなちゃん!無事だったんだね!」
「ハヤテさん!」
「河野大将に…鬼ヶ島建設の社長さんまで!」
「妖怪たちの避難はワシらで済ませてある。汝らのライブを舞台袖で見守っていたが、妖魔の力は蓄えたようだな。」
「僕の和食を食べて力がみなぎったのもあるかもね。それより…僕たち妖怪は今人間たちに襲われたりしているんだ。君たちはその人間たちと戦うのかい?」
「そうなるかも…しれないね。」
「はなちゃん、それにみんな…。京都の平和を頼んだよ…。俺たちの力を一部受け取ってくれ。俺の天狗の能力は風属性を強める。鬼ヶ島社長の鬼の力は物理的攻撃力を上げる。河野大将の河童の能力は水属性の能力が上がるんだ。はなちゃんの担任の雪代麗香先生の正体は雪女でね、彼女の能力も預かったんだ。氷属性が上がるよ。」
「雪代先生…ありがとうございます!」
「雪代先生って雪女だったんだね!」
「だから先生の近くにいると夏は涼しく感じるわけね。」
「これで大手の妖怪の能力を得たわけだ。君たちに託すしか出来ない我々を恨まないでほしい…。本当ならワシら妖怪が対抗すべきだが…それでまた人妖戦争が起きてしまえばもう取り返しがつかなくなってしまうのでな…。」
「そうですね…もう二度とあの歴史は繰り返してはいけませんから…。」
「では皆さん、参りましょう!妖怪の皆さんも早く避難をお願いします!」
「ああ、そうするよ!はなちゃん!小さい頃から君を育て、君は姪っ子みたいな関係だったけど…たくましくなったね。絶対に死ぬんじゃないよ!」
「はい!ハヤテさん!ううん…ハヤテ叔父さん!」
こうしてハヤテ叔父さんと鬼ヶ島社長、河野大将は私たちに平和を託し、遠くへ避難しに行った。
私たちはまずアクドーが拠点にしている嵐山へ向かい、トロッコが使えない状態なのでそれぞれ口寄せで妖怪のお馬さんに乗って移動する。
私はサクラオーが元々口寄せのお馬さんで、ヒメギクちゃんもパートナーがいたけどみんなはいなかったので神社で管理していた馬を貸した。
嵐山の山頂に着くと、体を取り戻したアクドーが堂々と玉座に座って待ち構えていた。
「ほう…我の後を追って見失ったが、この場所を掴んだか。我を見つけたことは褒めてやろう。」
「アクドー…これ以上京都の平和を壊させないよ!はなの実家を返してもらうんだから!」
「それに…人間たちを思うように操り、極楽浄土を創らせるなんてさせないでございます!」
「ほう…いい心意気だ。だがいいのかね?京都の街を放っておいても…?」
「何だって…?」
「そんな…!京都の街並みが…!」
「ヒャハハ!」
「盗め盗め!」
「あの女…いい女だ!」
「ほらほら!私としたいんでしょ?」
「このクズが!待ちやがれ!」
「京都が…無法地帯に…!」
「さぁどうする…?我を止めるために戦うか…京都の街を人間の魔の手から救うか…どちらか選ぶのだ。」
「くっ…どうしたら…?」
「ここは私に任せて!私なら馬に乗りながら戦う事が出来るから!」
「ヒメギクちゃん!無茶しないでね!」
「ありがとう!それじゃあ行くよ!はっ!」
こうしてヒメギクちゃんと別れ、京都の街を破壊させないために下山していった。
金砕棒という重い武器を持ってもすぐ戦闘体勢に入れるように片手で馬を操った。
こうして私たち7人はアクドーに立ち向かった。
~焔間姫菊side~
京都の街を守るために私だけ下山し、替え馬を口寄せで召喚して街に向かう。
街に着くとそこには無法状態で人間たちが目の色を変えて欲望に溺れて暴れまわっている姿があった。
ある人は家屋に火をつけ、またある人は人間を殺そうとナイフを振り回し、さらにまたある人は異性の快楽に溺れて抱こうとしていた。
人間の欲望は妖怪や動物以上で、感情というものが壊れるとこんなに制御できなくなるのかと怖くなった。
それでもみんなは私を信じて嵐山に残り、勇気を出して私は刀を片手に持ち暴れる人間を斬って浄化する。
