第115話 再会
ワールドアイドルオリンピックのトリオ部門を終えて私たちはグループ部門の準備を進める。
出場者は沖田つかさと日野鈴香率いるアフタースクールズ、音原エリーゼ率いる聖フォルテ音楽大学付属スクールアイドル部、はなたちの姉弟子である美月輝夜がいる東光学園アイドル部選抜、王政復古を目指すスマイリング娘。、世界で最も人気のあるSBY48、私たちにとってのライバルであるアルコバレーノ、そして謎のグループのシンデレラロードがライバルになった。
月光花は6番手で私は花柳さんの代理プロデューサーとしてみんなを指揮する。
「ついにここまで来たね。他のみんなも緊張していると思うけど、優勝して世間の評判を見返そう。」
「もちろんだよ。」
「審査員がアルコバレーノの総合プロデューサーの黒田純子さん、SBY48のプロデューサーの秋山拓也さん、大御所アイドル評論家の歌川夢丸さん、世界的天才音楽家の滝川留美さん、そしてチェリーブロッサムズの桃井花恋さんだからね。豪華な審査員だよね。」
「緊張してきた…。」
「はな、大丈夫?」
「うーん…どうだろう…。」
「まずは思いきり息を吐いてください。すると勝手に息を吸います。自然に深呼吸が出来ますよ。」
「はぁ~…すぅ…。」
「治まったでございますか?」
「少しだけ治まったかも…。」
「大丈夫ですか?」
「あなたは…美月輝夜さん!?」
「うう…もっと緊張してきた…。」
「同い年で私がいた月ノ姫よりも人気になり、花柳先生のご指導も順調で嬉しいです。もうあの時のメンバーはアイドルを続けず普通の女の子になりましたが、私はアイドルへの未練を絶ち切れずにアマチュアからやり直し、そしてこの名門校のスクールアイドルになりました。一度月光花の皆さんとお会いしてみたかったので嬉しく思います。」
「いやぁ…私たちも光栄ですよ!元・月ノ姫のセンターとお話しできるんですから!」
「うふふ。それではお互いにいいパフォーマンスをしましょうね。」
「はい!」
「それでは皆さん!もうすぐ開演します!最初のアフタースクールズさん準備お願いします!」
「はい!」
「それじゃあリーダーの鈴香、いつもの掛け声いこうか。」
「オーケー!みんな!放課後はー…」
「フリーダム!」
「私たちアフタースクールズは…」
「幼馴染み!」
「いつも心はひとつ!いくよ!」
「イエーイ!」
「ではトップバッターは…メンバーの5人、日野鈴香、沖田つかさ、加藤恵美、諸星ひかる、そして早乙女レナは幼稚園から王政大学までずっと一緒!軽音楽部のバンドからアイドルに転向し、ブレイクを果たした新生アイドルグループ…アフタースクールズです!」
沖田つかさと日野鈴香は昨日と同じパフォーマンスを、諸星ひかるの天真爛漫な笑顔を、加藤恵美の小悪魔的なツンデレスタイルを、そして顔出しNGでタブレット風のボードを外して本気度を表現した。
幼稚園の頃からずっと一緒で大学はそれぞれ別々になるけれどアイドルバンドとしては活動を続けるという約束を交わしていて不滅の友情を誓い合ういいパフォーマンスだった。
次の音原エリーゼ率いる聖フォルテ音楽大学付属女学院スクールアイドル部はエリーゼが圧倒的センターのオーラをまとい絶対女王制の中で荘厳な雰囲気を出した。
生のオルガンが会場に響き渡りアカペラで歌うなど音楽大学らしさも出していた。
そしてついに美月輝夜さんの出番が回った。
「では月光花の皆さん、東光学園アイドル部選抜の層の厚さをご覧ください。月ノ姫の時よりも進化した私にも注目ですよ。」
「ええ、期待しているわ。同い年としてのライバルであり姉弟子でもあるあなたのパフォーマンス、見せてちょうだい。」
美月さんは最初の立ち位置こそセンターだったものの他のメンバーをあえてセンターに全員立たせて自分だけが実力者じゃないと見せつけ、東光学園という東日本の超グローバルな名門校らしい層の厚さを思い知った。
中には外国人留学生もいて9人ながら綺麗なフォーメーションで完成度の高いパフォーマンスをした。
それにしても…次のシンデレラロードって一体誰なんだろう…?
