第49話 オロチマル襲撃
きららさんの勇気ある行動でオロチマルを揺さぶったものの、それが災いして戦に巻き込まれてしまいました。
妖魔の力が少ない彼女をケガさせたのでしたら、私の監督不注意になるでしょう。
だからこそ彼女を守らなければと刀をギュっと握りしめ、オロチマルに立ち向かいました。
「あなたのような卑劣で残酷な奴に…人間の心がわかるものでしょうか…?」
「わからぬな。わかろうともしたくないのだからな。人間のくだらぬ心を持つのだから欲望に負け、身勝手な言動を犯すのだからわかりたくもない。貴様はやはりまだ子どものようだな。」
「ええ…確かに心の闇をそこまで知っているわけではありません。そこは認めましょう。ですが…それを利用して野望のためだけに犠牲になられてもいいのですか…?」
「今更何を聞くのかと思えばそんな事か。野望を叶えるのに犠牲はつきものなのだ。悪いが話はここまでだ。我が父アクドー様の復活の邪魔をするのなら、貴様をここで葬ってやろう!」
「そんなことはさせません!」
オロチマルは打刀を抜刀して私に斬りかかり、私は二刀でそれを防ぎます。
やはり人間ではなく悪魔の力があり、人間離れした力に少しだけ圧倒されました。
成長しているのは私たちだけでなくザイマ一族も同じという事を実感しました。
するとオロチマルは打刀を力いっぱい振り回し、叩き斬るように私の頭上から斬りかかりました。
「これでもくらうがいい!」
「くっ…!やはり防ぐだけでは…!」
「防御ばかりでは勝てぬが、攻撃ばかりしても疲弊するだけだ。それを貴様はわかっているようだが…こちらのペースでそんな暇はないのだな。」
「悔しいですが…まだまだあなたたちを倒すには修行が必要ですね…!」
「そうか、だが貴様も随分腕を上げたようだな。我も腕が痺れ、少しばかり楽しめてしまったようだ。なら…これはどうだ!」
「きゃあっ!」
「我が刀だけだと思うのならそれは油断というものだ。刀が何本折れようとも素手でも十分戦えるのだ。」
「まさか…私の実力を試していたのですね…!」
「ほう、そこまで理解していたのか。人間にしてはよく考えているのだな。貴様を殺すにはいささか惜しい。どうだ、我らと一緒に人間を滅ぼし、世界を極楽浄土にするためにザイマ一族に加わらぬか?」
「何ですって…!?」
「貴様には力もあるが心も強い。そして非情に徹することが出来ればより完璧になれる。そこの子娘は表面ばかりがそうだが心の中では甘すぎる。貴様は忍であったな。どうだ、悪い話ではあるまい。」
「あなたにとっては残念ですが…私は仲間の皆さんともっと思い出を作りたい、ファンの皆さんの支えでここまでこられたから感謝を伝えたい…。やり残したことがたくさんあるのであなた方みたいに仇で返すような真似は致しません!」
「そうか…残念だったな。」
「うう…!」
「きららさん!」
「そこの小娘も意識を取り戻し、貴様も守らねばならぬため不利だが、一般人にバレてしまえばこちらも後味が悪いし、活動しにくくなってしまう。今回はここまでにしておいてやろう。紅葉もみじ…命拾いしたことをせいぜい神や仏に感謝するがいい。ではさらばだ。」
そう言ってオロチマルは一瞬で姿を消し、私は疲労困憊の状態できららさんに歩み寄りました。
きららさんは先程の真空波で気を失ったものの、無傷で怪我はありませんでした。
私は念のために応急処置で木陰に寝かせ、きららさんはそれに気付いたのでしょうかギリギリの状態の声で話しかけました。
「あなた…随分過酷な運命を背負っていますのね…。」
「ええ、アルコバレーノとはどんな関係かはわかりかねますが…京都にかつてザイマ一族が災いをもたらし、それを妖魔大王になった一人の男性が地獄に封印したという神話があります。それがまさか神話通りになるだなんて思いませんでした。」
「ええ…あの新・日本神話のですわね…。西暦の最後、第3次世界大戦で日本も参加したものの…内部の災いであまり参加出来ず、世界は核と災いの炎、そして大量のウイルスによって包まれたといわれていますわ…。」
「その京都ではザイマ一族による暴走で日本は妖怪と戦争状態になり、それを食い止めたのが妖魔大王です。きららさんも新・日本神話を知っていたのですね。」
「これでも多摩女子大付属中等部3年の次席ですのよ…。悔しいですが…葉山みどりには敵いませんでしたわ…。その彼女は今…モノクロ団との決戦のために…異世界に参りましたわ…。」
「ザイマ一族でさえ知らなかった悪の組織…。なるほど、だから首都圏は薄暗く地獄のような場所になっていたのですね。」
「もし彼女たちが戻ってきて、最後の決戦になったら…あなた方は応援をしてあげなさい…。わたくしは表では出来ませんので…あなた方に託しますわ…。」
「約束します。ただ私たちもザイマ一族との最後の決戦には応援してください。そして…あなたが本当に自由になって、本来の人格でアイドルを続けられるよう願います。」
「あなた…ありがとう。もう大丈夫ですわ。パパの監視が来ないうちに撤退しますわ。あなたも早く仲間のところに行きなさい。遅刻して怒られますわよ。」
「それもそうですね。それでは失礼します。」
「ええ、ごきげんよう。…紅葉もみじ…本当に器が大きいですわね。久しぶりにあの子に手紙でも書こうかしら…。」
こうしてきららさんと別れ、私は遅刻ギリギリで皆さんと合流し、仕事をすることになりました。
私の仕事は年始のスポーツ大会で、HANZOというアスレチックスポーツゲームで最後まで完走することが出来ました。
アクロバットかつパワーとスピードが要求されるこの番組では運動自慢の一般の方や芸能人まで様々で、時間切れか失敗して水に落ちればその時点で終了するものでした。
この番組は10年ぶりの放送になり、女性で初めて全部クリアしたことがニュースにもなりました。
つづく!




