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第15話 東京旅行・前編

~春日はなside~


「よし、来週の金曜日に月光花の宣伝のために、東京に参るぞ。ちょうどライブハウスのイベントで空きが出たのだ。」


「えっ?もうですか!?」


「それにもうデビュー曲は完成してある。あの世界的音楽家の滝川留美先生だ。彼女は3グループの同時進行でありながら、なんとわずか3日で完成したそうだ。作詞は(それがし)が既に終わらせた。これを見るとよい。」


「すごい…これが花柳先生の作詞…!」


「私たち京都のローカルアイドルとしてはピッタリの歌詞だね。」


「という事は…!」


「レコーディングが始まるのでございますね。」


「その通りだ。そなたたちには花柳スタジオでレコーディングをしてもらう。今まで舞踊稽古をしてきたが、あの振り付けは全部ライブのデビュー曲の振り付けだ。もう既に身体に染みついているであろう。」


「バレエの演舞に盆踊りの振り付けを取り入れたダンスってこういう事でしたか。」


「よーし!それじゃあレコーディング頑張ろう!」


「ひまわりちゃん…あんまり仕切らない方が…!」


「いいじゃない、ムードメーカーが引っ張っても。私が引っ張ろうとするとどうしても完璧さにこだわって融通が利かないし。」


「そうなんですか?」


「もうー!さっきの掛け声でおー!って言ってー!」


こうしてレコーディングが開始され、ひまわりちゃんの空回りもあったけれど順調に進んでいった。


プロモーションビデオはまだ最初はローカルなので、予算的に市民会館のスタジオで踊ってみた程度の撮影をする。


衣装も和風のフリフリな衣装になり、本格的にアイドルらしくなってきた。


そして1週間が経った…。


「もう!またひまわりちゃん寝坊するから…!」


「ごめんねって!一応目覚ましはかけてあるんだけどなぁ…!」


「お待たせしました!あれ…?紺野先輩はどうしました?」


「紺野先輩はまだ来てないですね…。」


「申し訳ございません!遅くなりましたでございます!」


「珍しいですね、紺野先輩が遅れるとは。」


「ええ、時間を勘違いしてしまいましたでございます…。」


「意外と天然ですね、紺野先輩って。」


「しかし常盤は早いな。何時に着いたのだ?」


「私は前日にあらかじめ準備して、荷物をまとめたら漫画喫茶で泊まったわ。朝食はウォーターインゼリーで済ませたわ。」


「ええ…!」


「おはよう、月光花の皆の衆。」


「おはようございます!」


「全員揃っているな。それではこれから新幹線に乗り、東京駅へ向かう。だが今日明日は貴重なオフだ、存分に楽しむとよいぞ。」


「はい!」


「それじゃあ東京へ…しゅっぱーつ!」


「おー!」


月光花と花柳先生が揃い、私たちは新幹線のぞみに乗り、終点の東京駅へ向かう。


新幹線の中で紺野先輩と冬野先輩が花札、ひまわりちゃんと常盤先輩、もみじちゃんと私で囲碁と将棋を交互に、すみれちゃんはスマホでサッカーの試合を観ていた。


すみれちゃんは京都パープルサンバの大ファンで、12年くらいもセカンドリーグに居続けていることを憂いていて、自分がもっと応援しないといけないっていつも言っていた。


頭がいい常盤先輩でさえひまわりちゃんに囲碁や将棋で勝てず、どうすればそんなに相手をコントロールできるのか、駒や石を置くときの考え方を教わっていた。


もみじちゃんも興味津々で、私が何度挑んでも勝てなかった理由も何となくわかってきた。


そして東京に着き、私たちは駅から降りて都会の空気を感じた。


「すごいね、これが東京なんだね。」


「やはり大きいところでございますね。」


「紫吹さんには会えそうにないですね…。」


「何か言ったか?」


「いいえ、何でもありません!」


「ここには妖怪が誰一人もいないんだね。」


「妖怪さんたちは京都しかあまり訪れないからね。」


「そなたたち、会話も結構だが、観光してリフレッシュする目的を失うでないぞ。」


「はい!」


久しぶりの東京に花柳先生は嬉しそうで、東京に別荘があるって言っていた。


若い時に東京に来た当時はテレビ局のディレクターをしていて、和の文化をタレントやアイドルに体験しながら紹介してもらう番組を担当していた。


そしてアイドルに興味を持ち、大和撫子アイドルグループを結成させるきっかけをつかんで入社5年で退社、そして実家の京都に戻ってプロデュースを始めた。


最初のグループである月ノ姫は瞬く間にデビューし、オリコンもいつも上位で紅白にも出場し、世界ツアーでは全米が感動するほどだったけれど、リーダーのお父さんが薬物で逮捕され、解散に追い込まれた。


