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第35話 絶望を超える

京都駅に現れた大勢の獄魔はたくさんの人々や妖怪に危害を加え、街を好き放題に破壊しようとしていた。


ある獄魔は人からお金を奪おうとしたり、またある獄魔はコンビニを強盗したりと人間の悪い心を具現化した様だった。


私はみんなからの情報通りならと火縄銃を一度外し、素手で戦闘体勢に入った。


「みんな気持ちの整理が出来てないわね!こうなったら…苦手だけど武術でいくわ!」


「マンビキ…アイツニ…!」


「オカネ…ババアカラオカネヲ…!」


「フンヲカタヅケル…?メンドクサイワネ…!」


「犬とかの動物や妖怪には罪魔の力がないのね…。もう!いい加減にしなさい!はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「グワァ…!」


「ウグァ…!」


「ギュルル…!」


「ここで一気に片づけるわ!放てっ!」


「ウアアアアアアアアアアアア…!」


「ジャマヲ…スルナ…!コノヨニ…ゼツボウシタオレヲ…コロセ…!」


「え…?こいつが大獄魔ってやつね…!他の獄魔よりも罪魔の力が一際強いわね…!」


この大獄魔は何か心に闇を抱えていて、人生に絶望して自棄を起こして犯罪行為を働いたと私は考察した。


大獄魔の目を見ればすぐにわかった。


それでも人々の命には代えられず、私は苦手な武術で相手を疲れさせ、とどめに火縄銃で一気に決める作戦にした。


「仕方ないわね。あなたに何があったかわからないけど、おとなしくすれば手荒な事はしないわ。どうしてそんなに死にたいの?」


「ウルサイ…オマエウザイ…!オマエヲコロシテ…オレモシヌ!」


「きゃっ!」


大獄魔は手に持っている包丁を力任せに振り回し、下手に刺激すると何をするかわからなかった。


それほど精神的苦痛が強く、ここまで精神的に追いやられると何をするかわからないと改めて痛感した。


彼の変則的な動きに翻弄されると一人の男の子が現れ、変身すると私の身体に憑依した。


「あなたは…誰なの?」


「僕は目黒川一志(めぐろがわひとし)。一つ目小僧と言われる種族なんだ。君は火縄銃が武器なんだろう?」


「ええ、火縄銃が武器ね。それに視力が悪いからメガネもかけているわ。」


「なら僕の能力は持って来いだね。僕は目が一つしかない分、視野は狭くなるけれどその代わりに目の前に集中し、一点で物事を見ることが出来るんだ。射撃は集中力がないと成り立たないからね。」


「なるほど!あなたのその能力なら私との相性は最高ね!あなたの力を借りるわ!一志くん!」


一つ目小僧の一志くんの力によって視点を一点集中し、大獄魔の動きが手に取るようにわかるようになった。


周りを見失うリスクはあるけれどその分身体的ダメージを最小限に抑えることが出来た。


武術でもすみれやつばき、もみじに教わってから少しずつ慣れてきて、普通の状態ならメガネがズレて見えなくなったりするのも妖魔使いになって克服される。


私は火縄銃を装備して銃口で大獄魔の頭部を叩き、もみじが教えてくれた隠れ蓑の術で京都タワーの中に隠れる。


「ドコダ…?ドコニイル…?」


「一志くん、あなたの能力を最大魔力で使うわ。」


「わかった。くれぐれも集中しすぎて周りを忘れないようにね。」


「一球入魂、精神統一、身心一如…この一撃に全てを賭けるわ…!神風旋陣大砲!」


「ウアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


こうして自棄を起こした男性の大獄魔は魂となって浄化され、元の身体へと還っていった。


私の放った弾丸が街にまで貫通したものの、その弾丸が妖魔となって破壊された街は元通りになっていった。


妖魔の力というのは不思議な力なのね…。


大獄魔となった人間は普通の獄魔となった人間に比べ、心の浄化がまだ未完成だったりする。


他の人々は先ほどまで罪に溺れていたのに信じられないくらい改心され、詐欺師だった人は自首、万引きをやらせようとした男の子はお店に謝罪、ペットのフンをそのまま放置していた女性はビニール袋を持って持ち帰った。


だけど一人の不審な男性は覇気がなく、ただただ電柱に寄り添って泣いていた。


気になった私は男性に声をかけ、何があったのかを聞いてみる。


「辛そうですね。何かあったんですか?」


「俺はもうおしまいだ…。設立した会社が高飛車財閥に乗っ取られた上にクビになって…妻は妻自身の遊びで溜まった多額の借金を背負わされて見捨てられ…親からは出来損ないだと勘当された…。親友だった奴らも俺の立場が怪しくなった途端に音信不通で…裏では誹謗中傷を書かれていたんだ…。しかも子どもはそれが原因で不良を拗らせて刑務所行き…俺はこの世に居場所を失ったのさ…。」


