第3話 妖魔界の異変
妖魔界、それは妖怪たちが平和に過ごし、人間たちの信仰で成り立っている異世界。
私はその妖魔界と人間界を繋ぐ巫女としてあらゆる宗教との協力の元で神事をしてきた。
ところがさっきのザイマ一族という西暦時代に京都を災いに陥れた一族が復活し、人妖神社に奇襲をかけてきた。
ということは…その妖魔界に何か異変が…?
私は家族の無事を確認し、妖魔大王の一人娘と名乗るヒメギクちゃんと、一緒に変身して戦った幼なじみのひまわりちゃんと一緒に人妖神社の支社へ避難する。
「ヒメギクさん、ここがうちの人妖神社の支社よ。本社より少し小さいけれど、本社に何かあった時にのみ使用される一般人立ち入り禁止の場所なの。」
「はい、ここでも妖魔を感じます。」
「ヒメギクさん、とりあえず中に入って。妖魔界に何が起こったのか、娘のはなとその友達のひまわりちゃんに話してくれるかい?」
「はい。」
「それじゃあワシらは神社の準備をするからの。年頃の女の子同士で仲良くするんじゃぞ。」
「うん。」
「それで?さっきのザイマ一族って何?」
「ザイマ一族は…妖魔界には立ち入ることが出来ない禁断の領域で、前世で悪い行いをしすぎた人間が落ちる地獄界というのがあって、その罪人の中でも最も重く、それでも反省せずに悪魔化したアクドー率いる地獄の一族。私の目の前で父である妖魔大王を暗殺し…妖魔界を混乱に導き、人間界を侵略して…せっかく長年築き上げた人間と妖怪の仲を引き裂こうとする奴ら…。」
「それで…あの5人は誰かな…?私の知ってる神話ではさっきの5人はいなかったから。」
「あいつらはアクドーが新しく生み出した子どもたち…。残虐な手を使う卑怯者の知将アマノジャーク。心を読み取って精神を支配する魔性の女サトリーヌ。力任せな戦術で恐怖を植え付ける豪傑オニゴロー。欲望に忠実なお調子者のドクロスケ。そして人間の悪いところを上手く利用する冷血のオロチマル。というアクドーの子たち。人間と妖怪の仲を引き裂くことで、人間界を破壊と混乱に陥れて妖怪たちを率いて人間を滅ぼし、この世界を奴らにとっての極楽浄土にすることが目的なの。それに対抗するには妖怪の力が人間に受け継がれた力…妖魔の力が必要なの。」
「えっと…その妖魔の力って何なの?はなは少しだけ知ってるみたいだけど。」
「妖魔の力は元々は人間には潜んでいない魔力で、ザイマ一族が地上で暴れ回った時、元々人間だった妖魔大王である父が禁術を使ってアクドーを地獄に神社として封印した。そして人間でなくなった父はそのまま妖怪になり、人間たちは恐れるようになった。それを憂いた先代妖魔大王は父を妖魔大王に任命し、人間たちに妖魔の力という魔力を与え、妖怪たちと合流できるようになった。その中でも妖魔の力を多く与えられたのが…」
「春日家の私たちだ…!」
「うん。元々妖怪を祀っていた小さな神社の神主だった春日さんは父の付き人で、人間のまま父により強い妖魔の力を与え、人間と妖怪を繋ぐ神社として生まれ変わり、交流と繁栄を与えた。」
「うーん…難しい事はわからないけど、要するにあなたのお父さんはザイマ一族に殺され、はなはその妖魔大王の付き人の子孫だから神社を任されたって事かな?」
「そうなるね。でも私ならともかく、ひまわりちゃんにもどうして妖魔の力が?」
「日本人は特別に妖魔の力が強い傾向がある。でも自己中心的だったり、残酷だったり、自分のためだけに他人を陥れるような人間は宿らず、罪魔の力が覚醒してさっきの様な獄魔となって魂が穢され、魔物に生まれ変わるの。獄魔が長い間居続けたら…その人間の魂は燃え尽き、二度と転生出来ずそのまま消滅してしまうの。」