その後は何度も結成しては解散を繰り返し、今の月光花に至った。


花柳先生は昔は京都弁を話す人だったけれど、テレビの仕事で慣れたせいか京都弁を完全に忘れてしまい、少しだけ親近感が少しだけあった。


そして私たちは東京スカイツリーに登り、東京の街並みを一望した。


続いて秋葉原で和風メイド喫茶でお茶と和菓子を堪能し、メイドさんのパフォーマンスでファンの熱気を生で感じた。


夕方になってきたので両国のホテルに到着し、私たちは温泉でゆっくり疲れを取った。


夕食は肉と野菜のちゃんこ鍋で、花柳先生は満足げに扇子(せんす)を仰ぎながら真っ先に食べた。


夜になり私たちは寝間着に着替え、少しだけ女の子の話をする。


「ところでさ、みんなって好きな人とかいるんですか?」


「ひ、ひまわりちゃん…!?」


「恋バナをするのかしら?女の子の就寝前のお約束ね。でもごめんなさい、生憎私には今は好きな人はいないの。そうね…盆栽を教えてくれたおじいちゃんみたいに頑固だけど優しい男の人が好みかしらね。」


「常盤さんはきっといい奥さんになりそうでございます。」


「そんな大げさですよ。」


「私は今のとこといないでございますね…。お役に立てなくて申し訳ありません。」


「私もずっとなぎなたに打ち込んでいて恋に(うつつ)を抜かす暇はなかったな。」


「私も今のとことはいないね。まぁ…女学校生活していると、異性とは交流しにくいところもあるからね。」


「忘れてた…!」


「ひまわり先輩…今更ですか…?」


「うう…!いいもん!ここで今から暴露するもん!はなには実は婚約者がいるんだ!」


「もう!今ここで言わなくてもいいのに!」


「何と!?」


「それは本当かい!?」


「アイドルなのに婚約者って本当なの!?」


「ご実家の事でございますか?」


「そういえば春日家は代々神道に仕える者と契りを結ぶと聞きましたが…本当ですか?はな先輩…!」


「えっと…私自身は消極的だけど…。実は島根にある大きな神社の第二宮司のお孫さんで…稲田大輝(いなだだいき)くんっていうんだけど…。」


「確か男子部の平安館学院中等部3年で野球部主将だったね。」


「その人とはもう既に会ってるし、アイドルやっているのももう知ってるよ。でも…まだ中学生でお互いに結婚の意識はないんだ。今が楽しいならそれでいいかなって…。」


「まぁ、確かに結婚を意識するにはまだ若いかもしれないね。」


「それでも婚約者がいらしたとは、神社の子も大変なんですね。」


「それに人妖神社は世界でも有名だからな。ご両親も子孫を残すのに必死なのだろう。」


「でも日向さん…幼なじみとはいえ、他人のプライベートを暴露しない方がいいわよ?あんまり空気が読めないと…」


「ゴクリ…!」


「えいっ!」


「ぶっ…!」


「こうするわよ♪」


「やったなー!えいっ!」


「ぶっ…!お覚悟はよろしいでございますね…?えいっ!」


「よいしょ!」


「ばふっ…!もうっ!それっ!」


「きゃっきゃっ♪」


ひまわりちゃんが私のプライベートを暴露した罰で常盤先輩がひまわりちゃんの顔に枕を投げつけ、楽しくなった私たちはみんなで枕投げをした。


修学旅行でおなじみの枕投げはとても楽しく、もちろん部屋を荒さず壊さずに周りを見ながら枕をみんなに投げた。


翌日、こっそり見ていた花柳先生は扇子を満足げに仰ぎ、よいレクリエーションであったぞとまるでお父さんのように笑顔だった。


そして2日目は…花柳先生が個人的に行きたい場所へ行く。


つづく!

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