第47話 新年
新年を迎えた私たちは祝賀会の直後に私だけ京都に戻り、巫女としての役目を果たす。
他のみんなは東京でこれからの活動のために残り、花柳先生もみんなの保護者として同伴する。
一人で京都に戻ると、そこには町のみんながお迎えに来てくれて、温かいムードで戻った。
「おかえりなさい、はなちゃん!」
「紅白見たよ!本当にすごかった!」
「はなちゃーん!」
「えへへ…ありがとうございます!」
「はな!おかえり!」
「ただいま!お父さん!お母さん!おじいちゃん!そして…ヒメギクちゃん!」
「おかえりなさい。年始の巫女の役目のために戻ってくるなんて、神社を誇りに思っているんだね。」
「うん、やっぱり人妖神社で生まれ、ずっと育てられたからね。でも…」
「うん、確かにこれだけ人に囲まれたら神社に行けないわね。」
「無理もなかろう。はなは紅白出場アイドルじゃからな。」
「すみません!娘はそろそろ巫女としての役目を果たさないといけないので通してください!本社は無理でも支社でやりますのでお待ちくださーい!」
京都に戻ってすぐにたくさんのファンに囲まれ、家族やヒメギクちゃんは人妖神社支社まで送ろうとファンを遠ざける。
少しだけ予定が遅くなっちゃったけれど、人妖神社の上半期の運勢を占う伝統行事、書き初めを行うのだけど、それは妖魔の的という大きな俵で出来た的を目掛けて風が吹く中で弓で矢を放ち、その運勢を一畳サイズくらいの紙に墨で四字熟語を書き初めをするという神事になる。
本来の巫女服だと上がよくても下が汚れる可能性があるので、墨の跡が目立たない黒い巫女袴を穿いて書く。
支社には大勢の人々でにぎわい、私の神事を楽しみに待っていた。
「おお!人妖神社の巫女さんが帰ってきた!」
「おかえりなさい!紅白楽しかったよ!」
「アルコバレーノに負けるなー!」
「はなちゃーん!カワイイー!」
「はな!You aer berry cute!」
「みんな…ありがとう!」
「はなもすっかりアイドルのスターだな。」
「ええ…あんなに引っ込み思案で前に出たがらない子だったのにね。」
「人見知りですぐワシらの陰に隠れる目立たぬ子がたくましくなって…。ワシも年を取るわけじゃ。」
「まだお義父さんは若いですよ。」
「婿入りがよう言うわい。」
「うふふ。それじゃあ私たちの可愛いはなの勇姿…ここでゆっくり拝見しましょう。」
準備を整えるために私は控え室で衣装に着替え、巫女見習いのヒメギクちゃんはすっかり巫女としての役割が出来るようになり、今では私の補佐を務めるようになる。
先輩方もヒメギクちゃんの一生懸命さと、妖魔界を代表する身としてかもしれないけど人妖神社への理解の早さと、人間と妖怪が深い絆で結ばれていると信じる強い心を認めている。
そのヒメギクちゃんは私の着付けをし、先輩方は俵の的を用意していた。
黒の巫女袴を着用し、胸当てをつけて強風の中で弓を構える。
矢をつがえると強風のあまりに手元が震え、去年まで味わった事がないプレッシャーを感じ、アイドルを始めたことがこんなにも影響を与えるだなんて思わなかった。
心の整理がついた私は矢を放つも、矢は的の真ん中からかなり外れた。
その運勢は…とんでもない運勢だった。
「そんな…!」
「ああ…あの春日さんがあんなに外すなんて…!」
「マズいわね…!」
「え…先輩方、一体どんな運勢なんですか?」
「いつもの春日さんならど真ん中に的を得るのが当たり前で、どんなに悪い環境でも毎年いい運勢だったの。でも今年は…何か世の中を狂わす運命があるかもしれないわ…。もしかして…去年の春に起きた本社の大炎上と関係が…。」
「ということは…ザイマ一族との決戦の時かもしれない…。はな…。」
(運勢は最悪かもしれないけど…やれることはやった。もしそうなったとしても、みんなと一緒にこの災難を乗り越えるって決めたもん…。あえてありのままの結果を書こう。)
この上半期の神事を5歳から始めてから一度も真ん中を外したことがない私が生まれてはじめて外し、今年は何か運命を変える災難が起こるという結果になった。
完全に外してしまえば世界規模の不幸が襲うけれど、幸いギリギリでそこまでの結果にならず、人間の力で乗り越えられるかどうかのレベルで済んだ。
私は深呼吸をして覚悟を決め、筆に墨をつけて書き初めをした。
その文字は…
「お待たせしました!今年の運勢を占う弓と書き初めがただいま準備が整いました!では春日はなさんに登場してもらいましょう!」
「今年の運勢は…危急存亡です。」
あまりの結果にお客さんはざわつき、意味を知らない人は何それ?という声もあった。
私も巫女のみんなも家族も全員深刻な顔つきになり、ヒメギクちゃんは険しい顔をして責任感を感じていた。
私は司会の人にマイクを渡され、ありのままの意味を説明する。
「危急存亡…それは危険が迫っていて、生き延びるか滅びるかの瀬戸際の状態を意味します。皆さんもご存知の通り、ザイマ一族の復活で私たち人妖神社の本社は大炎上し、今も占領されたままです。もしかしたら人類は滅亡の危機に陥る可能性もあります。せっかく人間と妖怪が共存し合う世界が成り立ったというのに、おそらくは人間と妖怪がもう一度争うのか、ザイマ一族が人間を滅ぼそうと宣戦布告するか、または世界規模で戦争が起こるか…今のところは預言者ではないのでわかりませんが、皆さんの努力と普段の行い次第では不幸や災いも回避でき、また平和な1年を過ごせる可能性もあります。突然現れた皆さんを救う謎の妖魔使いを名乗る女の子たちも同じ人間です。彼女たちを応援し、決して罪を犯さずに清き心を持って人間らしくこの1年を乗り越えましょう。」
「おお…ネガティブな結果にも関わらずポジティブな励ましと忠告…さすが月光花のセンターでプロアイドルになられた人妖神社の巫女さんです!皆さんも春日はなさんの言いつけを守るようにしましょう!」
こうして結果は残念だったけれど人妖神社の神事は全て終了し、私は一息つくために控え室で休む。
先輩方は私の事を一切責めず、むしろ自分たちがやっていたら大きく外れて最悪な運勢だったと励ましてくれた。
それでもやっぱり責任は重く圧し掛かり、私たちでザイマ一族との決着をつけなければと決心した。
謎の妖魔使いと存在と正体を隠したけれど、いつか限界が訪れて私たちだとバレて、批判されるか応援されるかの瀬戸際にもなる。
翌日、その事が日本中のニュースになり、世界は何が起こるのかを議論し始めていた。
つづく!




