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第103話 七人将へ

ホロビノミコを討伐して八咫烏さまに日本を託された私たちは無事に全員退院し、いつもの日常へと戻った。


さっきまでホロビノミコに破壊されたはずの京都市街は妖魔の力によって完全に復興し、平安館も元の姿に戻っていた。


あれから1か月が経った今、中高生3年生や大学4年生、初等部6年生の卒業式が行われ、在校生である私たちは、高等部でるり先輩と中等部でもみじちゃんとヒメギクちゃんの卒業をお祝いして花柳先生の卒業祝いでお寿司を食べる。


そんな中、ヒメギクちゃんはまだ何か悩みがあるような顔をしていたので私はヒメギクちゃんに声をかけた。


「ねぇヒメギクちゃん。何か悩みでもあるの?せっかく中学を卒業したのに暗い顔してたらダメだよ?」


「うん、わかっているんだ。でも…ホロビノミコは確かに倒した。そして七人将の御霊(みたま)は輪廻を回って転生してしまった。本来ならすぐに輪廻を回るのにパパや先祖代々から七人将に任命され責務を果たした。ということは今は…」


「あ…。」


「そういえば七人将さんは皆生まれ変わるのでございましたね…。」


「となると妖魔大王を護衛する七人将は不在ということか。」


「そうなんです。あの時は絶対に負けられなかったから受け入れたけれど…後の事を考えるとちょっとリスクが高かったかなって。」


「そうですよね…。あの時は助けられましたが、もう彼らは私たちを助けてはくれません。そうなると新たな七人将を見つけるしかありませんね。」


「でもそんな逸材はどこにいるのかしら?あそこまで優秀な方たちの後を継ぐのはかなりのプレッシャーがあるはずよ。」


「あ、でも候補はいるんです。でもその人たちは過去の七人将を超えるほどの妖魔の力で、さらにホロビノミコを討伐する事が出来た。そしてその人たちはアイドルもやっていて、そしてそれぞれの家業も継がなければならない運命を背負っているんです。」


「それって私たちの事かい?」


「……正直、そうです。」


「じゃあ私たちが七人将候補って事?」


「あんなに多忙なのに、こんな責任重大な役目を負わせたくなくて…。だから卒業式の間、ずっとみんなの事を考えてた。このまま引き受けたとしても多忙さのあまりに壊れてしまうんじゃないかって…。」


「なるほど…そのような悩みをずっと一人で抱え込んでいたのだな。」


「確かに私たちが候補に選ばれたのは光栄な事だけど…先代の方々が凄かったから恐れ多いなぁ…。」


「そうね…あの時は戦いに夢中で後の事を考えてなかったのも問題ね。」


「それに私たちはアイドルでございます。生半可な気持ちで引き受ければ先代方に申し訳がつかないでございますね…。」


「あのね…私はこう思うんだ。アイドルやって妖魔使いを今まで兼任して、何度も京都どころか日本や世界を救ってきた。そこにはいろんな困難があった。でも私たちはみんなの声援でザイマ一族を追い詰め、そしてホロビノミコまで倒した。七人将さんは私たちが後を継いでもいいって思ったからこの世界を託したんだと思う。それに八咫烏さまも日本の事を頼んだよって言ってたし、これからもアイドルとして神話を受け継ぎ、七人将として今後人間と妖怪の架け橋になれたらって思うと、ちょっとワクワクしてきたんだ。」


「はな先輩…怖くないんですか?人間でなくなる可能性もあるんですよ?」


「それは…正直怖いよ?ただ前の七人将さんは人間のまま妖魔界に留まった。そう思うと不思議と怖いけど不安じゃない。私は元々人妖神社の子だから受け入れられるけど、みんなはそうじゃない。みんなさえよかったら、私はみんなとまた一緒に平和を守りたい。ダメ…かな…?」


「あの臆病で引っ込み思案のはながここまで覚悟を決めたんだ…。オッケー、じゃあ私も自分の運命を受け入れ七人将になるよ!幼なじみが責任を持ってやるのに、私が逃げるわけにはいかないよ!」


「私もはなの覚悟に心を打たれたよ。君みたいな子が一人で抱え込むくらいなら、私にだって責任はあるからね。それにこの妖魔の力のおかげでみんなと出会えたんだ。七人将になる事を拒否すれば、もう二度と会えないかもしれないからね。」


「わかった…私も七人将になろう。私もみんなと出会えたからイップスだったなぎなたとも向き合い、そして克服していった。この出会いは本当に感謝しても足りないくらいだ。恩返しになるかはわからないが、皆と共に七人将として平和を築きたい。」


「そうね。私もリーダーとしてメンバーだけに責任を負わせるわけにはいかないわ。私だってリーダーとしての責任もプライドも、もちろん覚悟だってずっと背負ったもの。今更逃げるだなんてカッコ悪いことなんてしないわ。」


「後輩の皆さまの決意…しかと受け取ったでございます。私も家元の立場でございますが、家元を兼任しても七人将としての役目を果たす事は可能でございます。先輩として皆さまと協力し、妖魔大王であるヒメギクさんを支えるでございます。」


「先輩方…私も決めました。最年少で頼りないかもしれませんが、私も紅葉流として自分に負けるわけにはいきません。七人将として妖魔界と人間界を見守り、そして今後の繁栄を見てみたいです。ヒメギクさん、もう一人で悩むことはないですよ?」


「みんな…いいんですか?人間でなくなるかもしれないのに…。」


「それでも家業を継いでアイドルを続ける事は出来るから。それに京都のみんなも受け入れてくれると思う。京都の人はみんな優しくて応援が温かいからね。」


「ありがとう…早速人妖神社の本社で七人将任命式を行うよ。春日家の皆さんに伝えるね。」


こうして私たち月光花は全員で七人将になる事を選び、ヒメギクちゃんの指導の下で任命式の準備をした。


両親は七人将になる事をとくに反対せず、むしろ神社の子として誇らしいと受け入れてくれた。


他のみんなも京都の英雄が決めた覚悟を邪魔するわけにはいかないと許されたみたいで、ヒメギクちゃんも安心したように溜息をついた。


人間だけでなく本来の姿になった妖怪のみんなも集まり、任命式は始まった。


「皆さん、妖魔大王の焔間ヒメギクです。先代の七人将さまは、先のホロビノミコとの戦で魂の寿命が尽き、輪廻の世界へと回って来世へと転生しました。私たちが入院している間、七人将は長らく不在のまま妖魔大王の私は月光花の皆さんと共に回復を待っていました。この七人将は妖魔界だけでなく人間界にも絶対に必要な存在です。七人将は両国にとって平和と繁栄を築くだけでなく、大罪を背負わせないように魂を潤す役目があります。その役目に最も相応しい逸材は…今ここに名を呼んで任命します。春日はなさん、日向ひまわりさん、藤野すみれさん、紅葉もみじさん、冬野つばきさん、常盤わかばさん、そして紺野るりさんです。妖魔大王として彼女たちを…新たな七人将に任命します。皆さん、こちらへどうぞ。」


ヒメギクちゃんに呼ばれた私たちは一列に並んで礼をし、みんなに温かい声援を送られて手を振ったりした。


何か演説をすることでもなく、ただみんなの歓声に応えるだけでいいと言われたけれど、やっぱり私たちはアイドルなので新曲であるみんなへの感謝の歌をゲリラライブで歌った。


七人将任命式は世界中で話題になり、月光花はさらなる飛躍を遂げる。


同時に花柳先生からビッグニュースが飛んでくるとは…私たちはまだ知らない。


つづく!

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