第4話 レッスン開始
私は花柳小次郎さんの下でプロデュースされるアイドルグループの一員になり、お父さんの許可もあって養成所へ向かう。
養成所は木造建築で、平安館女学校の近くにあった。
平安館女学校は元々西暦時代の平安時代に平安京があった場所で、第3次世界大戦で京都が焼けてしまい、新たに建て直して大和撫子の育成を方針に創立された学校である。
それも平安館は女学校と、男子部である平安館学院に分かれ、同じ敷地内だけど男女別々になる。
幼稚園から大学まであるエスカレーター式で、中等部からは男女別学になる。
制服も女学校では着物に袴、夏にはミニスカ状の浴衣になり、部活も武道系や伝統的な日本文化系のみになっている。
あの世界的名門校である国立東光学園でさえ武道系ではうちに勝てないと言われるほどの名門校で、和の平安館と世界では言われている。
大学では男子は詰襟に学生帽、女子は白いセーラー服と大学にしては制服着用義務があるなど明治大正時代をイメージさせる。
その学校の近くに文化会館があり、今年から花柳さんが全財産を出して買い取った場所だった。
10年前は名プロデューサーであり、わずか1年で世界的アイドルグループを築き上げたけど、わずか数年で姿を消してしまった。
それから何度も撫子アイドルグループを作り、日本文化をより世界中に知らせるために尽力を尽くした。
ところが指導がかなり厳しく、ついていける子たちはあれから今まで誰一人もいなかった。
これらは全部ひまわりちゃんの情報だけどね…。
そしてこれから…その厳しい稽古が待っていた。
「コホン、今日からそなたたちが新しい大和撫子アイドルグループの一員だ。メンバーは全員で7人、それぞれ個性的な経歴があるようだね。某がそなたたちのプロデューサーになる花柳小次郎だ。以後よろしく。」
「よろしくお願いします!」
「では最初に歌唱力を見る。まずは日向さん、歌ってみなさい。」
「はい!あ~~~~~~~~~…」
「ふむ、なるほど…。発声が素直に出てるし声量も悪くない。ただ音程が少しブレているな。次は紺野さん。」
「かしこまりました。あ~~~~~~~~~…」
「ほう、紺野さんは美しい歌声だ。繊細な心がよく聞こえる。春日さん、そなたの歌声、聞かせてほしい。」
「はい…!あ~~~~~~~~~~…」
「うーん…発声も悪くないし力が入っているわけではないのだが…声量不足といったところか。となると性格面で引っ込み思案であろう。しかしそれでも構わない、時期に慣れると信じている。」
歌の稽古では理論的発声の常盤先輩、精神統一の出来ている紅葉さん、力強い発声の藤野さん、そして負けないくらいの力強さの冬野先輩がそれぞれ歌い終え、次に舞踊稽古となった。
舞踊稽古はいわゆるダンスレッスンで、基本ステップだけでなく日本舞踊や能楽などの舞いをする。
ひまわりちゃんは運動神経がいいけれど、慣れない動きでギクシャクしてしまった。
紺野先輩は日舞で慣れていて、すり足も簡単にこなした。
最後に演舞稽古で、演劇やパフォーマンスなどを総合的に見る。
私は最後まで緊張して花柳さんに認めてもらおうと必死だった。
それでも花柳さんは私を見ると渋い顔をし、私には才能がないのかな…と気分が落ち込んだ。
他のみんなはうんうんと頷き、それぞれの才能を発揮した。
休憩に入り、私はベンチで少し一人で考え事をした。
その事を冬野先輩に見られ、おしるこの缶を私に渡した。
そして冬野先輩は私を励ますように声をかけた。
「君が春日はなだね。私は冬野つばきだ。よろしく。」
「あ…あのなぎなたの全国大会に出場した冬野先輩ですね。学校でも有名です。」
「君も人妖神社の巫女で有名じゃないか。だが全国大会出場はもう過去の話だ。今はただの冬野つばきだ。全国大会で右の手首を痛めてね。完治してすぐに高校進学と同時に続けようとしたが…右手首に痺れが起き、それからなぎなたをするのが怖くなってしまったのだ。イップスってものだとはよく言われている。だが生憎私は一流ではない。イップスを言い訳にするのは三流だからな。」
「そんな…冬野先輩はカッコよくて一流のなぎなた選手ですよ。私なんて…人妖神社の巫女見習いなのに…実家を守れなかったです…。」
「あの人妖神社の炎上事件か?そのことは本当に残念だ。私が悩んでいる時に、姉であり声優をしている冬野つつじがこのプロジェクトを薦めてね。新たな私を見つけるにはこれがいいだろうと受けたのだ。」
「そうなんですね…。」
「君は恐らく神社の使命に追われた上に、元々引っ込み思案な性格なため、委縮してしまったのだな。」
「どうして私の性格を…?」
「目を見ればわかるさ。さぁ、そろそろ稽古の時間だ。気を引き締めていくぞ。」
「は、はい!」
「さて、次の稽古は…否、そなたたちによい知らせだ。某が個人経営する芸能事務所、花柳文化劇団をここに創立する事になり、そなたたちがその劇団の所属芸能人だ。」
「もう所属でございますか?」
「少し早すぎる気がしますが…?」
「それに伴い、そなたたちには宣材写真を撮ってもらう。それぞれ着物は用意してある。好きな着物を着て写真に写るがいい。所属芸能人は今のところ、そなたたちだけだからな。」
「はい!ありがとうございます!プロデューサー!」
「うむ。だがその前に一つ言い忘れていたことがある。私の事はプロデューサーではなく、先生呼ぶといい。その方が和の雰囲気があってよいだろう。」
「はい!先生!ご指導ありがとうございました!」
宣材写真を撮り終え、私たちの活動が本格的になる。
芸能事務所とはいえ、プロの事務所ではなくローカル路線で今後はテレビを目標に地道な活動をする。
それから1週間が経ち、新たな情報が入る。
同い年で隣のクラスにいる藤野すみれさんがお父さんの人脈で時代劇のエキストラ、後輩の紅葉もみじさんが実家の忍術道場のロケに来る大物俳優さんのインタビューで出る事になった。
私とひまわりちゃん、紺野先輩、常盤先輩、冬野先輩の仕事はもう少し後になりそうだった。
つづく!




