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第116話 アイドルの王者

高飛車きらら…今は灰崎きららは新たなアイドルグループであるシンデレラロードを結成し、はなたちの目の前で成り上がりっぷりを見せつける。


それがプレッシャーとなったのかスマイリング娘。のみんなはステージを前に委縮してしまった。


とくに責任感が強いリーダーの吉原かえでは肩を大きく震わせていた。


そんな時に川島清美が清楚系アイドルとは思えない行動に出る。


「清美…。」


「私たちはスマイリング娘。よ。ファンの前ではスマイルを絶やさない、それが私たちの王者としての誇りよ。でも…かえではスマイルになってる?」


「え…?」


「あなたがかつての栄光にこだわって復権を目指しているのは私たちも知っているのよ。」


「でもそれってウチららしくないじゃん。いつも時代の先取りをして未来を明るくってのがモットーじゃん。」


「たとえ強敵が相手でも問題ありません。リーダーは無責任にファンを楽しませて私たちをも巻き込むことだけを考えてください。あなたをリーダーに任命したのは…私たちなんですから。」


「みんな…うん!弱気になってごめんね!私たちのスマイルは世界のスマイル!政権奪還がなんだ!私たちは私たちらしくいくよ!」


「ゴー!ゴー!スマイリング!」


いつもとは違うスマイリング娘。の掛け声に周りは驚き、今までは王政復古、政権奪還という見えないプレッシャーが圧し掛かり、いつの間にか勝利主義に追いやられてしまっていた。


ところが仲間たちはトップに立つより自分たちらしい笑顔溢れるパフォーマンスをしようというスタイルに変わった。


お姉さんが初期メンバーだった天王寺あかね、台湾からアイドルになったファン・メイユン、父とカレー屋を経営するの霧島モカ、日本人で石油王になった父を持つ新川ありさ、女子バレーボールで全国出場経験のある稲垣奈津美、清楚美人でまとめ役の川島清美、星のような明るさの月島星乃、ゆるふわマイペース系の花園ゆめ、韓流アイドルの影響がある金子香織、そして日曜大工が出来るお祭り好きの長谷部梨花という個性的で一緒にいたら楽しくなりそうなメンバーでファンをスマイルゾーンに入れて盛り上げた。