「次はシンデレラロードか。」
「今まで顔出しNGでブロックの審査員しか公表されていないそうだね。」
「謎に包まれたアイドルグループでございますね…。」
「きっとダークホースになるに違いないね。」
「あら、アルコバレーノの皆さんにも言いましたが全く知らないというわけではございませんのよ?」
「そのお声は…灰崎きららさん!?」
「ええっ!?灰崎って…高飛車きららじゃないの!?」
「実はあれから連絡を取ってまして、最近灰崎記者と義理の姉妹になられたそうです。」
「へぇ…そうなんだ。それとその8人の女の子は…?」
「鷺宮エリス。イギリスでロックバンドやってた。」
「西園寺ロクサーヌよ。フランスでモデルやってたの。」
「松元エミリだよ。ブラジルのスラム街出身のダンサーだよ。」
「夢大路カノン。堕天使の私に跪くがいい…なんてね。ドイツのソプラノ歌手です。」
「キャシー・ナオミ。これでもパパは米軍で働いているんだ。」
「佐々木舞子と申します。同じ和のアイドルに出会えて光栄です。」
「ユウ・リンリン。中華街でラーメン屋やってるよ。」
「神田ほたるよ。あなたに会うのははじめてね、紅葉もみじさん。」
「あなたがきららさんが仰った幼なじみですね。お会いするのははじめましてです、文通以来ですね。」
「あれから日本を追い出されてロシアで隠居していたら親の不正から自由の身になったきららからいきなり連絡が来てアイドルやらないかって…ビックリしたのよ?でももう一度会えてよかった。ここのみんなは人生で大きな挫折や不運の中で灰崎アスカさんのスパルタの下で輝いた成り上がりグループよ。」
「そしてわたくしも自ら灰を被ってようやく本当の実力でこの大舞台に立ちましたわ。紅葉もみじ、これでアルコバレーノ同様に正々堂々と戦えますわ。」
「望むところです。灰崎記者の義妹になられたその実力を見せてください。」
「もみじちゃんがあんなに燃えるなんて…。」
「アルコバレーノの紫吹ゆかり並みに意識しているね。」
「自ら灰をかぶり生まれ変わったわたくしを…アイドルに憧れて諦めた中でどん底から成り上がった彼女たちをご堪能くださいまし!」
「はい!きらら様!」
「もうその堅苦しいのはやめましょうって言ったはずでしたのに…ふふっ、この際だからもういいですわ。それじゃあ行きましてよ!」
「はい!」
シンデレラロードというダークホースは私たちの知らないところで灰を被ったまま厳しいレッスンを積んで実戦を重ねつつ地道に活動を続けてようやくプロと対等になれるほどの実力を得ていた。
前まで高飛車で誰にでも傲慢な態度だったきららの面影は全くなくなり、もみじの知っている本当の姿である負けず嫌いで努力家な少女だった。
灰崎きららはメンバーを引きたてつつも最後は自分をセンターとして際立たせ、いい意味で自分を中心にグループを引き出していた。
前は自分さえよければすべていいという悪い意味での自分中心だったけど、今は自分がしっかり先導してみんなと一緒にトップになろうという革命児のようなリーダーシップを持ついい自分中心になっていた。
とくに佐々木舞子はニュースでもやっていたけれど歌舞伎俳優のお父さんが亡くなって以降はお母さんの家である極道に育てられたという異色の経歴があった。
そんなシンデレラたちのパフォーマンスに後のみんなは委縮し始めた。
つづく!