表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/122

第33話 欲望

「オンナヲ…ダキタイ…!」


「コレハ…オレノタベモノダ…!」


「オトコヲツッテ…カイラクヲ…!」


「カネモウケデキレバ…ヒトナドドウデモイイ…!」


「ラクヲシテ…イキタイ…!」


「強欲、色欲、暴食、怠惰…挙げればキリがないくらい大勢の人々が欲望に溺れているな…!仕方あるまい…この薙刀で煩悩を祓う!はぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「ジャマダ…ドケ!」


「うぐっ…!この人数で一気に襲い掛かっては…身動きも取れず、誰を狙えばいいのか…!」


「へへへっ!迷いが生じてるのが丸わかりッス!そのまま迷ってあの世に行くッス!」


「そうはいかないよ!」


「なっ…誰だ!うわっ!?」


「何だ…この面妖ながらもどこか憎めない妖魔の力は…?まさかこのお坊さんが…!」


「わたくしはのっぺら坊の梨田無心(なしだむしん)です。わたくしは顔がない分、表情を悟られることはないんです。でも安心してください、あなたの顔が無くなる事はありません。ただ相手に表情が読めなくなるだけです。」


「梨田さん…そなたの協力に感謝する!」


「では冬野つばきさん…あなたと共に戦いましょう。」


「ウア…?」


「ナンダ…?」


「カオガ…ワカラナイ…。」


「カオガアルノニ…ヒョウジョウガ…?」


「獄魔たちが私の顔を見て不思議がっているぞ…?」


「あなたの顔は無表情になったわけでも顔のパーツが無くなったわけでもありません。むしろそのまま普通の状態のままで、相手から見て表情がわからなくなるだけです。そして仲間にはきちんと見えるようになっています。都合がいいかもしれませんが、のっぺら坊も修行すれば自在に顔の有無が出来るようになるんです。」


「なるほど…人の姿をした時ではちゃんと顔があったのはそういう事か…。この力…お借りします!はぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「ウウ…!」


「アア…!」


「イタイ…!」


「貴様らの軟弱で軽薄な欲望よ!ここで立ち去れ!やぁっ!」


「ウアアアアアアアア…!」


「ふぅ…終わったか…。否…大獄魔がまだいたのだったな…!」


「ナカナカヤルナ…!オマエノソノカラダ…イタダクゾ…!」


「私の身体だと…!こやつの肉体は…これか。まだ胸に空洞があるな。」


「彼は富豪の人間の子です。名は金財保志蔵(きんざいほしぞう)です。あらゆるモノを金で手に入れては酒と異性に溺れ、欲望をあるがままに生きてきた自分勝手なお坊ちゃんですね。」


「ここまで軽薄な男の女になどに…私はならん!覚悟!」


「サカラウカ…ボクニサカラウカ!」


「うぐっ…!」


「ヒョウジョウガワカラナクテモ…ボクニハワカルゾ…!オマエノニオイ…イイニオイ…!」


「うぅっ…!」


「これは…顔のない妖怪のわたくしでも気持ち悪いと感じます…。」


あまりにも欲望だらけの声に私は悪寒を感じ、梨田さんも妖怪であるが故に人間の恐ろしさを痛感していた。


妖怪は能力が高くも欲望というものがあまりなく、ただ自分の役割を果たすのみだ。


一方の人間は無力な代わりに心と感情が多くあり、欲望を利用して無限の成功の可能性を秘めている。


しかしその欲望がエスカレートした時、魂そのものまでも堕落してしまい、悪の道を進んでしまうと平安館女学校で習った。


幸い我が校では京都神話についてや、妖魔の力と罪魔の力の関係、人として生きるには魂の修行をすることだという仏神法も学ぶ。


私はこの男の欲望を断つにはまず、自分中心でも構わぬが何でも思い通りにはならぬというのを叩きつける必要があった。


「貴様…そうやって親にワガママを通し、欲しいものは何でも手に入れ、権力を私物化したのだろうな…。そして金だけでなく食材や異性、そして物品も何でも無理矢理手元に置いたのだろう…。だが欲望だけで生きていくにはいずれ限界がある…。その財産が失われたら貴様はどうする…?」


「ソレハアリエナイ…。パパトママハ…オカネモチダカラ…。」


「そのお金も有限で、時間や友達、家族や心までは買えん。目に見える物理的のモノだけしか感じぬのなら…貴様に金では買えないものまで教えよう。貴様のその穢れた魂を…浄化する事が先だがな。」


「ウルサイ…ウルサイウルサイウルサイ!ボクハ…ヨクボウニイキルンダ!カネサエアレバ…ナンデモデキル!」


「そうか…なら力ずくでもわからせてやろう!やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「ウグッ…!」


