第40話 運動会の結果
運動会も後半戦になり、残るは大縄跳び、騎馬戦、1500m持久走、そして大取りである100×4リレーになる。
さっきの玉入れでのトラブルで白組の様子が心配になった。
それでも大縄跳びが始まり、るり先輩が回す側として出場する。
「それでは…行って参ります。」
「るりー!華やかに舞っちゃって!」
「それは出来ません。私は回す側でございます。」
「えー…!」
「ひまわり…あなたオーダーをちゃんと聞いてなかったでしょ?」
「あはは…わかばには敵わないな。」
「もう…ひまわりちゃん…。戦局ではあんなに凄い集中力と判断力なのに、どうして普段では発揮されないのかな…。」
「幼なじみでもわからないのですね…。」
「ごめんなさい…。」
「ひまわりにだって考え事くらいあるさ。今後はよく聞いておくようにな。」
「はい…。」
「それよりもるりが大縄を持ったよ。さぁ、応援しよう。」
「うん!頑張れー!」
るり先輩は普段から日舞で肩の動きも意識しているので、安定した縄回しでいいリズムを取ってくれてみんなが跳びやすくなっていた。
一方の白組は我こそはと張り切りすぎて空回りし、回す人と跳ぶ人のリズムと息が合わなかった。
次第に誰のせいだと責め合ってしまい、回す人だった葉山みどりさんがみんなを集めて何かを言っていた。
「おや?白組は作戦会議でしょうか?何やらまた揉めていますね。」
「このままなら紅組の勝利だ!いけー!」
「ん…?葉山みどりさんが急に跳ぶ人の先頭に立ったね…。」
「あ…もしかしたらマズいかもしれないわ…!」
「え…?」
「葉山みどり、私でさえ学力で勝てなかった程の勉学家で多摩女子大学付属のエリートよ。父は国会議員で母は葉山グループの会長なの。しかも彼女は他人に勉強を教えるのも上手くて、落ちこぼれの士気も高めたと聞いたわ。」
「それって…!」
「あーっと!白組が一気に追い上げてきた!連続記録を上書きしようとしている!」
「このままでは皆さんが…!あっ!」
「あっ…すみません…!」
「焦らないで!まだチャンスはある!」
「その通りでございます!私たちもこれからノーミスで参りましょう!」
るり先輩が士気を高めるも反撃はここまでで、結果は白組の逆転勝利になった。
安定していた37回連続跳びも47回連続跳びに抜かれ、紅組は接戦に追い込まれた。
次の1500m持久走でもみじちゃんが出場するんだけど、もみじちゃんの様子が少しおかしかった。
まるで絶対に負けられないと意気込んでいる雰囲気で、念入りに準備体操をしていた。
そして紫色の髪の色をした紫吹ゆかりさんを対抗心むき出しで睨み、スタート地点に入った。
「On your mark…」
「さぁスタートしました!最初のトップは紅組の日野鈴香ちゃんだ!紫吹ゆかりちゃんはまさかの後方です!調子が悪いのでしょうか?紅葉もみじちゃんも後方から様子を伺っています!忍者の二人は意外と持久力がないのでしょうか!?」
(紫吹ゆかり…春には従姉妹のしのぶがお世話になりましたね。ですが…今日は従姉妹の代わりに私が勝たせていただきます。)
(この子は一体…?私はこの子に恨まれるような事をしたのであろうか…?とにかく残り600mだ、ここで一気にペースを上げるぞ。)
(そうですか…ここでペースを上げるのですね。少し挨拶をしていきましょう。)
「はじめまして、紫吹ゆかりさん。従姉妹がお世話になりました。」
「そなたは一体…?」
「申し遅れました、私は紅葉しのぶの従姉妹で、京都でローカルアイドルをしています、月光花の紅葉もみじと申します。」
「しのぶの従姉妹か…アイドルをやってるという噂は本当であったか。」
「この種目であなたに挑戦します。真の忍びを賭けて。」
「いいだろう、私はもう誰にも負けぬ。」
「ゆかりちゃんともみじちゃんのラストスパートはもう誰にも追いつけない!もはや一騎打ちだ!東の紫吹か!?西の紅葉か!?ゴールは一体どちらの手の中なのか!?」
「すまないが…そなたは鍛練が足りない様だな…。」
「くっ…!」
「ゆかりちゃんがまたペースアップだ!残り10mで僅かに差が開いた!ゆかりちゃんが0,1秒の差で1位でゴール!」
「はぁ…はぁ…さすが紫吹流です…。しのぶがライバル意識持つのもわかりますね…。次は負けません…。」
