第117話 出発
ワールドアイドルオリンピックが閉幕して以来、月光花は世界中でライブをしてほしいというオファーが多数送られてきた。
中でも日本文化の事が大好きな欧米では日本よりも熱狂的でアルコバレーノを超えるほどにもなった。
その結果世界一周ツアーを開催するほどになり私たちは京都を後にして東京の武道館でライブの準備をする。
「ついに始まったね…月光花の世界ツアー。」
「まだリハーサルだけどね。」
「けど不思議…私がみんなと出会った頃はアイドルとしてまだまだだったのに、気が付いたらこんなに大きくなったね。」
「ヒメギクの献身的なサポートのおかげだ。本当に感謝するぞ。」
「ううん、これはみんなの努力の成果だよ。私はただ陰から見守ってただけ。みんなが努力してアイドルとして成長したからここまで来れたんだと思う。」
「じゃあその期待に応えないといけないね。」
「そうね。アジアとアフリカ、中南米ではSBY48やアルコバレーノに負けちゃったけど、欧米での人気投票では私たちが勝利したものね。」
「海外の皆さんの期待に応えて私たちらしさを出しきりましょう。」
「皆の衆もう集まったか。これからリハーサルを始めたいところだが、どうやら大道具が少し手間取っている状態でたった今京都の鬼ヶ島大道具に助っ人要請をしてきた。せっかくのスタートダッシュを失敗に終えたくはないが皆の衆はやれる事だけをやればいいしステージが完成するまで東京を散策するとよい。某はお千代と共にお偉いさんと対談をせねばならぬ。焔間さん、月光花のマネージメントをよろしく頼む。」
「わかりました。じゃあみんな、武道館ということだしあそこに行こう。」
「あそこでございますね。」
「うん。すぐ近くの靖国神社もそうだけど、ファンのみんなとの縁結びと言えば…」
「東京大神宮ね。最高のライブの縁結びとして行きましょう。」
こうして私たち8人は縁結びのために東京大神宮に向かう。
少しだけ歩くけれど身体を温める目的ではとてもいい運動になった。
そこの神社は結婚などの縁結びで有名だけど、何も縁結びは恋愛や結婚だけでなく幸運の縁結びという意味もあると思う。
東京大神宮に着いた私たちは正門の鳥居に一礼して聖水で身を清める。
中に入ると参拝者のみんなは月光花のみんなだと知ると写真を撮ったりサインをねだったりするなどで大賑わいだった。
宮司さんや巫女さんもサインをねだって来たのは少しビックリしたけどね。
「さぁ年始ということでおみくじを引きましょう。まずはリーダーの私から行くわ。さてと…小吉ね。どれも普通だけど気になるのがあるわね。計画を積み重ねれば大成する…ね。」
「では次は私が引くでございます。えっと…私は吉でございます。とくに感情的にならなければ金運が上がるとの事でございますね。」
「次は私だよ。えーっと…うわっ…凶だ!思いつきの行動は人との縁を切る…気を付けよ…。」
「じゃあ次は私だね。私は中吉のようだね。狙いを定めて的を絞れば悔いのない結果が生まれるみたいだ。」
「次は私の番だな。ふむ…私は吉か。結果を焦ると何もないところで転ぶか…いつも通り落ち着いていれば問題なさそうだな。」
「では私が参ります。えっ…私も凶でした…。無闇な勝負は負け戦を生むんですって…。そんなに負けず嫌いなのでしょうか…?」
「じゃあ私がいくね。えっ…嘘…!?大吉だった…!」
「ええー!?いいなー!」
「ほう、どれもいい結果じゃないか。」
「とくに恋愛が気になるね。」
「見せてください。」
「えっと…想いは実り将来は安泰…。これって…」
「はなの婚約者の彼と将来も安泰って事だね。」
「羨ましいよ。私は異性と縁がないからね。」
「すみれはイケメンだからなぁ。私だって縁が欲しいもん!」
「ははっ、縁は焦っているうちはそう訪れないぞ。」
「つばきに言われるとそうなりそうで怖いよ…。」
「ヒメギクちゃんはどうだった?」
「私も大吉だった…。商売では指揮能力が活かされついて来る人多数だって。商売って妖魔大王としてなのか、プロデューサーとしてなのかわからないけど嬉しい。」
「じゃあここまで来たし最後は神様に参拝しよう。」
「幸せへの感謝と願い事を神様にお告げしなければなりませんね。」
「二回礼をしてその後に二回手を叩いて神様にお祈りしてまた最後に一回礼をするのでございますよ。」
「わかってるよー。平安館女学校のマナー講座でやってたもんね。」
「じゃあ行きましょう。」
こうして私たちは月光花の今後の活動の健闘を祈り、去年はファンのみんなに支えられて大きくなれたことを神様に感謝して神社を後にした。
武道館に戻ると予定より遅かった設置も鬼ヶ島大道具の東日本支部が駆けつけてくれて遅れを取り戻すどころか速いペースで進んでいた。
月光花のみんなは予定より早い日程でリハーサルを行い、念には念を入れて花柳先生の指導の下でライブの準備をした。
ライブ当日になると日本各地から集まったファンによって最初の世界ツアーを盛り上げ、終了後に羽田空港でファンのみんなに月光花コールで見送られた。
私たちは花柳先生夫婦と一緒にアメリカのロサンゼルスへ旅立ち、花柳文化劇団創立以来の快挙を成し遂げるのでした。
つづく!