第54話 盆栽
~常盤わかばside~
私はもみじの走り込み、つばきのなぎなたの自主稽古、すみれの筋トレをしている間に、朝に運動音痴を克服すべく縄跳びやバランスボールで体幹を鍛える。
そしてみんなが自主練からすぐに食べれるようにレシピを見ながら家庭日本料理を作り、仕事の時間までに食べ終えそれぞれ現場に行く。
私の仕事は前に急遽京都の支部スタジオではなたちがお世話になった番組、芸能人格付けコンテストにオファーが来た私は、テーマが盆栽という事でそのオファーを受ける。
審査員の先生は私の祖父で、小さい頃から盆栽を教わった常盤大樹先生になる。
大樹おじいちゃんは非常に職人肌で頑固だけど頑張る人には厳しくも優しいおじいちゃんで、知らない人からはカミナリおじさんと言われているけれど、お弟子さんにとっては尊敬する先生でもある人だった。
そんな大樹おじいちゃんの厳しい審査の中で私以外にも盆栽を趣味としている芸能人の方々に挑む。
「さぁ始まりました!芸能人格付けコンテスト!司会は通天閣の島田慎一でお送りします!では審査を受ける5人の方々です!」
「月光花の常盤わかばです。」
「フルーツジュースの村上正司です。」
「芸人の吉田ベーカリーです。」
「俳優の緒方健一です。」
「セルフチューバーの伊達眼鏡です。」
「セルフチューバーの伊達眼鏡はあれか、最近売れてきたセルフチューバーの東海エアーマンやんな。」
「ちょっとおバカな高校や大学のクラスメイトの集まりです。スポーツ企画中心にやってます。」
「でも何で盆栽を?」
「去年の動画で盆栽やってみた動画で僕が才能ありだったので挑戦してみようと言われたんですよ。」
「相当な自信やなぁ。しかも今日は常盤大樹先生のお孫さんも来てるやん。」
「ええ、常盤わかばです。私は小さい頃からおばあちゃんの文学だけでなく、おじいちゃんの盆栽を嗜んできました。このメンバーに負けるわけにはいきません。」
「おーこわ、先生そっくりやな。では先生!ランキング行きましょうか!」
「うむ。」
最初の4位と3位の平凡ランクに吉田ベーカリーさんと伊達眼鏡さんがランクインし、形こそ美しいけれど季節感と躍動感が足りないと指摘される。
2位の才能ありに選ばれた村上正司さんは季節感と水の与え方、そして旬の時期ではなく次期を見越した作品で高評価を得た。
そして1位と最下位の最高ランクと最低ランクの発表の時が来た。
「では第1位は……常盤わかばちゃんです!」
「ほっ…。」
「えー!何でですかー!?」
「まずは最下位の緒方の作品はこちらや!」
「うわっ!ひどっ!」
「もう木が枯れているわね…。」
「だって枯れたほうが時代感あるって!」
「先生!」
「あのな…時代感を出すならもっと別の表現があるじゃろう!木というのは枯れたらもう樹齢も何もないし、もっとどっしりと長く長く育つのが樹木というものじゃ!枯れているイコール年季が入るという偏見を捨てなさい!」
「はい…。」
「では1位のわかばちゃんの作品です!」
「おお…!」
「お孫さんだったのは本当だったか…!」
「すごい…!」
「これはお見事じゃ!ワシの孫にしては上出来じゃの!非の打ち所がないと言えば嘘にはなるが、訂正するとすれば経験を積んで、他の者の作品をいい意味で盗むことじゃ。わかば、お前はまだ他の皆よりも若い。若葉のようにいろんな光を吸収するんじゃよ。」
「一番上なのに厳しい…こういう先生なんですか?」
「はい、おじいちゃんは褒めてくれるけれど、最後はこうすればもっとよくなるとアドバイスを送るんです。完璧だ、非の打ちどころは全然ないと100点を与える事が絶対にないんです。」
