第41話 研修会
運動会で悔しい思いをした私たちは、足りない部分の克服と得意な部分の成長のために稽古に励んだ。
オフの日には花柳先生から追い込みすぎないようにとあらかじめ注意を受け、休むときは一緒にお茶したり楽しんだりした。
そんな時に花柳先生からある一方が届いた。
「よし、そなたたちにいい知らせがある。来週の日曜に開催されるUMD48の大阪ドームライブの招待状が届いた。お届け人はあの秋山拓也さんだ。」
「え…あのSBY48の名プロデューサーのですか!?」
「その通りだ。そんな彼とは親交が長くてな、プロデューサーとしては古なじみなのだ。そんな彼から招待状が届いたのだ。大阪ドームでライブをするほどのアイドルだ、粗相のないようにな。」
「はい!」
プロの洗礼を受けた私たちに、関西でいちばん有名なアイドル、UMD48さんのライブに招待される。
大阪の梅田を拠点にしている超大手ローカルアイドルグループで、SBY48の系列でもある。
そのプロデューサーの秋山拓也さんは当時地下アイドルだったSBY48を僅か1年でスマイリング娘。の一強時代を終わらせたという経歴のある凄腕プロデューサーだ。
そんな人と花柳先生は古なじみで、私たちのプロデューサーも凄いんだと改めて感じた。
日曜当日、大阪ドームでいつも通り着物の制服を着た私たちは、関係者席に手厚く招待される
「やっぱり大阪ドームは大きいなぁー。」
「ええ、とても大きいでございますね。」
「ここでライブするアイドルグループのライブに招待されたんだ。私たちも彼女たちから学ばねばならないな。」
「超大手ローカルアイドルグループ…。彼女たちと競うんだよね…。」
「はな、緊張しているのかい?」
「うん…ちょっと恐れ多いなって…。」
「確かに彼女たちはローカルアイドルだが、芸能事務所とも契約していて、既にメジャーデビューを果たしている。テレビの番組にもかなり出演していて、実力の違いを思い知らされるよ。だけど…私たちも同じ舞台にいて、そんな彼女たちといずれ争わないといけないからね。それが今だと思うと緊張するのも無理はないさ。」
「そうね。運動会でプロの洗礼を受けたもの。私たちなんかが争っていいものなのかも悩ましいわね。」
「ですが同じ関西地区である以上、越えなければならない壁です。私たちにだって…今までよりも成長しているのは確かです。」
「もみじちゃん…。」
「もみじは相変わらず負けず嫌いだね。でも…それは私たちだって同じ。囲碁や将棋だって実力が違うからって諦めたら、獲れるものも獲れないもん。」
「ひまわりちゃん…。」
「そなたたちは成長しているのは確かだ。だが彼女たちも同じくらい成長を続けている。慢心していてはまた同じ挫折を味わう事になる。だからこそこのライブを見てプロとは何かを学ぶのだ。」
「はい!」
花柳先生の言う通り、成長したからと調子に乗っていると、同じ痛い目に遭って挫折をしてしまう。
私たちの心の奥ではプロデビューできたことに安心してしまったのかもしれない。
そんな私たちに喝を入れるためにあえてプロのライブの招待に乗ったのかもしれない。
ライブ開演の時間になり、照明が暗くなってモニターからメンバーの紹介は映った。
登場シーンでは舞台袖から出てくる子、ポップアップで登場してくる子、中には客席からこっそりスタンバイしていて突然の早脱ぎで大道具に乗ってステージに向かう子もいた。
大人数の48人の選ばれたメンバーたちはそれぞれの個性を最大限に活かし、ファンのみんなをあっという間に巻き込んだ。
「みんなー!今日は来てくれてありがとー!」
「いえーーーーーい!」
「UMD48のセンターをしています!白石美穂でーす!今日はよろしくねー!」
「白石美穂…あの子がセンターなんだ…。」
