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第109話 甲子園決勝

~春日はなside~


私は戦のリフレッシュのために親同士とはいえ婚約者である稲田大輝くんの応援に来ています。


彼が在学している平安館学院の野球部は京都で21年連続甲子園出場を果たし、ついに21年ぶりの甲子園決勝進出となった。


稲田くんは2年生ながら4番を任されここぞという時にいつも長打を放って点を取っていた。


そんな決勝戦当日、月光花のみんなは仕事で来られなかったけれど私だけ休みで甲子園に駆け付けた。


もちろん…巫女の仲間もヒメギクちゃんも一緒だよ。


「はな、彼の勇姿をよく見るんだよ。」


「う、うん…。」


「やっぱり緊張する?」


「正直…自分の事のように緊張してる…。まだ結婚を意識してないけど…やっぱり知ってる人が大舞台に立って頑張ってるところを見るのは…。」


「まぁ無理もないわい。ワシも平安館学院時代の若い頃は後輩が甲子園に出て自分の事のように緊張したからの。ワシが叶わなかった甲子園じゃから尚更な。」


「とにかく母校が勝利する事を信じましょう。」


「うん!」


~ベンチ~


「春日さん…来てくれたんだ…。俺のためだけじゃなく学校のために…。彼女にいいところ見せようとか考えちゃダメだ…。俺に出来る事をすればいいだけだ…。」


「おっ、婚約者が見に来たから緊張しているな?」


「いえ、そんなんじゃないですよ!?」


「大手の神社の子は辛いねぇ。俺も彼女と結婚出来るかなぁ。」


「キャプテンなら出来ますよ。あなたが女性に紳士的なのは知ってますから。それに…監督が入院している間は俺たちを率いてきたじゃないですか。」


「まぁ…そうだな。稲田、お前のチャンスメイクを期待しているぞ。俺も最後の登板だから頑張るよ。」


「はい!」


「では両チーム整列!」


「さぁ試合開始だ!いくぞー!」


「おー!」


~アルプス~


「相手は国立東光学園か…。東の東光、西の平安館と東平戦だな。」


「あそこは東西の王者同士で永遠のライバルだったわね。」


「そんなに長い因縁があるの?」


「世間で呼ばれているだけじゃよ。武道では今だに負けなしじゃが野球では対等なライバルなんじゃ。」


「へぇ~…。」


相手の国立東光学園は何もかもが名門でとても開放感のある自由な代わりに自己責任が生徒や職員、卒業生や保護者問わず重すぎるほど圧し掛かる学校で、国営化する前は私立だった超名門校だ。


一方の平安館学院は武道ではその学校に負けたことがないけれど野球では五分五分の勝敗となっていて、関ケ原の戦いの東軍と西軍、覇世田・帝応義塾の覇帝戦の名残で東平戦と呼ばれている。


稲田くんは4番ライトでスタメンに選ばれ、学校の応援指導部が女子はミニ浴衣男子はたすき掛けをつけた袴衣装で応援する。


西暦時代では禁止されていた和太鼓も今は許されていて、普段は吹奏楽部の演奏だけど7回にのみ和太鼓と篠笛での応援スタイルとなっている。


最初の攻撃は東光学園で、1番バッターの岡崎さんは今大会一の出塁率と盗塁成功率でフォアボールを出したくない人が相手になった。


エースでキャプテンの伏見先輩はバッテリーを組んでいる中村先輩と息の合ったリードで次々と三振を奪っていった。


一方の相手の東光学園もピッチャーのアメリカ人留学生のエレン・ワシントンさんが動くストレートで平安館打線を崩していった。


「7回で未だ0対0…厳しい戦いだ…。」


「諸君!我々はまだ点を取れていない!だがそれは相手も同じ事だ!同じ条件の中で我々が勝利するには!諸君らの応援にかかっている!我々の気合いと根性を!ここで見せる!」


「おおーーーー!」


「いくぞ!」


「おおーーーーーっ!?」


「えっ…応援団って自ら水をかけるの!?」


「それが伝統じゃよ。負けていたり点が取れなかったらああやって根性を見せるんじゃよ。」


「妖魔界でも平安館学院の応援指導部は有名です。あそこまで形を変えてでも伝統を受け継ぐ精神はそうそうないですよ。普通なら形を変えないで伝統を無理矢理続けさせようとしているのに。」


