第46話 紅白いざ参る
紅白本番を迎えた私たちは、いつも通り楽屋で待機し、共演者のみんなに挨拶をした。
年末を締めくくる大一番のこの番組は一時期は視聴率が落ちて開催が危ぶまれたけれど、数々のアーティストがこのままではダメだと奮起し、老若男女問わず幅広いジャンルの歌手を出そうと提案し、新暦を迎えて以降は人気番組になった。
NHTホールでは開演を待つ観客が大勢いて、私たちもこのステージで歌うんだという自覚を持てるようになった。
そしてついに…開演時間となった。
「さぁお待たせしました!第100回紅白歌合戦、今開演です!司会は私、白組の島田慎二と…」
「紅組の本田綾香でお送りいたします!今年もまたいろんな事がありましたね!」
「ええ、今年は何と言ってもたくさんの芸能人が一気にデビューした年でしたね。そんな中でフレッシュな初出場もいますので乞うご期待ですね。」
「私的にはアルコバレーノに期待しています!」
「なるほどー、では参りましょう。白組のトップバッター、Phantomです!」
「よっしゃー!ロックにいくぜー!」
ロックバンドのPhantomさんは前まではエガオプロダクション所属だったのに、高飛車財閥の買収以降は虹ヶ丘エンターテイメントに移籍した一人で、天才アイドルの茶山くるみさんや漫才コンビの通天閣さんなど今でも大人気の芸能人が一斉に移籍したところ、虹ヶ丘エンターテイメントの社長さんはとても人望のある人なんだろうな。
彼らのロックなパフォーマンスに会場が盛り上がり、大勢の女性の歓声と共に会場のムードに火をつけた。
司会の本田綾香さんが期待しているアーティストにアルコバレーノの名前が挙がり、私たちはまだまだなんだと痛感した。
次々とアーティストの先輩方が歌い終え、ようやくライバルのアルコバレーノの出番になった。
「さぁお待たせしました!続いては視聴者が最も期待しているという新生アイドルユニットの出番です!」
「本田さんテンション高いねー。応援サポーターに茶山さんがいますが中継呼んでみましょう。」
「はい…。彼女たちは一人一人は小さいかもしれませんが…心を一つにすれば…私よりきらめいている…。アメリカのニューヨークで応援している…頑張って…。」
「茶山さんは現在アメリカでお仕事なんですよね。天才はスケールが違いますね。」
「彼女は確かニューヨークで自分の衣装ブランドを立ち上げていてそこの宣伝のために渡米しているそうですよ。では紅組参りましょう!希望を導く七つの光!今こそ輝いてください!アルコバレーノです!」
「すごい…これが最近話題になっている彼女たちの歌…!」
「何故でしょう…。心が洗われる気分でございます…。」
「悔しいですが…彼女たちは一流のアイドルになりましたね…。」
「大丈夫!私たちだってアルコバレーノやSBY48、UMD48には劣るかもしれないけど、京都だけでなく海外にも背中を押されたじゃない!実感わかないかもしれないけど…精一杯楽しもうよ!」
「ひまわりちゃん…。」
「そうね…ひまわりの言う通りね!ここで怯んでいたら応援してくれるみんなに失礼だもの!今回は仲間同士だけど、ここまで来たらやるしかないわ!」
「そうだね。せっかく京都から駆けつけてくれたファンもいるし、私たちのやり方で紅組に勝利をもたらそう。」
「それじゃあ掛け声…やろっか…!」
「はな先輩…はい!」
「日ノ本に咲く黒き花!」
「「夜空を灯す淡い月!」」
「月光花!」
「「いざ参る!」」
アルコバレーノの出番を終え、次の白組のエルザイルさんの甘い歌声とキレのあるダンスパフォーマンスに若い女性は心を打たれ、健康的な小麦色の肌に筋肉質なビジュアル、ワイルドに生やしたヒゲやホストのような髪形など少し悪めの雰囲気から出る甘くて恋に落ちそうな声のギャップで会場を魅了した。
アルコバレーノのみんなは楽屋に戻らず、エルザイルさんのパフォーマンスをずっと見つめて感心していた。
エルザイルさんの番が終わるとアルコバレーノも戻る準備をし、すれ違いながら私たちに挨拶をする。
するともみじちゃんは挨拶代わりに彼女たちに声をかけた。
「さすがしのぶのライバルですね。私も圧倒されました。」
「それほどでもない。私たちはまだまだ成長するのだからな。」
「アルコバレーノは本当に興味深いな。だが私たちも負けない。」
「うん…私たちは日本の伝統文化を受け継いだ京都のアイドルだから。その…月光花はアルコバレーノのライバルとして…見てほしいな。」
「うん、私たちも負けないよ。はなちゃんたちみたいなライバルに会えてよかった。これからもよろしくね。」
「………。」
私だけでなくみんなもアルコバレーノの魔力を感じたのか、パフォーマンスの時とはまた違った別の力を感じた。
妖魔の力とは違う別の異世界の魔力を強く感じ、私たちはその力でファンを魅了したのかもと確信した。
そして私たちの番になり、エルザイルさんとハイタッチしてバトンを受け継ぐ。
「さぁ続いては今年の下半期に京都からローカルアイドルがこのプロの世界に入り、11月の平安館大学の文化祭以降、日本だけでなく海外からの大きな支持を受けてきた謎の和装アイドル!月の光浴び、夜空の中で、影となりて花が咲く!月光花の皆さんです!」
「おお…!」
「和の雰囲気!」
「カッコいい!」
「これが月光花…!」
「京都には大和撫子がまだいたんだ!(スペイン)」
「彼女たちはクールで美しい!(イギリス)」
「隣の国では侍も忍者もいないとは聞いたけど、大和撫子はやっぱりいたんだよ!信じてよかった…!(韓国)」
リアルタイムSNSでは日本だけでなく海外からも絶賛の嵐で、たくさんの外国語で高評価のつぶやきが多く寄せられた。
妖怪たちもNHTホールに駆け付けてくれて、ヒメギクちゃんを筆頭に応援メッセージを書き寄せてくれた。
私たちの番が終わると、最も人気のあるアイドルグループのSBY48さんがメドレーを歌いきり、同じ地区でローカルをしながら長くプロとして活動しているUMD48さんも名曲で歌い終えた。
でも不思議な事に…UMD48さんのメンバーからは妖魔の力どころか不思議な力を感じないのに、SBY48さんの7人の誰かに私たちやアルコバレーノとはまた違った強い不思議な力を感じた。
おそらく私たちとアルコバレーノ、SBY48の神7と呼ばれる子たちはそれぞれ別の異世界から特別な力があり、その見えない魔力でファンを魅了しているのかもしれない。
最後の紅組である和田みつ子さんの番を終え、結果は紅組の勝利になった。
その和田みつ子さんが主宰する紅組勝利祝賀会をこれからするとの事で、開催前に未成年なので保護者の花柳先生も同伴しますとあらかじめ説明して、お酒を飲まないようにする。
だけど…勝利祝賀会に高飛車きららさんの姿はなく、下民共と一緒に戯れる気がないと言い残してリムジンに乗って去って行った。
その時のきららさんの顔は…どこか寂し気で羨ましそうで、このままでいいのかなって思い悩んだ表情をしていた。
こうして新暦2018年を終え、新暦2019年を迎えた。
つづく!