「これ以上京都を荒させないよ!はっ!」
「俺のモノだ…カネは全部俺のモノだ!」
「はっ!」
「ぐぎゃぁっ!」
「何でお前はわからないんだ!」
「あんたが理解力ないだけでしょ!」
「夫婦喧嘩はもうやめて!」
「ぎゃあっ!」
「ううっ!」
「へへへへ…姉ちゃん抱かせてよ!」
「うふふ…しかたないわねぇ。」
「淫らな行為はやめて!」
「きゃあっ!」
「ぎょえぇっ!」
こんなに人間たちは欲望を理性で抑え込み、ずっと我慢をしてきたんだ。
だけど罪魔の力がアクドーによって操られ暴走し、もはや制御不可能となって好き放題やっている。
はなから聞いたけれど、人間が暴動を起こすときはこんな感じだと言っていた。
暴動というのがいかに愚かで、努力の方向性を間違えているかよく身に染みてわかった。
浄化しても浄化しても人が多すぎてキリがないので、私はある使い魔を口寄せした。
「我が使い魔たちよ…世の平和を保つためにここに召喚する!口寄せの術!」
「ほう…妖魔大王さまのお嬢さんがまさかウチらを呼ぶとはなぁ。」
「珍しい事もあるものですね。よほどの緊急事態ですか?姫さま。」
本来はパパの使い魔だけど、そのパパが暗殺されて自由の身になったにも関わらず妖魔界で私と口寄せの契りを交わした妖魔界のタヌキとキツネを召喚した。
タヌキの九狸太郎はおおらかで豪快かつ適応能力が非常に高く、キツネの大佐狐次郎は理性派で冷静かつ変身能力が非常に高い。
私はこの二人の能力に全てを賭け、一気に人間たちの暴走を止める。
金砕棒を左手に、右手に手綱を繋いで二人の能力を借りる。
「二人にお願いがあります。あなた方のお力をお借りし、人間たちの暴走を止めさせてください。パパの敵討ちはそれからにしたいのです。」
「そういう事なら任せとき。ウチらもお嬢さんに借りがあるんでな。」
「そうですよ。姫さまは用済みになった私たちをもう一度必要としてくれました。そのお礼をしたかったのです。」
「ウチらは妖魔大王さまに忠誠を誓った使い魔や。将来の妖魔大王であるお姫さまに従うのがウチらの使命やで。」
「それじゃあ参りましょう。私たちが尊敬する姫さまのためにも…。」
「ありがとう…太郎さん…次郎さん…。汝らの罪なる欲をここに浄化する!活断衝撃波!」
「おおう…相変わらずのパワーやなぁ…。」
「今ですよ姫さま!」
「呪われしこの刀で…ザイマの呪縛を解けさせよ!菊紋章浄霊斬!」
太郎さんの適応能力で空中と地震に耐えられるようにし、次郎さんの変身能力でカラスの翼を手にして空を跳ぶ。
そして落下しながら金砕棒で大地を思い切り叩いて人間から罪魔の力を強引に追い出して集合させ、何故か出てきた謎の化身がさっきの大太刀でとどめの一撃を刺す。
すると人間たちは一斉に断末魔を上げながら気を失い、罪魔の力は徐々に失っていった。
疲労困憊な私は二人組のバイクに乗った男が迎えに来てくれ、何者かが意識を失いかけたところにバイクに乗せてくれた。
「あなた方は…?」
「いいから俺に捕まってな!すみれ姐さんの仲間だろう?だったら俺たちだって手伝うぜ!なぁドラゴ!」
「ああ!すみれ姐さんが頑張ってるのに、俺たち暴走族が黙ってるわけねぇよな!タイガ!」
「あなたたちは確か…すみれさんの…」
「ほら行くぞ!姐さんたちが待ってるぜ!それとこれ食え!疲れを一気に吹っ飛ぶぞ!」
「避難に遅れた人間たちは俺たち不良がなんとかすっから!後は任せてくれよ!」
「ありがとう…。私は少し休むね…。」
すみれのファンを名乗った不良の二人が私をサポートし、タイガさんは私をバイクに乗せ、ドラゴさんは私に大好物のおにぎりを渡した。
嵐山に向かいながらそのおにぎりを食し、少しだけ疲労が回復した気がした。
みんな…こっちはもう大丈夫。
今からそっちに行くから待ってて!
つづく!