「貴様は金と欲望だけでしか生きれないのか!自分の力で解決しようともしない臆病者だ!貴様にもあるだろう!貴様にしか出来ない小さな取り柄が!」


「アア…ボクハ…タダ…スキナコトヲ…!」


「心に響いたようだな…これでとどめだ!雪月氷晶斬!」


「ウアアアアアアアアアアア…!」


こうして金持ちのドラ息子は魂となって元の身体へと還り、先程まで獄魔だった人々も意識を取り戻した。


他の人々は自分たちの堕落した欲望が哀れすぎたと反省し、次々と帰っていった。


だがドラ息子の方はまだ納得していない様子で、私は奴に近づいた。


「金財とやら、何故そこまで金や権力にこだわるのだ?」


「僕は…本当は金財の家の子なんかじゃないんだ…。本当の名は…凡田保志蔵…。」


「つばきさん、凡田さんは確かかなりの貧困家庭で、父親がギャンブルで失踪し、母親が病気で亡くなってもなお、お金がないから墓を建ててもらえず、遺産もゼロだったそうです。」


「なるほど…。」


「僕が10歳の頃に本当の母さんが難病になって…お金がないから病院にも入院できない…。だからそのまま息を引き取ったんだ…。母さんの遺体と2年間過ごし、学校にも通うことが出来ず、そこで母の友人である金財家の養子になって…今まで出来なかった事が出来る喜びを知ったんだ…。貧乏のせいでいじめられたり貶されたりしたけど…お金があったおかげで友達も出来て、女も振り向くようになった…。そこからだろうね…今まで我慢していたものが溢れて…ワガママになったのも。そしてこの街で快楽を求めて手ごろな異性を探していたら…突然息が出来なくなって…。」


「それでワガママになってしまったのか…。先程は軟弱だ臆病者だと言ってすまなかった。そなたも苦労をしていたのだな…。」


「あんた…僕の苦労を悲しんでいるのか…?涙が流れて…!」


「そなたを哀れんでいるのではない…。そなたの苦難と努力、そして葛藤があったと思うと胸が打たれたのだ…。だがこれでもう、やるべき事がわかったな。」


「ああ…。あんたのおかげで目が覚めたよ。僕は心を入れ替えて、世のためになる事をするよ。」


「そなたが精進して成功する事を祈っているぞ。」


「つばきさん!後ろ!」


「むっ…!?何者だ!?」


「あーあ、せっかく欲望に満ち溢れた人間をターゲットに出来たのに。これじゃあ水の泡ッスよー。」


「彼は…ドクロスケ!」


「何…?こやつがザイマ一族幹部の…!」


「こいつだ…こいつの声が僕だけじゃなく、周りの人々の意識を奪ったんだ!」


「なーんだ、聞こえてたんスね。そそ、俺っちがザイマ一族幹部で四男のドクロスケッス。以後お見知りおきをッス。」


「何だ…この軽薄そうな男は…。」


「気を付けてください…。奴は軽薄でお調子者に見えて悪知恵が働き、極悪非道です。」


「あーあ、随分な言われようッスねー。まぁいいッス。人間の欲望ってのは興味深いッスよ。七つの大罪…だっけ?あれは人間の本来の姿であり最も人間らしく生きる手段だと思うッス。だから人間は自ら歴史を終わらせようとしなかったッスか?」


「貴様…人間の弱いところを突くとは…!だがすまないな、今の私が貴様と戦ったとしても勝てる見込みはない。貴様を倒して平和を取り戻したいが、帰っていただこう。」


「へぇ~、アンタって自分の弱さを認めるんスね。なーんか気に入ったッス。じゃあアンタのその弱い心に免じて今日は帰るッス。バイビー!」


「くっ…!」


「あんた…あの化け物と戦うのかよ…?」


「悔しいが…今の私ではこの京都は守れない…!軽薄で軟派な男だが…罪魔の力が強すぎる…!」


「つばきさん…。」


「梨田さん、ザイマ一族との戦いが終わるまでご協力願いたい。」


「もちろんです。ヒメギク様のご命令でなくてもお供いたしますよ。」


ドクロスケという軽薄な男と出会い、その性格や見た目以上の罪魔の力を感じ、私自身の無力さを思い知った。


私にはまだ妖魔の力が足りず、おそらく他の皆も接触しているだろう。


途中まで中断されていた宇治アニメイトの取材は無事に最後まで収録し、残るはテレビで放送されるのを待つだけだ。


あれから私は部活のなぎなた部だけでなくザイマ一族との(いくさ)に備え、部活終了後も薙刀の訓練を行った。


皆もきっと…私と同じ気持ちなのだろうな。


つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