第43話 平安祭・後編
1日目の書道部の展覧会が終了し、次の2日目である月光花のライブに備えて準備をする。
場所は日本舞踊部や和太鼓部、琴曲部など演技や舞踊、音楽などの演目会が開かれる演舞場で行われる。
平安館大学の系列は日本の伝統文化や伝統武道、中には歴史ものや武術、外国人留学生向けのサークルもある。
ただし吹奏楽部や演劇部、男子校の平安館学院には野球部などという例外も一部ある。
その伝統感あふれる平安館大学の演舞場で月光花がライブをする。
「この演舞場でアイドルがライブをするのは月ノ姫以来らしいよ。」
「さすがアイドルに詳しいひまわりだな。私ももう少し学ばねばならないな。」
「UMD48さんのライブ…印象的だったなぁ。」
「私たちも負けないように精進でございます。」
「でも来てくれたファンのみんなを楽しませることも、私たち自身も楽しむ事も忘れないでね。それが私たちアイドルの仕事よ。プレッシャーもライブ中だけは忘れていきましょう。」
「確かにわかばの言う通りだね。いつまでも運動会での負けを引きずっては、ファンに申し訳がないからね。」
「それにライバルが多いほど私は燃えますよ。きっと花柳先生もそんなお方です。」
「よし!それじゃあ景気付けにはな!掛け声をやろう!」
「ええっ!?って…やっぱりやらないとライブっぽくないよね。それじゃあ…日ノ本に咲く黒き花!」
「「夜空を灯す淡い月!」」
「月光花!」
「「いざ参る!!」」
「そなたたち、まだライブまで時間があるのにもう掛け声とは気合い十分だな。」
「花柳先生!?」
「ご、ごきげんよう!」
「む?そういえば女学校の挨拶は本来ごきげんようであったな。女学校は本来は男性厳禁で、学院では女性厳禁であった。だが文化祭となると特別に許される。だから某もここに入れた。ライブまであと6時間もある。ゆっくり堪能するとよいぞ。」
「はい!」
「スケジュールは演舞場の最後の項目だ。大取りを務めるには最高のタイミングだ。月ノ姫以来の撫子アイドル再来ではなく、月の光浴び影に潜み咲き誇る花として新たな旋風を巻き起こすのだ。」
「はい!」
「それでは…各自自由行動だ。」
こうして私たちは1日目の店番から離れ、2日目はアイドルだけでなく自由行動になる。
ひまわりちゃんは囲碁部と将棋部で大学生を下し、もみじちゃんは剣道部の屋台である焼き芋、つばき先輩はなぎなた部の本物の薙刀の藁斬りを体験、すみれちゃんは時代劇研究部で資料を提出、わかば先輩は祖父の盆栽の作品の展覧会、そしてるり先輩は演舞場から離れずずっと鑑賞をしていた。
私はというと…
「稲田くん。」
「春日さん。アイドルのライブがあるのにわざわざ俺のとこに来たんだ。」
「ちょっと会いたくなっちゃって…。」
「奇遇だな。俺も春日さんに会いたかったんだよ。」
「えへへ…。お互いに婚約者として意識してないのに不思議だね…。」
「確かにそうだな。俺も高等部で野球部に入部し、甲子園を目指すって決めたから。春日さんはアイドルとして日本中に革命を起こす。お互いに遠くに行っちまうから、今のうちにってところだろうな。」
「かもしれないね。」
「そういえば春日さんに聞きたい事があるんだ。」
「ん?何かな?」
「最近現れたザイマ一族が召喚する獄魔と対抗している妖魔使いを自称している謎の和服の魔法少女って、誰の事かわかるかな?」
「えっと…」
両親同士が決めた婚約者の稲田大輝くん、男子校である平安館学院の同学年で、西洋の文化でも例外のひとつである野球部に所属している。
シンプルな黒と京紫がチームカラーで、京都でも甲子園常連校としての強豪でもある。
お互いに意識していないけれど、何故か会いたくなってきてお互いをもっと知ろうとしていた。
