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第32話 宇治アニメイト

~冬野つばきside~


姉の冬野つつじが声優をやっている繋がりで、私は宇治アニメイトという大手アニメ制作会社のインタビュアーになる。


京都テレビの協力の元、姉が主人公で演じる「大正薙刀道」というアニメの取材だ。


妹でアイドルをやっている私が姉の代わりに宇治アニメイトのインタビューをする。


「私の信じる薙刀道は…今ここにある!うむ、こんなところだな。皆さんこんにちは、大正薙刀道の武丸慶子演じる冬野つつじの妹、冬野つばきです。今日は大正薙刀道を制作する宇治アニメイトに取材に行きます。果たしてどんな現場なのでしょうか?いざ参る。」


「はいOKでーす!つばきちゃんリラックス出来てるね!」


「姉が出演するアニメを成功させたいですから、失敗は出来ません。かと言って堅苦しいとファンも集まらないですからね。」


「お姉さんから聞いた通りの真面目さだね。この調子でインタビューを頼むよ!」


「はい!」


「じゃあ中に入るシーン行きます!」


「お願いします!」


宇治アニメイトの第1スタジオの前に着き、私は一呼吸をしてからインターホンを押す。


かつて宇治アニメイトは西暦の時代に苦難があったものの、不屈のアニメイト魂と世界中のファンによる支えで立ち直り、今となっては世界一作画が芸術的なアニメ制作会社とまで称されるようになった。


あの辛い出来事があったからこそ歴史を感じ、そしてアニメ制作への情熱を感じた。


私はそんな世界一の作画を誇るアニメ制作会社に取材出来る事を誇りに思い、そして姉も主人公として演じることに喜びを感じている。


そして制作現場に入り、多くのアニメーターがパソコンの前で作業をしていた。


私は目の前にいた男性に声をかけ、どんな作業なのかを確かめる。


「すみません、冬野つばきです。これはどんな作業でしょうか?」


「これは原画といってね、これをパラパラとめくる事で絵が動いているように見せるものなんだよ。こうやって…ほら。キャラクターが動いているでしょ?」


「これはまるで芸術だ…!私の知らないところでこんなに美しいアニメが作られているのだな…!」


「ふふっ、この動きは君のなぎなたの動きを参考にしてるんだよ。」


「私ですか…?」


「うん、君の全国大会をつつじさんに見せてもらってね、それを見た企画課がなぎなたのオリジナルアニメを創ろうって話になって、僕は君を呼んだんだ。作業に夢中で声をかけられるまで気が付かなくてごめんね。」


「いえ、私も呼ばれて光栄です。姉をよろしくお願いします。」


「つつじさんの真っ直ぐで凛とした声、楽しみだよ。」


このアニメ自体は来年の春に公開されるが、アニメ制作というのは細かい作業で企画や脚本、演出などを決めてから描きはじめ、原画や動画、さらには背景やキャラなどを創る。


そして何よりも宇治アニメイトの十八番(おはこ)である立体感ある彩色だ。


水や空などの色合いがリアリティがありつつも幻想的で、芸術の世界に引き込まれるようなアニメーションだ。


私は取材のために鈴木直正社長が待っている応接間へと向かう。


ドアをノックし、鈴木社長が椅子に座って待っていた。


「君が冬野つばきさんだね。はじめまして、宇治アニメイト代表取締役社長の鈴木直正です。」


「冬野つばきです。姉の冬野つつじがお世話になってます。」


「大正薙刀道の主人公だね。お姉さんの声が楽しみだよ。」


「光栄です。では本題に入ります。宇治アニメイトは彩色に物凄いこだわりがあると聞きました。宇治アニメイトにとって、アニメ制作とは何でしょうか?」


「我々アニメーターはアニメを知らない人から見れば所詮アニメでしょ?アニメはフィクションでしょ?幻想を創って何になるの?なんて思うでしょう。ですが…そのフィクションなアニメだからこそ出来る無限の彩色、フィクションでもその中でキャラたちが生きているように見せる事、そしてアニメを愛する世界中のファンにアニメを通じて繋がりが出来ると信じています。まるで自分たちもアニメの世界に入っているような感覚であるように、我々はそのアニメ制作に魂を込めています。もちろんアニメーターは収入が少ないのに仕事量が多すぎると言われていますが、新歴になってから生活が見直され、人間らしく生きれるようにしたんです。そうしないとアニメに人物の人間らしさを表現できませんから。」


「聞いたことあります…。宇治アニメイトはアニメーターの生活環境を真っ先に改革し、仕事が多くても給料や待遇、さらに生活も豊かだと。」


「何も仕事で自分を犠牲にしてはなりません。そこまでして創るとファンにも察されて心を痛める方もいますからね。アニメーターも人間です。人材こそが最大の資源です。だからもう二度と…失うわけにはいきません。」


宇治アニメイトのアニメ制作への心意気と魂に感化され、アニメ制作もファンを想ってここまで仕事をしていると思うと胸を打たれた。


舞台となる街に忠実になるように何度もロケをしたり、休みをあえて取らせてより最大のパフォーマンスを引き出させるなどし、それ以来他会社のアニメーターの環境も西暦よりよくなっていた。


だからこそアニメ文化を守らなければと思う。


~宇治駅周辺~


「俺にもくれよその金。」


「あらいらっしゃい。今日も抱きしめに来たのかしら?」


「社員など非正規で十分だ。正規社員に払う金などない。我が儲からないのでな。」


「これだから最近の若者は根性が足りん。ワシが若い頃はな…」


「ケハハハ!みんな自分の欲望だらけッスね!いいねぇ…最高ッスねぇ!だがまだ足りねぇッスね…お前らの欲望をもっとさらけ出し、罪魔を解放して獄魔になるッス!」


「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


~宇治アニメイト第1スタジオ~


「臨時ニュースです!ただいま宇治駅で大勢の化け物が街を襲っています!」


「何だって…!早く社員たちを避難場所へ!宇治駅からは近くはないが、遠くもない!冬野さんも避難を…」


「すみません!急用を思い出しました!宇治駅に行きます!」


「ちょっと待ちなさい!君まで犠牲にするわけには…!」


「あなた方を守るには…私が行くしかないのです!すまない!」


「冬野さん…」


「ここなら誰も見ていないだろう…よし!闇に潜む黒き影よ…我に力を与えよ!妖魔変化!」


宇治駅まで走るには少しばかり遠いので、妖魔変化をして移動する。


妖魔使いになると移動も苦にならず、皆が逃げていく逆の方向へ走った。


宇治駅ではまるで暴徒化した獄魔たちが自分の欲望を満たそうと自分勝手に行動していた。


ある者は食べ物を貪り、またある者は異性に溺れ、そしてまたある者は金を貪欲に漁っていた。


私は獄魔たちを見て、人間の状態でもここまで欲望に満ちていたのかと愕然した。


それでも私は首を振って我に返り、獄魔たちに気付いてもらうように大きく名乗った。


「雪原に咲き誇ることツバキのごとく!冬野つばき!貴様らの軽薄な煩悩を…ここで追い払うぞ!」


つづく!

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