「いつまでも同じやり方が通用するわけじゃないからね。形を残しつつ生まれ変わる事が伝統を繋ぐコツだよ。平安館はただ厳しいだけじゃなかっただろう?」


「は、はい。確かにそうですね。」


「バンカラ精神、それが平安館のいいところなのよ。ヒメギクさんもいい学校に入ったわね。」


「お母さん…。ありがとうございます。それと…はながさっきから無言で祈っていますが…」


「仕方ないなぁ…。はな、祈るのはいいけど水を飲みなさい。お前が倒れたら彼は集中出来ないよ。」


「あ…ごめん…。ありがとう…。」


「やっぱり意識してないとはいえ、彼の事が心の奥では好きなのかもしれないね…。」


「向こうの親御さんも同じ事を言ってたわ…。なんだかんだ両想いなのね…。」


「春日家もこれで安泰じゃの…。」


「はな…。」


私は試合に夢中で飲食を忘れ、お父さんに心配されて氷を渡されて我に返った。


稲田くんもかなり緊張していて、私はいつの間にか彼の事しか考えられなくなった。


この気持ちは何なんだろう…もしかして私…稲田くんの事が好きになっていったのかな…。


試合は9回ウラ2アウトになり、後アウトひとつで延長戦になるところで稲田くんの打席が回った。


「マジか…俺が打てばサヨナラなんだよな…。でもチームバッティングしなきゃ…。」


「稲田…お前…。」


「中村、俺に任せろ。」


「悪いな伏見…お前に最後まで頼りきりで。」


「いいんだ。それよりも稲田、そんな窮屈な考えするなんてらしくないぞ。お前は今まで通り堂々と打席に立って塁に出ればいいんだよ。それと…打ちたかったんだろ?ホームランを。人生ではじめてのホームランを狙ってみなよ。」


「キャプテン…わかりました!いざ!」


「い・な・だ!い・な・だ!」


「稲田くん…!」


「はな…。」


「あ…追い込まれた…!」


「ちょっと行ってくる!」


「はな!待ちなさい!」


「お母さん待ってください!行かせてあげてください!」


「ヒメギクさん…なるほどね、わかったわ!」


「ちょっと春日さん!いくらアイドルでも前に出ては…」


「頑張って!大輝くんっ!!」


「春日さん…。」


私ははじめて名前で叫び、大輝くんの事が本当は好きだって気持ちに気付いた。


彼はいつも私の事を気にかけてくれて、ザイマ一族との戦いでも真っ先に駆けつけて体を支えてくれた。


ホロビノミコと戦う時も命を案じて守ってくれた。


彼とならきっと上手くやっていけると信じ、私は勇気を出して応援した。


「はな…お前のその声…無駄にはしない!さぁ来い!」


「いいね、その楽しそうな顔…。俺も楽しくなってきたが…ここで延長戦に入ってアメリカに思い出を持ち帰るんだ!うおおおおっ!」


「ストレート…いや、ここはムービングだ!てぇいっ!」


「これはいったぞ!まだ伸びる!まだ伸びるぞ!切れそうだけどどうだ…入ったぁぁぁぁぁぁ!平安館学院!70年ぶりの甲子園制覇だぁぁぁぁぁぁ!」


「やった…!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


「負けたよ…悔しいけどいい勝負だった。また東平戦やろう。」


「エレン…ああ!君はまだ1年だ、来年もここで会おう!」


私の大声がきっかけで大輝くんはライト線際のポールに当たってサヨナラホームランを打ち、平安館学院を70年ぶりの優勝に導いた。


ヒーローインタビューでは自分だけでなく今まで試合に出たチームメイトの名前を呼んでは呼び出して肩を組んだり先輩を立てたりと礼儀正しさを見せていた。


そして野球部を引退したら大学野球で最後になり神社の神職をすることを公言して世間は大輝君を応援し始めた。


バスに乗って宿泊地に戻る前に私はLINE(リーネ)で勇気を出して告白し、無事に本格的に許婚として交際する事になった。


もちろん学校の規則である節度のある交際で学校側も恋愛禁止ではないので問題ないと公言した。


ただ学校の敷地で会うことはあまりないけれど、休み時間に会って一緒にご飯を食べたりして過ごしました。


つづく!

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