第112話 開幕
~ここからほぼずっと焔間ヒメギクside~
月光花のみんなはそれぞれ順調に仕事をこなし、ワールドアイドルオリンピックに出場すると京都中で噂になり話題を呼んでいた。
花柳先生は満足することなく彼女たちをプロデュースし続け私は妖魔大王としてでなく一人のファンとして見守り続けた。
そして秋の10月になり、いつの間にかエントリーしていた花柳さんによって結果発表の通知が届いた。
「では皆の衆、よくぞ集まった。花柳文化劇団を創設以来の快進撃をそなたたちはし続けた。そしてついにワールドアイドルオリンピックの結果発表の通知が来た。月光花の書類選考は…無事合格だ。応募数は元々は日本のアイドルのみだったが世界中でうちの国もと名乗り出て圧倒的応募数になった。その数はなんと…7万通だ。」
「多っ!?」
「世界中にアイドルがこれほどいるということか…。」
「ということは私たちは7万のアイドルから選ばれたということだね。」
「その内のソロ部門、デュエット部門、トリオ部門、そして4人以上のグループ部門とあるから実質我々月光花のグループ部門は応募だけで1万7千グループからの応募だ。その中にはローカルやスクールアイドル、ネットアイドルにコスプレ団体などもいるのだ。その中に選ばれたのだから誇りに思うとよい。それから我々月光花には予選ブロックというものがある。月光花の予選ブロックは8つのうち…Hブロックだ。某は他のブロックの審査員に選ばれたので同行は出来ぬ。そこで焔間ヒメギクさんに代理同行をしてもらう。ちなみに会場は…」
Aブロック アメリカ・ニューヨーク
Bブロック イギリス・ロンドン
Cブロック オーストラリア・シドニー
Dブロック アメリカ・ロサンゼルス
Eブロック 中国・上海
Fブロック インド・ムンバイ
Gブロック ブラジル・リオデジャネイロ
Hブロック 韓国・ソウル←ここ
決勝ブロック 日本・東京
「となる。同じグループには…」
月光花・日本
UMD48・日本
SOUL Lady・韓国
Honey rush・イタリア
Siberian lucky・ロシア
Blue Mariners・サモア
Savannah・ケニア
come'n baby USA・アメリカ
「うわ…あのUMD48さんがいるのかぁ…。」
「憧れだった彼女たちと戦うのでございますね…。」
「だけどいずれは越えなければならない壁だ。戦わなければファンに申し訳がないだろう。」
「とくに優勝候補はUMD48だけでなくSOUL Ladyがいるのね。あそこは韓国でも国民的スターと聞いたことあるわ。」
「ハンスさんが応援していたグループでございますね。確か恋仲と出会ったのはこのグループだと聞いたでございます。」
「みんな…。」
「でも大丈夫。私たちはこれよりも厳しくて死を覚悟した戦を乗り越えてきた。だから私たちはどんな困難でも乗り越えられると思う。だから怖がらずに頑張ろう。」
「はな…そうね。リーダーの私が怖がってたらみんな不安になるわね。さぁみんな、そうとわかったらいくわよ!」
「おー!」
それからすぐにみんなははなの檄によって気持ちを取り戻し、私たちは韓国のソウルへ向かった。
そこには空港で制服の着物に感動した現地ファンのみんなが日韓の旗を振ってお出迎えをしてくれた。
それからすぐに月光花の時より大きな歓声が飛んだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「UMD48だぁぁぁぁぁぁっ!」
「美穂ちゃーーーーーんっ!」
「さすが日本一のローカルアイドル…。」
「私たちより彼女たちの方が人気のようだな。」
「無理もありません。彼女たちより経験が浅い私たちでは観光ツアーをこなしていませんから。」
「ただそれを言い訳に逃げていては勝利はないのでございますよ。いつだって勝利に不思議な勝利あり。負けに不思議な負けがないと野球の名将も仰ったのでございます。」
「ふふっ。私も彼の事は知っているよ。」
「るりって物知りなのだな。私も一つ勉強になったぞ。」
「花柳先生からいただいた言葉でございますよ。」
「みんなの応援は私に任せて。妖魔の力に頼らなくてもみんななら予選を通過できるって信じているから。」
「ありがとう、ヒメギクちゃん。じゃあ会場に行こう。」
こうしてソウルにある会場に向かい、私たちはすぐに中に入って控え室に入る。
私は花柳さんの代理プロデューサーとして手続きを済ませてDブロックで審査員をしている彼の代わりは務まるか不安だけどみんなの顔つきを見てその心配はいらなかった。
「さぁ始まりましたワールドアイドルオリンピックHブロック予選!今回の優勝候補はUMD48とSOUL Ladyです!京都の英雄の月光花は下評判ではギリギリ負けるという予想がされています!では早速出場アイドルに入場してもらいましょう!」
