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第13話 本番に向けて

~紺野るりside~


私は紺野るり、16歳でございます。


私は次の日舞(にちぶ)の本番に向けて、家元であるお母さまの紺野いぶきのご指導の下で稽古をします。


そのお母さまの稽古の見学に花柳先生も(おもむ)き、より緊張してしまいました。


「るり、今日は少し表情が硬いですよ?花柳先生の目の前だから少し緊張しましたか?」


「はい、お母さま…。」


「そう悩むことはありませんわ。あなたは今までたくさんのお客さんに踊りを魅せたではありませんか。それとも、プロデューサーである花柳先生に評価されたくて肩に力が入りましたか?」


「わかりません…。」


「まぁ、本番も近い頃ですし、仕方のない事です。花柳先生、お茶でよろしければおもてなし致します。」


「構わない、(それがし)は紺野さんの舞いが見れて満足です。紺野さんは全国でも有名でありましたね。」


「ええ、中学最後の年に大会の一般の部に臨み、見事にベスト8に選ばれました。平安館女学校に幼稚園の頃から通ってますが、もう既に学生とは思えない実力を手に入れました。」


「母上殿もこの様な子を持ってさぞ幸せでしょう。」


「ですが…実力をつけたところで、日舞のみに縛られていてはずっと古い型のままで、新しい舞が見つからなくなってしまいます。日舞の世界は保守的な方が多いですが、私たち紺野流は革新的な演舞を求めているのです。」


「それでお母さまに無茶を言って、月光花のオーディションを受けたのでございます。」


「そうか…突然駆けつけてすまぬな。いい刺激であった。感謝する。」


「ご静聴ありがとうございました。」


それから私は何度も花柳先生や、月光花の皆さんに家元までご招待し、私の日舞の稽古を見学させました。


まず客人をお招きし、本番を想定した人の視線に慣れる事、日舞を経験していない方々から発せられる感想を聞き、今後の参考させる事をベースにして参りました。


今回の選曲は、川のせせらぎに青い花びらがゆっくりと舞うように流れるテーマで挑み、平安館大学の平安館演舞場にて行われる第7回高校生日本舞踊コンテストに挑みます。


昨年は足首の負傷で、代わりに当時の3年生の先輩が出場し、舞台袖で拝見した私は、その先輩の舞踊に見惚れていました。


その先輩に負けないように今後は負傷しないよう、体のケアを重視してきました。


そしてついに、第7回高校生日本舞踊コンテストが行われます。


「紺野先輩って、生徒会副会長だったのですね。」


「うむ。まさか文武両道を貫き、全国出場するとはな。」


「紺野先輩の様子を見に行かなくてもいいのかい?」


「いいんだよ。紺野先輩には紺野先輩の世界があるんだし。あえて一人にした方が、集中出来る人かもしれないからね。」


「へぇ、日向さんって行動的かと思ったけれど、あなたって意外と空気を読めるのね。」


「ひまわりちゃんは父方の祖父が囲碁、母方の祖父が将棋やってるんです。普段は空気を読むのが苦手ですが、たまに勘が冴えるときがあるんです。」


「ええ!?何それ!それじゃあ私が空気読めないみたいじゃん!」


「まぁまぁ、今はとにかく紺野先輩の演舞を見ようじゃないか。」


「もうすぐ開演時間ですね。日舞を見るのははじめてですので楽しみです。」


「私もずっとなぎなたばかりだったからな。こういう静の文化を(たしな)むのもよいだろう。」


「私もずっと本ばかり読んでて、動くものを見る事はあまりなかったわね。趣味の盆栽(ぼんさい)も動かないものだから。」


「私とはなは神社のイベントで日舞を少しだけ見たことあるよね。」


「うん。その時は紺野いぶきさんが神事で踊ってたんだ。」


「あ、始まるよ!」


「これより、第7回高校生日本舞踊コンテストを開演します。出場者の皆さんが入場します。大きな拍手をお願いします。」


私は本番に集中するために、一番人に伝えるのが得意そうな日向さんにLINE(リーネ)で「あまり大勢で来られると他の方が迷惑しかねないので見送りはいりません」と送りました。


