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第38話 プロデビュー

~春日はなside~


「よし、全員集まったな。(それがし)がプロデュースしてから半年が経った。そしてそなたたちはアイドルとして成長し、春日殿の流鏑馬以降は月光花の知名度も上がった。さらに日向さんや冬野さん、常盤さん、藤野さん、紺野さんの家系の人脈、そして紅葉さんのNHT出演での実績が認められ、ファーストアルバムがレコード化され、メジャーデビューが決まった。」


「本当ですか!?」


「誠だ。現に大手レコード会社のエイマックス殿から契約書が届いたのだ。そなたたちの実績と努力、そして不思議な妖魔によって人間だけでなく、妖怪たちからも応援されているのだ。」


「アイドルになる夢が…叶ったんだ…!」


「ひまわりちゃん…私…緊張してきた…!」


「大丈夫でございます。私たちは全員でここまで乗り越えてきたではございませんか。」


「でもここからがスタート地点よ。感動するのはまだ早いわ。…と言いたいけれど、今はデビューを喜ばないとね!」


「わかばの言う通りだ。ここで気を抜いたり、目標が叶ったと無気力になっては彼らの期待を裏切る事になる。が…私も今回ばかりは胸が高鳴るぞ。」


「これで知名度がさらに上がれば、私たち月光花はもっと高みへ昇れるね。」


「やっと彼女と同じ舞台で戦えますね…。」


「ん…?」


「そして朗報がまだある。そなたたちがプロとして認められた事により、来週に東京の競技場でアイドルの運動会に出演する事になった。デビュー5年以内で話題に上がっているアイドルのみが出演できる新人アイドルの登竜門だ。そなたたちの組は紅組だ。紅葉さん…そなたのライバルである紫吹ゆかりもそこに出る。」


「!?……気付いていたのですね。私が彼女に対抗心を抱いていたことが。」


「え?そうなの?」


「気が付かなかったな…。」


「だからあの時、電話に出た後に険しい顔をしていたのね…。」


「忍術では西の紅葉流、東の紫吹流と有名で、第二次戦国時代から代々続く忍びの家系なんです。あの時は敵対組織でしたが、平和になってからは忍術で切磋琢磨して伝統を築き上げてきました。まさかアイドルとしても争うとは思いませんでしたが、ゆかりさんがアイドルになったと聞き、私も負けていられないとオーディションに参加したんです。」


「なるほどね…。」


もみじちゃんの家系によるライバル心がもみじちゃんの心に火をつけ、紫吹ゆかりさんがプロデビューしたことをずっと気にしていて、自分も負けていられないとずっと自己稽古に励んでいた。


どうしてそんなに頑張るのかなって思っていたけれど、ライバルに負けたくない一心で頑張っていたと思うと、私たちももみじちゃんに負けていられないなと思った。


東京へ移動する日になり、私たちは月光花としての制服で移動し、新幹線に乗っているお客さんたちからは珍しい目で見られ、外国人観光客からは写真をねだられた。


着物姿が制服というのは平安館女学校の制服が袴衣装と浴衣衣装なので慣れているけれど、改めて注目を浴びると少し恥ずかしかった。


わかばさんは耳が聞こえない人に手話で会話し、つばきさんも流暢な英会話で外国人をエスコート、そしてるりさんは騒いでいた子どもたちをなだめ、先輩としての余裕を見て憧れた。


東京に着くと、前みたいに高層ビルが建てられ、周りを見ると人々が大勢で移動していた。


「やっぱり大きいなぁ~東京は。」


「前に行ったときはライブの時で、プライベートでは花柳先生の意外な趣味を発見できたよね。」


「ええ、まさか好角家で相撲観戦が趣味だなんて思わなかったわ。」


「新たな発見でございましたね。」


「そなたたち、あまりよそ見しているとはぐれてしまうぞ。競技場の下見に行くのであろう?」


「はい!」


競技場の下見を終えた私たちは宿泊施設で泊まり、夕食でちゃんこ鍋を食べ、もう一度枕投げで寝る前のコミュニケーションを取った。


翌日になるともみじちゃんの姿がなく、私は焦ってみんなを起こしてしまった。


あちこちを探していると、もみじちゃんの寝間着が綺麗にたたまれていて、脱いだばかりなのか温かかった。


玄関を見ると草履はあるものの朝食を食べた後があり、花柳先生に相談をした。


「花柳先生!あの…もみじちゃんが…」


「うむ、紅葉さんのことか。それなら心配ない、彼女なら今頃ランニングで汗を流している。何せ毎日行っているルーティーンで、基礎体力をつけて忍術の鍛練を怠らないようにしているそうだ。」


