第58話 京都事変
~春日はなside~
私とひまわりちゃんは二人の仕事でクイズ番組の収録をし、その収録が終わったところにるり先輩から緊急の呼び出しのメッセージが届いた。
ヒメギクちゃんが迎えに来てくれて、今泊まっている宿に全員集合との事だった。
私は何かあったのかなと疑問に思い、ひまわりちゃんも何かを感じたのか急いで戻る事にした。
宿に戻ると、メッセージを見たみんながボロボロの状態で集合してて、何が起こったのかわからなかった。
部屋に入ると疲労困憊のるり先輩とヒメギクちゃんがそこにいて、全員が合流すると深刻な顔でこう言った。
「みんな戻ったね。これから私がここに来た理由を話すね。」
「それで、何があったんだ?」
「深刻な事態に陥ったって顔してるわね。」
「何があったか話せるかな…?」
「まずるりさんがザイマ一族のサトリーヌと接触した。そしてその幹部と交戦してかなりの傷を負ったの。」
「む…?るりも交戦したのだな?私もドクロスケと交戦したのだが。」
「私もオニゴローと接触したよ。」
「え?みんなもなの?私もアマノジャークとぶつかり合ったわ。」
「では先輩方もですか…?私はオロチマルと当たりました…。」
「どういう事…?みんなが幹部と衝突したって…?」
「ひまわりちゃん…もしかしたらこれって…!」
「うん…幹部たちは度重なる私たちとの戦闘で罪魔の力を集める事に成功した。そして人間が最も多い東京に目をつけたものの、他の組織が既に侵略していた。そこであなたたちが東京にいる事を確認し、妖魔の力が最も強いあなたたちに罪魔の力を生み出すよう戦闘で挑発した。そのせいで奴らは…京都に罪魔の力を持ち帰り、ついにアクドー復活の儀式を始めたの。」
「そんな…!」
「私たちはそのアクドー復活に利用されたのでございます…。本当に申し訳ございません…。」
「ううん…みんなは悪くないよ。ただあいつらがみんなを利用し、騙しただけだよ…。」
「それで京都はどうなってるの…?」
「人妖神社本社は…半径1km時点で人間だと近づけないの。妖怪ではギリギリ近づけるけど…不気味すぎて誰も近寄ろうとしないの。それで…中から膨大な罪魔の力を感じたんだ…。もしかしたら…何か儀式をしているかもしれない…!」
「そんな…!」
「そう言えば…花柳先生は?」
「先生は用があって京都に先に帰ったよ。」
「こんな時に…いや、こんな時だからこそ京都に帰ったのだろう。」
「まさか…花柳先生が危ないかもしれないわ!早く京都に戻りましょう!」
私たちはヒメギクちゃんが京都に異変が起こったと同時に、花柳先生が急に京都に戻ったというタイミングが重なり、悪い予感がして急いで東京駅に向かった。
ヒメギクちゃんの愛馬は疲れ果てているので妖魔界でお休みし、ヒメギクちゃんもやむを得ず新幹線で京都駅に向かう事になった。
このままだと京都に大きな災いが本当に起きちゃう…!
~京都市~
「父上、人間たちによる大量の罪魔の力を集めました。」
「うむ、ご苦労であった…。我の体を取り戻す儀式をすぐに始めよ…。」
「ウッス!」
「まずはオロチマル兄さんからですね。」
「ああ、任せろ。憎き父親の骨…呪われし血統に報いあれ!次はアマノジャーク、お前だ。」
「ええ、任せてください。獄魔共の肉…闇の肉体を与えよ!サトリーヌ、出番ですよ。」
「わかったわ。忌々しき母親の血…偽りの愛を消せ!ドクロスケ、仕上げなさい。」
「ウッス!仇のその首…怒りと憎しみを受け入れよ!オニゴロー兄ちゃん!最後ッス!」
「おうよ!大罪の将軍よ…再び我らがザイマ一族として目覚めよ!」
「ぐおおおおおおおおおおおおっ…!」
「おお…そのお姿こそ…我らが父上だ…!」
「よっしゃあ!今すぐに暴れてやろうぜ!」
「ふっふっふ…慌てるでないぞオニゴローよ。我は復活して間もないのだ、無理に動けば慣れぬ肉体に蝕まれる。人間の悪しき空気を吸い、身体に慣れさせるのだ。」
「さすがパパね。人間と違って慎重でカッコいいわ。」
「オニゴローは相変わらずせっかちですね。そんなに早く極楽浄土にしたいのですか?」
「うるせぇ!俺様は人間と同じ空気をもう吸いたくねぇんだよ!」
「気持ちはわかるぞオニゴロー。だが案ずるな弟よ、父上が復活した今、もうすぐ極楽浄土が生まれるのだ。焦って行動したところで人間たちの心まで支配は出来ぬだろう?」
「お、おう…!」
「ではどうするんスか?」