そのメッセージが届きましたのか、控え室まではお母さまのみの付き添いになり、他の方々に迷惑をかけずに済みました。


「さぁるり、ここからが本番ですよ。アイドルの稽古で吸収した演舞をお見せなさい。」


「はい、お母さま。私の演舞をお客様にお見せするでございます。」


~平安館大学前~


「ホント男って草食系ばっかりね。肉食系の年収500万のいい男いないかしら?それにイケメンで頭が良くて清潔感があって何でも言う事聞いてくれて何もかも男が負担してくれるのが当たり前でレディファーストの精神のあるいい男と結婚したいわねぇ。」


「ふむ、あの女…過去に自分が一番と思い込み、被害者ぶって友を味方につけて数々の男を困らせ、今まで自分に貢がせて、尽きれば見捨てての繰り返しの悪女であるな。ふん、人間は相変わらず醜いものであるな。さぁ…貴様のその罪魔を解き放ち、獄魔として生まれ変われよ!」


「うっ…!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


~平安館演舞場~


「何かしら!?停電!?」


「どうするんだよこれ!」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「皆さん落ち着いてください!停電が収まるまで待機してください!」


「この邪気…!」


「ザイマ一族の仕業…!」


「早く参りましょう!」


「獄魔のお出ましってところだね…!」


「急ぐわよ!」


「うむ!」


「るり!今動いてはなりません!」


「お母さまはここで待っててください!私の友達が…仲間が危ないのでございます!」


「仲間…?アイドルのお友達の事ですね…?でも…無茶はしないで、危ないと思ったら戻って来てください!」


「わかりましたでございます!」


私にも僅かながら邪気を感じ、今まで襲ってきた怪物である獄魔の元へと向かいました。


舞台衣装のため少々走るのが困難で、小股で少しずつ移動する事にしました。


ようやく外が見えましたので出てみると、甲冑を着た二足歩行の九尾が炎を焦がして待ち構えていました。


同時に炎によって負傷した皆さんがうつ伏せになっていました。


私は皆さんの元へ衣装が乱れつつも走りながら向かいます。


「皆さん!大丈夫でございますか!?」


「ワタシノ…リソウノオトコ…!ワタシダケヲミロ…!オトコナンテ…オンナニヒザマズケ…!」


「なるほど…あなた様は婦人であることを利用し、殿方を服従させるのでございますね…!」


「イイオトコ…ワタシガイチバン…!ドウシテ…オカネヲワタシニヨコサナイノ…!ユルサナイ…カネホシイ…ミツゲ!」


「きゃぁっ!」


「シアワセニナルニハ…オカネガイル…!オトコノクセニスクナイカセギ…ナサケナイ…!オンナガイチバンデアルベキ…!オトコナンテ…バカバカリナノヨ…!」


「果たしてそうでございますか…?」


「ハ?」


「古き時代から…婦人は殿方の一歩後ろを歩くようですが…今となってはそれはもう時代遅れかもしれないでございます…。確かに現在の婦人は昔よりも恵まれ、恋愛の自由になり、娯楽も増えて自由になったでございます。そして殿方は婦人をリードし、収入があるほど幸せになれるでしょうですが…この頃の婦人方は少々殿方に対して我儘(わがまま)であり、殿方の気持ちに寄り添おうという気がないように思うでございます!自分の気持ちばかりが先行し、他人の気持ちを殺してまで自分を通そうとするその根性…同じ婦人として叩き直すでございます!」


すると私の体から黒い霧が発生し、胸部からは黒くて怪しげな篠笛が現れました。


この篠笛で私に戦えと申しますのでしょうが、どうすればいいのかわかりませんでした。


するとこの世のものではない黒い馬に乗ったヒメギクさんが颯爽に現れ、私にこう叫びました。


「紺野さん!その篠笛を吹く時に、闇に潜む黒き影よ…我に力を与えよ!妖魔変化!と唱えて!」


「了解しましたでございます!闇に潜む黒き影よ…我に力を与えよ!妖魔変化!」


篠笛を怪しく吹くと、先ほどの舞踊衣装である藍色の着物が、浅葱色と勿忘草色のした川がデザインされた黒色の着物へと変わり、両手には勿忘草の花と川が描かれた魔法の扇が装備されました。


そして私はふと浮かび上がった名乗りを上げます。


「河川に咲き誇ることルリソウのごとく!日本の婦人を代表して…あなた様に喝を入れるでございます!」


つづく!

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