「そなたも見事であった…。またやり合おう…。」
もみじちゃんは惜しくも2位で、1位はアルコバレーノの紫吹ゆかりさんだった。
後でもみじちゃんに聞いてみると、ゆかりさんは忍術での歴史あるライバル関係で、春には従姉妹のしのぶちゃんが決闘を申し込んでいた。
その縁もあってもみじちゃんは直接張り合えるのを楽しみにしていて、今日その時が来て満足そうに戻っていった。
次は騎馬戦で、流鏑馬の経験のある私が将として馬に乗る。
私は副将になったけれど…白組の先鋒の田中さとりさんが占いの効果で4連勝し、馬に慣れている私でさえ歯が立たなかった。
最後の望みは藤沢拓海さんに託されたけれど…警察の子で笑顔が可愛い黄瀬千秋さんにカウンターでついに負けてしまった。
最後のリレーはひまわりちゃんが1走者目、つまり先頭を任される。
「はなの分まで頑張るね!」
「このままだと紅組は負けてしまうが、勝敗よりも悔いを残さないようにしよう。」
「すみれちゃんの言う通りだよ。ひまわりちゃん頑張って。」
「うわっ…。相手は高飛車きららちゃんかぁ…。」
「そこのあなた、どいてくださる?それとも邪魔しに来ましたのでして?」
「そんな事しなくても勝つもん!あなたには絶対に負けないし!」
「あら、口だけの弱い犬ほどよく吠えるものですわね。精々わたくしの後ろで追いかけっこしてくださいまし。」
(なんか感じ悪いなぁ…。噂通りの子なんだな…。)
「On your mark…set…」
ピストルの音が鳴り、きららさんとひまわりちゃんは一斉にスタートを切った。
ひまわりちゃんは平安館の中でも運動神経はいい方だけど、きららさんは常にトップを自称するだけあって足も速かった。
ひまわりちゃんでさえ追いつくことが出来ず、実力の差を見せつけられてしまった。
「はぁ…はぁ…!これが…プロのアイドル…!」
「残念でしたわね…。あなた方は京都という田舎に帰ってご隠居なさったら…?」
「くっ…!」
ひまわりちゃんはきららさんに何か言われたのか、目には涙が浮かんでいた。
それも励まされたわけではなく、嫌味を言われて傷つき、そして悔しい思いをしていた。
私もみんなもそんなひまわりちゃんを見て悔し涙が溢れ、プロはこんなにも厳しいんだと洗礼を浴びた。
運動会の結果は柿沢橙子さんの圧倒的足の速さで大差をつけられ、総合優勝も白組になり、私たちは負けてしまった。
収録を終えた私たちは、花柳先生の元に集まり、ミーティングをする。
「皆の衆、よくプロの舞台で頑張ったな。さぞかし緊張もしただろう。某は皆の成長をこの目で実感できた。本当によく頑張った。」
「でも…私たちはプロの洗礼を浴びて…京都に帰って隠居でもしなさいって…」
「それに…私たちの実力では…皆さんのスター性に敵わなかったでございます…。」
「すごく悔しかったです…。これがプロの世界だって思うと…悔しいです…。」
「うう…ぐすっ…。」
「そうか…。悔しい思いをしたのだな…。皆の話を聞いて本音を知ることが出来た。だが悔しいだけなら誰でも感じる。これからどうするのだ?」
「もっと上に行きたいです!もう二度とこんな悔しい思いはしたくないです!」
「私も…ライバルにようやく会えて…実力の差を知りました!だからこそ…今度は追いつき、追い越したいです!」
「私もまだ未熟者だと痛感しました…。もっと稽古に励み、プロにも負けないアイドルになります!」
「承知した…。なら今後の稽古はもっと厳しいものになるぞ。覚悟はよいか?」
「はい!」
「もう誰も助けてくれないかもしれぬ、苦しくて泣きそうになる事もある。そうやって他の皆は…アイドルをやめていったのだ。某も悔しい思いを何度もした。だがそなたたちの目は本物だ。某の無念を晴らすようなアイドルになろうではないか!」
「はい!」
(高飛車きらら…某の子たちを泣かせた罪は重いぞ…。いずれ貴様の罪を裁く時が来るだろう…。)
運動会の敗退をきっかけに、花柳先生のプロデューサーとしての無念と、私たちの悔しい気持ちが重なり、月光花はまた成長を誓い合った。
私たちだけでなく、花柳先生も過去に悔しい思いをしてきたと思うと親近感が湧いてきた。
最後に京都へのお土産をみんなで買い、東京を後にした。
つづく!