「妖怪を操り人間を滅ぼし、絆を壊した時に人間がいかに愚かな下等生物かを思い知らせるのだ。妖怪共を率いることが出来れば、我々の極楽浄土へ近づくことが出来る。」
「なるほどね…オロチマル兄さんは相変わらず人間の悪い心を理解しているわね。」
「だがその前に…客人が訪れたようだ…。」
「何ですって…?」
「そなたたちがザイマ一族だな?某の教え子たちが世話になったな。」
「テメェは誰だ!?」
「某は…否、某たちはザイマ殲滅隊だ。」
「なるほど…貴様の引き金か…春日家の人間よ。」
「今ここに復活したのは愚かじゃったな、アクドー。もうじき月光花が来る。貴様はここで終わりを迎える。」
「その前に我は身体に慣れ、人間共を支配し人間界を極楽浄土にする。その前に貴様ら全員…地獄行きになっている…。はぁぁぁぁっ!」
「ぬぅんっ!」
「お父さん!親玉は任せたわ!あなた!」
「うん!幹部たちは任せて!」
「随分ナメられたようだな…。」
「妖魔大王より妖魔の力が劣った連中が相手とはね…。」
「某も忘れてもらっては困るぞ。愚かな我が先祖よ…某の先祖代々伝わる呪いの太刀で成敗してくれよう!」
「こいつ…親父と同じ血を感じるぞ!」
「認めません…こんな奴が父上と同じ血統なんて認めません!」
「どうするッスか!?こいつムカつくッス!」
「殺せばいいだけの話だろ!」
「ええ、あいつの心は読めないけれど…邪魔であることは確かね!」
某は呪われし血統で、アクドーが人間時代に遺していった一人息子の末裔だ。
故に某はアクドーとは直系の子孫で、今まで人間たちに隠していたが、ご先祖さまであるアクドーは生まれた瞬間から両親に虐待され、学校でも差別を受け、社会でも上手くやっていけなかった。
そして何者かが力を与え、悪魔として転生させてアクドーとして生まれ変わったのだ。
何故人間に失望し、人間を憎むようになったのか某には何故かわかる。
だが己で這い上がる事をやめ、責任を擦り付けて人間そのものを排除しようとする心意気が某には許せんのだ。
春日守さんは強大な妖魔の力でアクドーを押し続け、某たちも幹部共を相手に優位に立つ。
月光花の皆が合流するまで足止めしなければ、京都は災いの国へと変貌してしまう。
「アクドー…知らぬうちに力をつけたようじゃな…!」
「老いとは悲しいものだなマモル…。我は悪魔になった故に老いなどせぬぞ…。ぬぅんっ!」
「ぐはっ!」
「お義父さん!」
「よそ見するなど余裕なものだな!」
「くっ…!」
「あなた!」
「邪魔だどけ!」
「きゃあっ!」
「春日殿!」
「消えろ…忌々しき偽の子孫よ…。」
すまない…月光花の皆の衆…!
「さて…邪魔者はすべて排除した…。人間界へ本格的に乗り込むぞ。もうこの住居は要らぬ。さぁ行け我が子たちよ!人間界を極楽浄土にするのだ!」
「ははっ!」
「けど父上…こやつらはどうしますか?」
「その辺に置いておけ。どうせ人間は滅びるのだ。その瞬間を見せつけるために放っておくのだ。」
「はい、父上の仰るとおりに。」
某たちは春日家と共にザイマ一族の野望と、アクドーの復活の阻止に失敗し、意識を失った。
このまま殺されると思ったのだが、情けをかけられて命拾いはしたのだが体が動かぬ。
我々人間はザイマ一族に敗北し、京都を安々と渡してしまった…。
~月光花side~
「これは…!?」
「酷い…はなの実家をこんなに破壊して…!」
「それよりもお父さんたちの妖魔の力を感じないよ…?」
「まさか…!」
「先輩方!急ぎましょう!」
私たちは悪い予感がさらによぎり、ザイマ一族の気配を感じない上にお父さんたちの力が弱まっていくのを感じた。
本社は跡形もなく焼き尽くされ、もはや用済み状態になっていた。
鳥居をくぐって本殿に行くとそこには信じられない光景があった。
「おじいちゃん…お父さんにお母さん…!」
「そんな…はなの家族が…!」
「花柳先生は…?お逃げになられたのですか…?」
「いいえ…こちらにいるでございます…!」
「そんな…花柳先生まで…!」
「目を覚ましてください…まだ私たちはあなたにお礼をしていないんですよ!?」
「お父さん!お母さん!おじいちゃん…!目を覚まして…目を覚ましてよぉ…!」
「はな…!私たちがもう少し早く着いていれば…ごめんね…!」
「おのれザイマ一族…もう許さないぞ!」
こうしてザイマ一族に抵抗したお父さんとお母さん、おじいちゃんに花柳先生は敗北し、ついに人間界への侵入を許してしまった。
このまま私たちは…ザイマ一族によって偽りの極楽浄土と化しちゃうのかな…?
つづく!