「厳しい…それを10年も受けたのだからこのクオリティは当然か。」
「一応言っておくぞ。もしこれが贔屓だというのなら…他の盆栽師からの手紙も来ておる。CMの間に読んでおくとよいぞ。」
こうして私は盆栽でトップになったものの、名人レベルと言われる私よりはるかに上の盆栽の実力を持った先輩方も5人いる。
オネエタレントの川田ゴリエさん、着物女優の島みずほさん、盆栽を3歳の頃からやっていた芸人兄弟コンビ、カミナリおじさんの神成真弥さんと神成憲弥さん、そして歌舞伎俳優の中村龍三郎さんという実力者がいる。
彼らを越えるには何度も盆栽で才能ありになり、名人オーディションに合格しなければならない。
その大きな壁を越えるためにもう一度この番組に出ましょう。
収録が終わってすぐにおじいちゃんの車に乗り、月光花で泊まっている民宿へ向かう。
「わかば、お前…成長した様じゃの。」
「まだまだよおじいちゃん。次は絶対に100点だって言わせるんだから。」
「ワシは厳しいぞ。人間に完璧を求めるのは当たり前だが、完璧になれるかと言えば不可能じゃ。もしそうなれば人は思い上がり、他人を見下してしまう。ワシ自身の作品も100点の作品などないのだからの。」
「そっかぁ、それで何度もやり直したりしていたのね。おじいちゃんらしいわ。おばあちゃんが惚れるのもわかる気がする。」
「……っ!?」
「きゃっ!どうしたのおじいちゃん!?」
「目の前に華奢な男が…!」
「えっ…?銃を向けてる…おじいちゃん伏せて!」
「おう!」
銃声と共に車の車窓が割れ、おじいちゃんこそ無事だったものの私はメガネのフチに被弾し、無傷ながら生命線であるメガネのレンズが割れてしまった。
視力が一気に落ちた私は何も出来ず、それに気づいたおじいちゃんは予備のメガネを取り出して渡した。
その直後におじいちゃんは怒りのあまりに車から降り、あの男の方へ近づいて怒鳴った。
「こら!ワシならまだしも孫が死んだらどうするんじゃ!しかも人に銃を向けるなど脅しでもいかん!」
「やれやれ…うるさいジジイですね。少し黙ってもらえませんか?」
「何じゃと…うがっ…!」
「おじいちゃん!あなたはまさか…アマジャーク…!」
「おや、覚えてくださったのですね。そういうあなたは常盤わかばさんですね。お久しぶりです。あなたの大切な人を傷つけ、我々ザイマ一族の目的を果たす時が来ましたよ。」
「許さない…私の大好きなお爺ちゃんを傷つけるなんて…!あんただけは絶対に許さないわ!闇に潜む黒き影よ…我に力を与えよ!妖魔変化!常盤に舞い誇ることワカバのごとく!常盤わかば!」
「火縄銃など恐れるに足りませんよ。それとも…まだ大の苦手な武術があるのですか?」
「確かに接近戦は苦手でどちらかといえば射撃や頭脳戦が得意ね。でも…弱点が何よ…大好きな人を傷つけられて…苦手だとか言ってられないわ!覚悟しなさいアマノジャーク!あんたに人間の怖さを思い知らせてあげるわ!」
「わかば…お前まさか…!」
「おじいちゃん、安心して…。この化け物は私が倒すからね…。それと…危ないと思ったら私を置いて逃げて…。警察や自衛隊でも手に負えない相手だから…。」
「わかば…かたじけない…。」
おじいちゃんは私を見て安心したのか安全な場所へと体を這って避難した。
木陰に隠れて様子を伺い、私に危険がないか周りを見て確認する。
健康のために毎日ラジオ体操やっているとはいえもう高齢なので無理はさせられないし、被弾させるのも嫌だから危険がせまったら私を置いて逃げるように諭した。
私は憎しみと怒りを込めてアマノジャークと戦う。
つづく!