そこにさっきの統率力がありつつも少しだけ心配性な吉原かえでがそんなみんなを率いてセンターこそ経験がないけれどみんなの笑顔を前面に押し出していた。


スマイリング娘。の出番を終えると私たち月光花の番がやってきた。


「あの…えっと…緊張するね。」


「私たちは花柳先生の厳しい稽古にずっと耐えたじゃないか。自信を持ってもいいのだぞ。」


「そうだね。私たちは京都のみんなの星だからね。私なんて殺陣でウォーミングアップしたくらい興奮しているよ。」


「それに…アルコバレーノの皆さんにもSBY48さんにも挑めるだなんて光栄なことでございます。私たちローカルがこの大舞台に立てているのでございますから。」


「みんな…。」


「さぁ時間です先輩。こんな大舞台では一筋縄ではいかないですが、私たちにはこの世界だけではない方々も応援に来ているのですから期待に応えなければなりません。」


「そうだね…。でも…その事は秘密だよ?」


「ええ、私たち月光花だけの秘密…。妖魔界のみんなも見守っているわ…。」


「すぅ~っ…。みんな…掛け声しよう!」


「うん!はなが率先して掛け声出すなら私たちも頑張るよ!」


「日ノ本に咲く黒き花!」


「「夜空を灯す淡い月!」」


「月光花!」


「「いざ参る!」」


「みんな!優勝とか意識しすぎずみんならしさを出しきって!」


京都のローカルアイドルとして活動を始め最初の頃は話題にならないどころか小さいライブハウスですらお客さんが来ないほどだった。


ザイマ一族との戦いが開戦してから月光花のみんなは妖魔の力を上げつつもアイドルとして地道に活動を続け今となっては京都市…京都府や妖魔界の期待の星になっている。


私が妖魔大王に襲名してからみんなは妖魔界七人将になり、人間界の平和と繁栄を築く立場になって責任感も強くなり日本を代表する和風アイドルへと成長した。


今は花柳先生はトリオ部門でも審査員していて直接指導はないけれど、プロデューサーとして弟子入りした私は月光花の全権を任されている。


それからみんなは誹謗中傷に負けずに世界中のアイドルファンに清き魂を解放した。


しかし会場やインターネットはしばらく沈黙してしまい様子がおかしくなった…。


「あれ…?」


「私たち…失敗したのかな…?」


「いや…よく見るんだ…。」


「うおおおおおおおおおおおおおっ!」


「京都にはこんなすごい子たちがいるんだ!」


「月光花ー!」


「感動したぞ!月光花最高ー!」


「どうやら批判していた人々を黙らせたようね。」


「同時に私たちの魅力に気付かれた他のファンの皆さまも虜にしたのでございますね。」


「やった…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「さぁはな、あそこで泣いているヒメギクに抱きつこうよ!」


「うん!みんなー!本当にありがとうー!」


「花柳さんはいい逸材の子たちを持ったな。」


「はい。和のテイストはいくつも見てきましたし作ってきましたが、ここまで純和物で来るのは月ノ姫以来ですね。そしてその月ノ姫を軽々と越えそして海外を中心に人気を得ましたね。」


「僕がプロデュースするSBY48にはない魅力を持っているね。ここまで得意なジャンルがあって羨ましいよ。」


「あの子たち…何かプラスエネルギーとは違う何かを感じるわ…。」


「どうしました黒田さん?」


「いいえ、何でもありません。アルコバレーノにとって最高のライバルを持って誇らしく思います。」


インターネットでは海外のコメントが多く寄せられ、月光花のパフォーマンスは成功に収めた。


審査員の点数は98点となりシンデレラロードの97点を越えて暫定トップとなった。



月光花の次であるSBY48の出番になり、優勝候補で世界一のアイドルグループの番だからファンのみんなのボルテージは最高を越えていた。


「さぁみんな、今までの集大成をここで出そう!」


「ええ、もちろんよ!」


「よーし!オレも興奮してきたよ!」


「うん…頑張ろうね…!」


「エリスも輝いたのでワタシも頑張るよ!」


「ショータイムはこれからのようね!」


「今日はあいつのためだけじゃなくて…みんなのために歌うよ!」


「日菜子ちゃんの幼馴染みって秋山プロデューサーの弟子になったんだよね?」


「うん!作曲をプロ目線で教わって、今日の新曲で勝負曲を作ってくれたんだ!」


「それじゃあ負けられないわね!」


「それに私たちにはユメノチカラがあるわ!それじゃあ行くわよ!」


「待って!センターじゃないみんなも総選挙で残念だったみんなも…今日は全員がセンターになってファンのみんなを盛り上げようね!SBY!」


「48!」


王者の貫禄溢れる圧倒的人数をリードする前田あかりは、元々アイドルどころか芸能界の経験がなく普通の家庭で育ってきた。


それがたくさん努力をして神7の永遠のセンターになるまでに大きくなった。


元天才子役の大島結衣、元スクールアイドルの篠田日菜子、元ネットアイドルの渡辺麻友美、元読者モデルの板野麻里奈、元ストリートダンサーの高橋ひかり、そして元ガールズバンドギターの柏木エマという芸歴のある子たちを追い抜いて、驕ることなく努力を続けて最高の王者を作り上げた。