「なるほど…彼女が私たちの誰よりも早くテレビに出演した理由はそのストイックさが認められたって事だね。」


「彼女は紅葉流というブランドに驕らず、ずっと自己鍛錬に臨んでいたのでございますね。」


「それじゃあ…私たちも一走り行こうか。」


「ええ…苦手だけど頑張るわ…。」


「ふぅ…ただ今戻りました。」


「うわあっ!」


「え…皆さん…?」


「いきなり帰ってくるなんてビックリだよ!」


「ひまわりちゃんの悲鳴の方がビックリしたよ…。」


「おかえりもみじ。いい汗流したのか?」


「はい、つばき先輩。おかげで心のモヤモヤがスッキリしました。」


「今日は運動会本番だからな。気合いが入るのも当然か。」


「そうなると私たちの気合いはまだまだでございますね。」


「よーし、それじゃあ朝食を食べて私たちもウォーミングアップだ!」


「おー!」


「ふっふっふ…某はこんな教え子を持って幸せ者だな。さてと…そろそろ某も本気でプロデュースしていくとしよう…。」


もみじちゃんのやる気に感化された私たちは栄養バランスを考えた朝食でエネルギーを蓄え、それぞれのペースで食べ終えてからジョギングなどで身体を温める。


運動着衣装は番組の方で用意されるので、運動着は持っていく必要はないけれど自主練用として持っていたのですぐに着替え、発声練習として掛け声と一緒に競技場の外を走る。


しばらくするとカラフルな髪の色をした女の子7人と、車いすの美人な女性と可愛らしい三つ編みのメガネっ子の女性とすれ違い、私たちは何か別の強い魔力を感じ、その女の子たちと目が合って立ち止まった。


「あ…こんにちは。」


「こんにちは…。」


「今日はよろしくお願いします。」


「こちらこそよろしくお願いします。」


「むっ…?そなたはどこかで会った事があるか…?」


「いいえ、初対面ですよ、紫吹ゆかりさん。」


「むっ…?何故私の名を知っているのだ?」


「いずれ私の正体がわかると思います。その時までお楽しみください。」


「どうしよう…あの子たちから何か魔力を感じるよ…!」


「千秋も感じたか…?アタシもなんだ。」


「ひまわりちゃん…妖魔の力とは違う何かを感じる…!」


「はなも思ったんだ…。」


(あの子たち…何か強い魔力を持っている…!?)


「あ、そろそろ受付に行かないと。本番はよろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。」


こうしてカラフルな女の子たちとすれ違い、そして出会い、お互いに何か不思議な縁を感じながら別れ、運動会に備える。


受付を済ませた私たちは控室で衣装に着替え、紅組の集合場所へ向かう。


そこには今話題の可愛いフレッシュなアイドルたちが揃っていて、私たちもその話題のアイドルになったんだと実感する。


地方ローカルアイドルの誇りを持って、月光花、いざ参る。


つづく!


~おまけ~


「黒田純子さんに水野澄香さん、お久しぶりです。」


「これは花柳さん、父がお世話になりました。」


「この方が花柳小次郎さんですね。」


「水野さんのご引退には少々驚きましたが、黒田さんが彼女を引っ張り、事務所を立ち上げたと聞きました。まさか黒田先生の娘さんがここまでカリスマ性があろうとは。」


「花柳さんも数々の和アイドルをプロデュースし、海外ツアーまで成し遂げた実績がある事を知っています。今回もローカルアイドルからメジャーデビューを果たし、また花柳流プロデュースが見られるのですね。」


「黒田さん一人の力だけでなく、そなたの先輩が貢献したと聞く。黒田マジックはやはり先生同様健在なのですな。だが…月光花は最高のアイドルだ。そう簡単には負けぬ。」


「ええ、私たちのアルコバレーノも負けません。水野さん、そろそろあの子たちの元に行きましょう。」


「はい。では花柳さん、またお会いしましょう。」


「うむ。そなたたちのご武運を祈っています。ふっふっふ…新たなライバルは手強そうだ。某も負けていられんな…。」


おまけおわり!

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