「随分ナメられているね…!」
「絶対見返してみせます!」
「もみじがいつになく燃えているな。私も悔しさで見返してみせるぞ。」
「じゃあみんな!頑張ろう!」
「うん!」
「お久しぶりです、月光花の皆さん。」
「白石さん!」
「指原さんに小泉さんも!」
「私たちUMD48のトップ3とはいえこの状況はとても緊張します。でも皆さんが出る上に同じブロックと聞いて一度全力でぶつかりたいと思ってました。」
「そしてその夢がようやく叶い、私たちはあなたたちと対等に戦えることを誇りに思います。」
「さぁ私たちUMD48のパフォーマンスを見てください。先頭として意地を見せますよ。」
こうしてUMD48さんは48人を連れて圧倒的パフォーマンスを見せつけた。
白石美穂さん、指原文乃さん、そして小泉るいかさんの3トップが先導して他の45人を率いてきた。
歴史も長く西日本の王者としての貫禄を見せつけられた。
「やっぱりすごいね…。」
「95点ですか…。これが私たちの越えるべき壁ですね…。」
「戦を乗り越えた私たちなら大丈夫だ。自信を持っていこうじゃないか。」
「つばきの言う通りだね。私たちは2番手だから基準になるけど私たちならいいパフォーマンスが出来ると思うよ。」
「はな、いつもの掛け声やろうよ!」
「うん!日ノ本に咲く黒き花!」
「「夜空を灯す淡い月!」」
「月光花!」
「「いざ参る!」」
「さぁみんな!私は花柳さんの代わりに見守ってるから頑張って!」
「うん!」
予選の条件である新曲で韓国のファンを魅了し、新曲の悲しみを背負った侍が負けられない戦で覚悟を決める曲を歌う。
みんなは最大のやれる事をして審査員を驚かせていた。
衣装の袴姿で踊る事は前例になく動きづらいはずなのに彼女たちは軽やかに躍ってみせた。
その結果…審査員も文句なしの満点を叩き出して後続のグループにプレッシャーをかけた。
それからSOUL Ladyなど有力なグループも続いたけれど…月光花のプレッシャーに負けて思うようにパフォーマンスが出来ず90点台を出す事は叶わなかった。
そしてついにファン投票が行われ、最後の結果発表のときが来た。
「結果発表です!審査員票では月光花が文句なしの100点満点でしたがファン投票では…UMD48…14万票!月光花…20万票です!SOUL Ladyは…8万票!他の後続も10万票に届かず!ということは…月光花が優勝です!」
「やったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「嘘…私たちが…?」
「ほらはな!これは夢じゃないのよ!もっと喜びましょう!」
「やった…夢みたい…!うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「はな、泣きすぎだよー?ほら、ハンカチをあげる。」
「ありがとう…ひまわりちゃん…。」
「……完敗です。あなたたちは私たちをいつの間にか越えるほどの存在になりました。西日本の王者は月光花に渡す事になりました。ですが…4年後は絶対にリベンジを誓います。」
「白石さん…。」
「私たちトップ3はこの大会で引退しますが、タレント自体は続けていきます。アイドルを卒業してもライバルであることには変わりません。悔しいですが…今のあなた方は私たちより世界の舞台に立つのが相応しいです。」
「UMD48の無念をあなたたちに託します…。どうか…金メダルを取ってください…。」
「皆さん…ありがとうございます!皆さんの分まで頑張ります!」
「少しファンが心配ね…何かあった時のためにSNSをチェックしよう…。」
「指原さん…?」
「何でもありません。月光花の皆さん、頑張ってください。」
「はい!」
「ホスト国として精一杯やりましたが敵いませんでした。あなたたちの気持ちの方が上だと痛感しました。頑張ってください。」
「Honey rushは結成して間もない中で出られて誇りに思います。あなた方のご健闘を祈っているよ。」
「厳しい冬を乗り越えた私たちでさえ勝てなかった月光花の生活が気になるわ。普段どんなレッスンを積んだのか今度教えてね。」
「海の向こうで応援しているよ。シヴァタウで応援するね。」
「月光花!月光花!月光花!」
「アメリカのアイドルはUSAコールのリズムで応援するんだなぁ。ケニアらしい応援は…ないから可愛いのでギュっとする!」
「みんな…ありがとうございます!」
こうしてワールドアイドルオリンピックHブロック予選は終了し、月光花は満点と最多投票で選ばれる。
決勝は日本の武道館でグループ部門の審査員は豪華なメンバーになると聞く。
みんなはそのプレッシャーを乗り越え、西日本の王者であるUMD48さんを越える事が出来た。
後は本番まで気を抜かずに私がしっかり見守ろう。
つづく!