最近は小嶋萌仁香という元地下アイドルの新星も加入してより輝きを増した。


永遠のセンターであり秋山拓也プロデューサーの一人娘の秋山加奈子はもうアイドルを引退していて父親の代わりにプロデューサーを目指して旅ををしているらしい。


結果は99点と超高得点で月光花の金メダルはここで途絶えてしまった。


そして最後の出場者であるアルコバレーノの番になった。


「みんな凄いよ…!ボクたちこんな凄い子たちと競い合うんだね!」


「私、普段は冷静だって言われるけれど…こんなの見せられて燃えないはずがないわ。」


「早くファンのみんなの笑顔が見たい!もう勝ち負けなんてどうでもいいよね♪」


「そうだな!私たちは希望を導く存在である!」


「よっしゃあ!燃えてきたぜ!」


「さくらさん!いつものあれ、やりましょう!」


「うん!希望を導く7つの光!輝け!」


「アルコバレーノ!」


「さぁここで最後の出場者になります!」


「えーーーーー!」


「では最後の大取り、アルコバレーノです!」


アルコバレーノはこれほどにない自信作で最後の大取りを務める。


2曲目までは月光花とSBY48と同じくらいの盛り上がりを見せる。


ところが…3曲目で審査員もファンのみんなも…出演者の私たちやスタッフでさえ知らされていないアドリブをしてきた。


本来はシンプルな振り付けに日本語の歌詞なのに手話を取り入れた振り付けと世界に発信するために英語の歌詞で歌い始めた。


あまりのパフォーマンスに私は驚愕し、みんなはもう勝てないと悟ったのか涙を流して抱き合ったり背中を叩いたりして慰め合った。


そして…


「アルコバレーノ!アルコバレーノ!アルコバレーノ!」


「これは…その…言葉に出来ないですね…!審査員の皆さん!」


「こんな感動を見るのははじめてだよ…!ワシは長年アイドルを追いかけてきたが…涙が止まらん…!」


「これが僕たちが追い求めていたアイドル像…!負けたよ…アルコバレーノ…!」


「音楽は可能性を無限大にするものです…。そう東光学園の教え子に教えたつもりですが…私もまだまだ学ぶ必要がありますね…。」


「あの子たちのプラスエネルギーがここまで大きくなって…世界中に愛を届けられるほどの魔法…!」


「さくら…成長したわね…。あの子も…最高のお友達が出来て…幸せよね…。お母さん…年甲斐もなく泣いちゃったわ…。」


「みんな!ありがとう!」


そう言って満面の笑みを浮かべてアルコバレーノはステージから退場した。


悔しいけど…アルコバレーノには敵わないと痛感した私たちはアルコバレーノの感動にただ悔し涙を流すだけだった。


スマイルング娘。の96点、シンデレラロードの97点、私たち月光花の98点、SBY48の99点を超えるには満点しかない状況で、彼女たちの得点は…


「アルコバレーノの得点は…100点満点!ということは…文句なしで優勝です!」


「やった…!やったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


優勝が決まった瞬間にアルコバレーノのみんなは喜びを分かち合って抱き合い、そして嬉しさのあまりに大きく泣いた。


SBY48の空気はあまりのショックに48人が全員で悔し涙を流し、シンデレラロードの9人はやりきったから悔いはないと言いつつも悔しそうだった。


月光花のみんなは…


「悔しい…こんなに差をつけられて悔しい…。」


「アルコバレーノ…確か来年の3月に卒業解散ライブやるんだよね…。」


「有終の美ということでございますか…。」


「これは敵わないね…。」


「そのようだな…私たちが負けて当然か…。」


「また彼女に一歩リードされましたね…。わかばさん…?」


「おめでとうございます…アルコバレーノの皆さん。最後のパフォーマンス素敵でした。もう来年以降は一緒に競い合えないのを寂しく思いますが、皆さんの進路がいい結果として進める事を祈るわ。」


「わかばちゃん…ありがとうございます。月光花さんも来月から世界ツアーでしたね。頑張ってください。」


「ええ…ありがとう。4か月間の世界ツアー頑張るわ。4年後は必ずリベンジを果たし、アルコバレーノの偉大な記録を塗り替えるわ。さぁみんな、表彰式よ。プロデューサー代理のヒメギクも表彰台に上がりましょう。」


「わかばさん…。リーダーのわかばさんの言う通りだよ。悔しい気持ちは私も同じ、私ももっとプロデューサーとしてしっかりするから最後までファンの前では笑顔でいよう。それに…来月から始まる世界ツアー20地域が待ってるから切り替えよう。さぁ行こう。」


「うん!」


こうしてワールドアイドルオリンピックが閉幕しアルコバレーノの優勝で締めくくった。


アルコバレーノは桃井さくら以外の子がアイドルを引退してそれぞれの本当の夢だった進路へ進む。


一方の私たち月光花は日本の東京からスタートし、ロサンゼルス→ニューヨーク→サンパウロ→シドニー→ヨハネスブルク→ロンドン→パリ→モスクワ→イスタンブール→ドバイ→デリー→ムンバイ→バンコク→ジャカルタ→台北→香港→上海→ソウルを経て大阪でゴールを迎える。


4ヶ月に渡る16か国での20地域での世界一周ツアーライブに向けて私たちは切り替えて準備を進めるのでした。


つづく!

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