「じゃああの時…はなと協力して助けて正解だったんだ!」
「うん。そこであなたたちにお願いがあるの。ザイマ一族からこの地上を守り、私たち妖魔界を解放してほしい。父は人間と妖怪の関係をずっと重視して、春日家にその御守りを託し、今ようやく人間と妖怪は共存し始めている。その関係を壊したくない…地上まで破壊と混乱の世界なんかにしたくない…あんなの極楽浄土とは認めたくない…!お願い…父と妖怪たちを…助けてあげて…!」
ヒメギクちゃんは悔しそうに私たちに頭を下げ、目には大粒の涙がこぼれていた。
大好きなお父さんが目の前で暗殺され、平和だった妖魔界をクーデターで侵略され、ついに人間界にまで手を伸ばした。
私もザイマ一族が掲げる極楽浄土というのには反対だけど、戦う事が怖く、逃げる事を考えていた。
同時にご先祖様が果たした成果を無駄にしたくないという責任感も圧し掛かった。
それでも彼女の無念と悲しみを聞いて、私は勇気を出して戦う決心をした。
「私は…前に出るのも怖いし、戦って死ぬのも怖い…。でも…せっかく築き上げた人間と妖怪の関係性が壊れるのはもっと怖い…!ザイマ一族が掲げる極楽浄土にさせたら…みんなが悲しんじゃうから、私はヒメギクちゃんと協力するよ!」
「はな…うん!私も協力するよ!あの引っ込み思案なはなが戦うって決めたんだ!私だってこの平和な京都を守りたい!でも…」
「でも…?」
「私たちって、オーディションの途中じゃなかったっけ?」
「あ…!」
「オーディション?」
「その必要はないぞ。」
「あっ!花柳さん!」
「どうしてここに!?」
「あの方角からして春日家のご実家だと思ってね。いざ様子を見てみたら、そなたたちがあの化け物と戦い、見事に勝利した。そしてそこの女の子の話を聞いてしまったのだ。ザイマ一族が京都を襲っているのであろう?なら某も協力しよう。それに…春日はな、そして日向ひまわり…そなたたちを、なでしこアイドルに任命する。おめでとう。」
「じゃあ私…アイドルになるんだ…!」
「やったー!私の夢が叶ったんだ!これで二人のおじいちゃんをいっぱい応援できる!」
「でも私には…巫女としての責任が…!」
コンコン
「失礼するよ。」
「お父さん?」
「話はさっき花柳さんから聞いたよ。はな、アイドルをやるんだって?」
「お父さん…私はまだアイドルをやるって…」
「妖魔後kらを効率よく集めるには、人のため世のために働き、自己犠牲にならぬようによりよい世の中にする魔力でもある。それにはながアイドルになれば妖怪たちも応援するし、人妖神社にも御利益がまた新たに出るはずだ。神社の金儲けのためではない。お前がステージに立つことで、また心がひとつになれるはずだ。大和撫子アイドルとして、日本文化を広め、彼らの友情をまた深めてほしい。花柳さん、印税などは我が神社に寄付しなくて結構です。どうか娘をよろしくお願いします。」
「よいのですか?そなたの娘さんを某に預けても。」
「あなたのような人間なら信用できます。あなたにもいい妖魔の力を感じますし。ザイマ一族との戦いもありますが、よろしくお願いします。」
「では春日はな、日向ひまわり。そして他にも紅葉もみじ、藤野すみれ、紺野るり、常盤わかば、そして冬野つばきをメンバーに、新プロジェクトの花をモチーフにした大和撫子アイドルグループを結成する。」
花柳さんは満足そうに笑い、手に持っていた扇子を開いて仰ぎ始めた。
彼は私たちの事が心配で駆けつけ、同時に今までの戦いを見て合格を決めていた。
こうしてヒメギクちゃんと出会い、花柳さんの下でアイドルになり、新しい人生を歩むのでした。
つづく!




