第104話 開催決定~花見
七人将に任命された私たちは、何か特別な用事がない限り妖魔界へ赴くことはせず人間界でいつも通りの生活をする。
3月の卒業式を終えて4月に入り、晴れて女子大生になって白セーラー服を着て登校するるり先輩と、袴制服が変わって高等部に進学したヒメギクちゃんともみじちゃんと合流した。
るり先輩はあれからアイドルとしても大和撫子コンテストで入賞し、高校日本舞踊コンテストでもリベンジ優勝を果たした。
もみじちゃんも忍術部と剣道部の兼任で剣道部としてインターハイ優勝、忍術部では紅葉流の免許皆伝を許可される。
ひまわりちゃんも囲碁と将棋でプロの資格を取得、私も書道の特待生になり、わかば先輩の書いた小説「七つの大罪」が現代日本文学として芥川賞を受賞、さらにつばき先輩もなぎなたで部として全国優勝10連覇の貢献者となった。
そんなある日、花柳先生とお千代先生が私たちの学校に訪れ、校内放送で稽古場に来るよう言われてそこに行く。
「皆の衆、よくぞ集まった。これから某が重大な発表をする。そなたたちのこれまでの功績が認められ、ついに某の元に国際アイドル連合協会から連絡が来た。今年から開催するワールドアイドルオリンピックにそなたたちを招待するとの事だ。このコンクールは4年に一度開かれる。今年は新暦2020年という節目の年だ。世界平和記念にアイドルで平和を築き合おうということで開催が決まった。そなたたちは出場するか?」
「ええ…そんなに大きな大会なの…?」
「やったねはな!私たちも認められたんだよ!」
「ですが…ただ参加表明をするだけではございませんね…?」
「はい、その通りです。まずは書類選考オーディションで選ばれたアイドルが予選大会に出場できます。さらに言えばその予選大会は世界中から集まり、プロだけでなく有望なアマチュアアイドルとも戦わねばなりません。旦那様は審査員として選ばれ、あなたたちの直接指導は出来なくなりました。代わりに私があなたたちのプロデュースを致します。焔間さんはこれからも月光花のサポートに回ると言いました。出場するかしないかはあなたたち次第です。」
「そんなの…出るしかないわね!私たちにとって大きなチャンスよ!」
「もしかしたら彼女も…ならば私たちも出ざるを得ません!」
「こんなチャンスは滅多にないよ。出ないなんて選択したら後悔するかもね。」
「おそらくUMD48さんも出場することだろうが、いずれぶつかる壁だ。突破して私たちの存在をアピールしよう。」
「世界中に妖魔の力を魅せるときが来たのでございますね。こうなれば張り切るしかないでございます。」
「アイドルになる事が夢だったけど…今度は世界を相手に…。何か実感わかないなぁ…。」
「私も…みんなと一緒なら何でも出来る気がする…。花柳先生!私たち月光花は…ワールドアイドルオリンピックに出場します!お千代先生!ご指導よろしくお願いします!」
「わかりました。これからは今まで以上に厳しい稽古にしますよ。覚悟はよろしいのですね?」
「はい!」
「では旦那様、この子たちは私にお任せくださいまし。」
「心得た。では某は本部がある渋谷に向かう。そなたたちの健闘を祈っているぞ。」
こうしてワールドアイドルオリンピックに出場を決めた私たちは書類選考でライブの映像やプロモーションビデオ、さらにアイドルとしての履歴書や新曲音源などを国際アイドル連合協会に送る。
後は秋までその結果を待つだけだった。
それから私たちはそれぞれの仕事に入り、春を迎えた私たちは嵐山で花見をする。
トロッコに乗った私たちは美しい桜の景色を見渡し、小さな子どもたちは桜色の景色に興奮していた。
川のせせらぎの音も美しく響き、私たちは京都の平和を守ったんだと実感した。
花見の場所へ移動するとたくさんの人で賑わっていて、お酒を飲んだりカラオケしたり子どもたちはボール遊びするなどみんな楽しそうだった。
「さぁみんな!これからお花見を堪能するわよ!花柳先生夫妻が場所取りしてくれたんだから感謝しましょう!」
「花柳先生、お千代先生…まことに感謝いたします。」
「よい。今までそなたたちは頑張ってきたのだ。これは某たちからの褒美だ。成果を上げた者に褒美をやるのは当然の事だ。」
「花柳先生も…ホロビノミコまでの道のりを作っていただきありがとうございます!お千代先生って戦えたんですね!」
「これでもあらゆる武術を継承しているのですよ。旦那様は相撲だけでなく剣術も嗜んでいました。日本男児たるもの、剣も拳も扱えなくてはといつも仰いました。」
「ほえー…花柳先生夫妻に歴史ありだねぇ。」
「ひまわりちゃん…また失礼な事を…」
「まぁいいんじゃないかな。新たな一面を知れた事じゃないか。」
「すみれの言う通りだ。私たちはまだ先生方の事を知らないのだからいい機会ではないか。」
「うふふ。では皆さん…準備はよろしいでございますね?リーダーのわかばさんが幹事をやるでございます。」
「ええ。それじゃあ…私たちのザイマ一族との因縁やホロビノミコの討伐と…るり先輩の大学ともみじとヒメギクの高校進学をお祝いして…かんぱーい!」
「かんぱーい!」
わかば先輩の掛け声でジュースを乾杯し、花柳先生は持参したお酒で一杯を飲む。
このお酒は京都でも室町時代から続く超老舗のお酒で、世界一美味しい日本酒として世界に紹介されるほどのブランドものだった。
それを飲むということは私たちの無事がそれほど嬉しかったんだと思う。
飲み物を飲み終えた私たちはバーベキューを食べ、足りなかったらそれぞれ屋台で食べ物を買う。
私は桜餅を、ひまわりちゃんは焼きそばを、もみじちゃんは今川焼きを、すみれちゃんは水あめを、つばき先輩はフランクフルトを、わかば先輩はお好み焼きを、るり先輩は綿あめを、そしてヒメギクちゃんは今まで食べたかったと言っていたクレープを食べる。
屋台の店主さんも私たちの活躍を見ていたらしく、月光花が来るという情報だけで商売が大繁盛だと大喜びしていた。
そして花見でカラオケ大会があったので私たちは特別ゲストとして自分たちの曲を歌い、夕方になるまで楽しんだ。
そして夕方8時になって暗くなったけれど、夜桜も悪くはないだろうと花柳先生たちと一緒に散歩をする。
夜桜になると妖怪たちも本来の姿で酒を飲んだり人間と肩を組んで食事したりしていた。
私たちが来ているということでゴミはちゃんとゴミ箱にまたは自分で持ち帰ったりなどしていた。
ザイマ一族やホロビノミコの出来事以来、京都だけでなく日本…世界中で秩序が守られるようになった。
私たちがやってきたことは…きっと世界中のみんなに届いているのかもしれない。
つづく!