「あれだけの大人数で一人だけきらめきがケタ違いだね。」
「そんなアイドルとこれから競い合うんだ…。」
「ほう…。」
「今日はね、みんなに伝えたい事があります!それは…今日がメンバーの指原文乃ちゃんの誕生日です!おめでとうー!」
「ふみのーん!」
「おめでとうー!」
「メンバーへのリスペクトが素晴らしいな。」
「すごい…これがプロなんですね…。」
みんなはプロの洗礼を受けただけでなく、プロとは何なのかを教えられ、ただ感心するだけだった。
私も彼女たちのきらめきに魅了され、何を学んだのかわからなくなってきた。
きっとアルコバレーノの子たちもこうやってきたのかな。
ライブ終了後にはアンコールが鳴り響き、ひまわりちゃんはいつもならアイドルのアンコールをするけど、今回ばかりはアイドルの自覚があるのかジッとステージから目を離さなかった。
よっぽどきららさんの言われたことが悔しかったのかもしれない。
そして…アンコールを終えて、最後の万歳三唱してライブを終えた。
「これがプロのスターアイドル…!」
「よく見たか。これがそなたたちが今後競い合う強豪アイドルグループだ。某もかつては同じ舞台でアイドル時代を牽引した。ところがメンバーの一人がライブ終了後に病気で亡くなり、皆それが原因で引きずってしまい、イップスになってライブが出来なくなってしまった。某はそんな皆に何も出来ず、ただライブの成功ばかりに目が行ったことを後悔した。それ以来、あの時のメンバーとは連絡もしていない。だが…メンバーの一人が東の名門校でスクールアイドルをやっていると聞く。」
「東の名門…東光学園ですか?」
「それってまさか…!」
「そうだ、その子の名は…美月輝夜。当時は中学1年と最年少ながらきらめきが素晴らしかったのだ。某がプロデュースして以来の逸材であった。そなたたちにもその素質がある。今まで辞めていった過去の子たちもだ。それ故にもう一度世界に愛される和のアイドルグループをと焦っていたのだろうか、厳しすぎる稽古で皆辞めていった。そなたたちはそれに耐えられるどころか、過去を超えるハードな稽古でも耐え抜いた。美月さんがいたプロデュースしたグループ、月ノ姫よりも実力は上だと確信している。本当に感謝する、礼を言おう。」
「初代の先生のグループを越えたなんて…。」
「私たちはまだまだです。アルコバレーノさんや他のみんなと比べるとちっぽけですが…花柳先生だけでなく、京都のみんなにも認められました。今度は…京都からやってきたローカルアイドルってだけでなく、世界中に愛される日ノ本の月光を浴びる影の花としてアピールしていきます。」
「春日さん…。」
「はな…前まで緊張して弱気だったけど、急にたくましくなったね…。」
「それに…ここまで一緒についてきたみんなと一緒なら、一人で出来ない事が出来る気がするんです。このみんなとなら…トップだって夢じゃないと信じます。」
「そうか…。某も負けていられんな…。承知した、このライブを期にそなたたちをもっと見守り、そして導いていく。どんな厳しい試練を我々で乗り越えていこうではないか。」
「はい!」
ライブ終了後にあんなに自信がなかった私が、このみんなと一緒なら不思議と勇気が湧いてくる。
花柳先生も過去に挫折をしていて、その栄光の焦りで何人もついていけずに辞めていった。
私たちはその延長線かもしれないけど、その月ノ姫の先輩方を越えたと聞き、少しは自身も誇りも持てたかな。
来月には平安館大学の文化祭があり、平安館撫子コンテストも控えている。
私たち月光花はプロアイドルだから出場は出来ないけれど、日本の伝統文化を宣伝する平安館大学日本文化宣伝大使に選ばれた。
日本人を代表するこの立場にかえて、日本中や海外の国中、そして妖魔界にも宣伝しよう。
つづく!