「そんな…あなたは何も悪い事していないのに…!こんなのあんまりね…!」


「だから…この世に居たって仕方ないし、ただ自殺するのはプライドが許さなくて…。この世に最後の抵抗して暴れてやろう…それから死刑になって関わってきたあいつらに復讐をって…この包丁を持って来たけど…もうその気もないや…。もういいや…お嬢ちゃん…俺を早く殺して楽にさせてくれ…。」


「そうはいかないわ。あなたの事は理解出来たけど、ここであなたを殺しても何も意味はないし、あなたが自暴自棄を起こせばあなた自身にもいつか跳ね返ってくる。もしそうなったらどこでその悪い運を断ち切るのかしら?奥さんの借金なら弁護士を使って回避できるし、お子さんの逮捕は奥さんやご両親が見捨てたから卑屈になったのよね。その親友たちはその程度の関係って事がわかったわ。それに…高飛車財閥、私も聞いたことがあるの。数多くの企業や団体を一方的に買収して私物化させ、従業員や本来の経営者を死に追いやっても自己責任で片づける悪徳超大企業財閥だって。」


「お嬢ちゃん…俺の事そこまで理解してくれたのか…。はじめて会ったはずなのにさ…。」


「私は日本文学を嗜んでいるから、その人の物語性や人生観を考察するのが好きなの。だから勉強だけでなく心理学や世界情勢などあらゆる分野を勉強したわ。私も文学者になって、いろんな小説作品を出したい。あなたの事を理解しようとしたのはそのためでもあるけれど、やっぱり目の前であなたが苦しんでいるのは放っておけないわ。」


「そうか…俺はもう50代後半なのに…まだ見捨てないのか…?」


「せっかくお会いした縁だもの。一期一会って四字熟語があってね、一度出会った人との出会いを大切になさいっておばあちゃんが言ってたの。もう苦しまなくていいわ。よかったら人妖神社の支社でお祈りしましょう。ヒメギク、彼を神社まで送ってあげて。」


「うん、あそこの神社はご利益が凄くあるって人間界でも有名なんだよ。この馬に乗って。」


「あ、ああ…。お嬢ちゃん…ありがとう…まだ気持ちの整理がつかないけど、心を入れ替えてやり直してみるよ。」


「わかったわ。あなたも頑張ってね!」


「しっかり捕まっててくださいね!はっ!」


「ヒヒーン!……」


「ふぅ…。これで一件落着ね…っ!?何!?」


「ふむ…私の攻撃を強引に銃で跳ね返すなんて、文系なのに見事な判断力ですね。」


「あなたは…誰なの?」


「僕はザイマ一族の次男で幹部のアマジャークです。以後お見知りおきを。」


「アマジャーク…!僕も会うのははじめてだ…!」


「あれがアマジャーク…!」


「人間というのは卑怯な生き物でしてね。自分さえよければ他者を陥れる。自分さえ助かれば他者を平気で見捨て駒にし、そして傷つけて利用する。こんな下等生物が何万年も地球にいるって思うだけで反吐が出ますよ。地球上で最も居てはならない要らない存在です。」


「そう…あなたはそうやって卑屈な目で人間を見ているのね…。それじゃああなたのボスのアクドーは一体、どんな目で人間を見ているのかしらね…?元々は人間だったって聞いたけど、それはご存知なのかしら?」


「ほう、あの姫君から話を聞いていたのですね。我らが父上のアクドー様は確かに元々は人間でした。そしてその人間の醜さに絶望し、父さんは素晴らしい行動に出ました。そして理不尽な人間によって一方的に裁かれ、父さんは死んでしまった。そして大魔王アクドーとして生まれ変わり、人間を滅ぼそうと企み実行したのですが…邪魔な人間共が地獄に封印し、父さんは我々を生み出し地上に復讐を誓いました。その憎き妖魔大王を暗殺しクーデターを起こし、忌々しい人妖神社の本社を破壊したときは嬉しかったですね。父さんの仇ですからね。」


「それが神話の真実…!」


「今のあなたの妖魔の力で僕と戦うのは時間の無駄です。あなたは精々人間に対して甘い考えを持って自滅なさい。では失礼。」


そう言ってアマジャークは一瞬で去って行き、知略だけでなく魔力の差を痛感させられた。


人間の残虐さと非道さを私に言い残し、神話の真実の一部を知ることが出来た。


事件が解決した直後にスタジオまで距離がある事に悩み、精一杯現場まで走った。


途中でバテてしまったので途中でタクシーを拾い、現場まで到着し収録を無事に終えた。


幹部との接触は残るはるりのみで、サトリーヌとはまだ誰も接触していない。


魔性の女とは言うけれどどんな奴なのかしら…?


つづく!

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