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第10話 悲しい教育

魔物になってしまった苦手な恩師のために、私は武器であるなぎなたを構え、いつ襲われてもいい様に警戒した。


魔物が発生するには、どうやらザイマ一族が人間の悪しき心に反応させ、罪魔の力で魂を獄魔として生まれ変わらせると春日から聞いた。


浄化するには人間にも宿っている妖怪の力である妖魔の力で浄化して魂に戻し、穴の開いたその人の胸に送りだすしかないそうだ。


「セイト…ウルサイ…ナマイキ…!コンナンデハ…シャカイデ…ヤッテイケナイ…!」


「どうやら古い価値観のまま育ってしまい、何か闇を抱えてるようだな…。ならば、その闇を祓ってみせる!はぁぁぁぁぁっ!」


「クッ…!」


「あんなにカッコいい冬野先輩、はじめて見た…!」


「これだ…これこそ凛々しくてカッコいい冬野先輩だ…!先輩!ファイトー!」


「コシャクナガキメ!オレニサカラウトドウナルカ…オモイシラセテヤル!」


「貴様も今までの教育が間違っていることを叩き直してやるさ!覚悟するがいい!やぁっ!」


「グッ…!」


「冬野先輩!あの魔物を倒してください!」


「藤野…うむ!鬼瓦先生…この技を受けて考え直すがいい!雪月氷晶斬(せつげつひょうしょうざん)!」


「オレノ…キョウイク…!」


こうして鬼瓦先生の魂は浄化され、元の身体へと戻っていった。


私は不思議な事に右手の痺れも体の震えもなく、守れるものを守れたのだなと成長を実感した。


もし今の気持ちのままならば、もう一度部活を再入部してもいいだろう。


藤野が意識を確認すると、鬼瓦先生は意識を取り戻し、何が起こったのかわからないという顔で私を睨んだ。


「冬野…貴様…!この俺に何をしたんだ…!」


「どうもしていません。ただ突然先生が意識を失い、突如現れた怪物と戦い、その怪物に勝利し、あなたは意識を取り戻したまでです。」


「そうか…。俺はやはり…間違っていたのかもな…。」


「え…?」


「俺の時の時代はこの学校はなぎなたが弱小でな、本当にスパルタ指導で強くなり、ようやく全国出場を果たしたんだ。そのスパルタ教育は暴力も含まれていて、恐怖政治こそ強くなる秘訣だと思い込み、もう一度この学校に栄誉を与えたいと教師を目指し、なぎなた部の顧問に選ばれたんだ。ところが俺のやり方や昔こうして強くなったスパルタ指導をしても一向に強くならず、生徒たちは俺の指示を聞かなくなったんだ。だがそれは生徒が甘い環境に慣れてしまったからだと思い、校長も俺の世代の先輩だから甘い環境を憂いていた。だが源のやつが一気に生徒の人気をかっさらい、俺はやはり焦っていたのだろう。昔はその方法が正しかったんだが…今の時代はもう時代遅れなのかな…?」


「ああ、正直言って…鬼瓦先生や校長の世代なら正しかったかもしれない。だが今その方法で指導すれば、ケガの原因にもなりますし、鬱になってなぎなたの競技人口にも影響が出ます。そして部でいざこざがあれば解決する方法も自分たちで考える事も出来ず、思考停止状態にもなりまねません。確かに多様性を悪い方向に行けば歯止めが効かなくなりますし、ルール無用すぎる勝手気ままな者も現れるでしょう。だから…古い価値観を大事にしつつ、新しい価値観を取り入れて最良の教育をなさる方がいいのではないかと私はそう思います。練習は昔並に厳しくても問題ありません。ただ心だけは…古いやり方で支配して部活マシーンになっては…私みたいにイップスになるでしょう。」


「そうか…冬野も高校に出てから成長したな…。もう少し早く…気が付けばよかったな…。」


「寺沢、そこにいるのだろう?そなたの応援がなければ、私は弱いまま逃げていたかもしれない。本当に礼を言う。」


「バレてましたか…。いいえ、またカッコいい冬野先輩を見れて、私も部長を頑張れる気がします。」


「そうか。今まで理不尽な指導で辛かったな。だがもう大丈夫だ。鬼瓦先生も心を入れ替える事だろう。」


「はい!」


こうして事件は解決し、鬼瓦先生は辞表を出して教職から去り、校長による教員へのパワハラ問題が公になって辞任した。


なぎなた部は顧問不在のため、しばらくアイドルの仕事は早上がりだが、源先生が復帰するまで私が指導する事になる。


その事を気にしていた花柳先生は、男子なぎなたの元プロ選手の人を派遣し、私の負担を軽くしてくれ、アイドルの稽古にも励めるようにしてくれた。


そして私の方は…もう一度なぎなたを始めるために高校の部に再入部し、再入部テストでは見事満点で合格、そのまま遅くなりながら再入部が認められた。


おまけに今まで以上に力がみなぎり、部の先輩方も私が全国のメンバー候補ではないかと期待をしてくれていた。


そして…その事を姉のつつじに連絡する。


「そう…なぎなたをもう一度始めたのね。」


「はい、姉さん。姉さんがアイドルを紹介したおかげで、一皮剥けて心も強くなりました。」


「よかった…。最近京都で物騒な事件が起こってるって聞いたから、少し不安だったけど、つばきは強く生きているのね。」


「姉さんもデビューして3年経つが、テレビアニメに出演したではないか。お互い頑張らねばならないな。」


「そうね。それにね…実は東京だけでなく関東全域に魔物が現れてるの。確か…アルコ何とかっていってね。その人たちが魔物と戦っているって目撃情報もあったの。」


「アルコ…何とか…?きっとその人たちは魔物と戦うヒーローなのだろう。姉さんも気を付けてくれ。」


「ええ、つばきも人妖神社が大炎上してから物騒だから死なないでね?」


「ああ。ではまた電話する。」


ケガしてイップスになった私をここまで心配し、アイドルを紹介した姉にはもはや頭が上がらない。


その姉もようやく役をもらえ、お互い第一歩を踏み出した。


だが関東にも魔物が現れているとなると、ザイマ一族の仕業であろうか…?


それともまた別の組織が破壊と混乱を招いているのか…?


気になるところではあるが、私は私に出来る事を精一杯こなすだけだ。


つづく!

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