そんな時に絶対に教えられない質問が来て、私は彼を戦に巻き込みたくないと言葉を失った。
「ごめんね…誰の事なのかわからないんだ。でも私の実家の人妖神社を助けるために頑張っている人たちというのは知ってるよ。」
「そっか。きっと人妖神社に御利益があって救われた妖魔の力のある子たちなんだろうな。俺もさ、北大路地区でちょうどすし屋に行こうとした時に化け物が大勢現れて、あまりの恐怖に逃げ遅れてたんだ。だから木造の小屋に隠れて様子を伺ったら、春日さんにそっくりな女の子が篠笛を吹いて変身した。俺の命の恩人だから気になってたんだよね。」
「そっか…。あ、そろそろライブの時間だからまたね!ライブにも応援に来てね!」
「おう、もうそんな時間か!じゃあ撫子色のサイリウムを用意するよ!」
「ありがとう!」
稲田くんに変身を見られて正体がばれると少し焦ったけれど、ちょうどライブ前の集合時間になった私は秘密を知られずに済んだ。
彼は獄魔との遭遇で足がすくみ、逃げようにも逃げられずに小屋に隠れて様子を伺い、落ち着いたらすぐに逃げ出した。
あの時、私は間接的に稲田くんを助けたんだ…。
集合時間になり合流した私は、もうみんなが着替え終えているのを見て急いで着替えた。
「遅かったな。何かトラブルか?」
「えっと…その…」
「あっ、もしかして婚約者さんのところですか?」
「なるほど、それは遅れる可能性があるね。」
「はなも隅に置けないわねぇ。」
「ひゅーひゅー!」
「か、からかわないでよ!もう、もみじちゃん!余計なこと言わないでよぉ!」
「でもご両親が決めたことでございますから、そう照れる必要はございませんよ?」
「そういう事なら早く言えばよいだろう。」
「うう…。」
「全員揃ったな。これから月光花のライブを行う。春日さん、まさかご両親が決めた婚約者がいたとはな。」
「すみません…。」
「よい、神社の子は苦労するものよ。さぁもうすぐ三味線部の演目が終わる。掛け声はもう済ませたし、それぞれ待機場所で待機せよ。」
「はい!」
こうして私たちはそれぞれの待機場所で出番を待つ。
私とひまわりちゃんともみじちゃんはポップアップのため舞台下へ、るり先輩とわかば先輩は上手側へ、すみれちゃんとつばき先輩は下手側へと移動する。
そして…
「おおーーーーーーっ!」
最初の曲であるデビュー曲を歌い、2曲目につばき先輩がセンター曲の牛若丸と弁慶との戦いを和ミュージカル風にした曲を歌う。
MCを挟んで自己紹介し、3曲目のわかば先輩がセンターの若き侍と街娘の禁断の恋を歌った曲と、4曲目のひまわりちゃんがセンターになる夏の平安館学院野球部の応援歌を歌った。
「皆さん…これが最後の曲目になります。」
「ええーーーーーーーっ!」
「ですが絶対に盛り上がる事間違いないからみんなも完全燃焼しようね!」
「いえーーーーーい!」
「それでは最後の曲…いきます!」
最後は新曲のすみれちゃんがセンターになる和風ロックな曲で、乱れた戦国時代の中に一人の乙女が覚悟を決めて戦に臨む曲を歌った。
ライブは大成功し、平安館大学は月光花を平安館親善大使に任命し、実家の人妖神社だけでなく各寺院や神社、京都市役所、新天堂さんや京セガさん、宇治アニメイトさん、さらには妖魔界も後援会になり、京都中の期待を背負う事になった。
ヒメギクちゃんは妖魔界の様子を見に行ったり、神社のお手伝いとして巫女見習いをしたり、さらには月光花のファンクラブや講演会をまとめる役として貢献してくれている。
私たちはプロの世界で悔しい思いをした分、みんなに支えられて嬉しい思いをもっと多くしている。
みんなの期待に応え、トップアイドルになろう。
つづく!




