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ひとりそこに

静かな漣の音

鼻を擽る爽やかな潮の香り

肌を撫でる涼し気な風

遠くで響く渡り鳥の鳴き声

蒼く澄み渡る綺麗な空

白く壮大な入道雲



それは誰もが思い浮かべる理想の海。

そこに浮かぶ小さな島々。



私はその島のひとつに、仰向けで倒れていた。



生き残ったのだろうか。


喰われなかったのだろうか。


両足片手が無いのにどうして。


そんなことを疑問に思いながら、とにかく今生きていたことに私は安堵する。



きっと大丈夫。鮫が出て人が襲われたなら国としても一大事。きっと直ぐに対策本部が建てられて捜索隊も出るはず。問題は両足片手がない状態でどうやって救助まで生き延びるかだ。無理ゲーだと思うけど。


...ここまで考えて違和感を覚えた。あの時失ったはずの感覚が、確かに感じられるのだ。痛みではなく、触られる感覚。

その感覚のある方を見てみると。


「うそ...」


私はこの目を疑った。手がある。足がある。自由にそれらが動かせる。触れられる。感じられる。あまりに自然な状態に、もしかして鮫に喰われたのは夢だったのかとさえ思えてしまう。


でも私の知っているものじゃない。幾らか小さい、子どものようだ。


喰われなかったはずの方の手を見てみた。こっちは変わっていないはず。


しかし目に映るのは喰われた方の手と寸分変わらぬ小さな手。


おかしい。


どういうことだ。


今私はどんな姿になっているのだろうか。


そんな不安に駆られた私は水面に顔を近づけた。



......私は頭まで狂ったのだろうか。


そこに映っていたのは私の姿ではなく。



毛先だけ明るい緑色になった碧の髪。

普通の人並みの大きさ、けど先がツンと尖った耳。

可愛らしい顔。

小柄で健康的に引き締まった身体。




太陽の光が反射し煌めく水面には、私の知らない1人の小さな女の子の姿があった。



ぺたぺたと顔を触ってみる。

うん。やっぱり可愛い。それにすべすべしている。


...違う、こんなことを確認したいわけじゃない。




なんでこんな姿になってしまったのだろう。


それ以前に、ここは一体どこなんだろう。


何もわからない状態なんだ。ちょっとでもいいから情報が欲しい。とりあえずこの小さい島を見て回って何かわかることは無いか探してみよう。


今はおそらく昼頃だろう。ということは太陽の位置から考えて、今いる場所は島の南側。白い砂浜が広がっている。まぁこの島自体が小さいから広いという訳では無い。多分40~50メートルくらいだろう。私がおじいちゃんと遊んだあの砂浜よりずっと小さい。...おじいちゃんは無事かな。私はその不安をぐっと抑える。


西の方に回ってみる。蟹がいた。子蟹だ。なんで陸にいるのか分からないが、蟹がいた。芝生の上に佇むそのトゲトゲした者の姿は、確かに異様な光景だった。蟹だけに、確かに。...どうやら寒い親父ギャグを言える程には落ち着いたようだ。蟹に感謝だ。

...移動しようとした時、こっちを見て手を振っていたように見えたのは気のせいだろう。


北の方には小さな湖...池...水溜まり...うーん、どれにも当てはまらない中途半端に溜まった水があった。水底がはっきり見えるくらい澄んでいて綺麗だ。指に付けて舐めてみても塩っけとかは感じない。純粋な水のようだ。その水が島の真ん中から流れてきているみたいだ。...もっと大きな島ならまだしもこんな小さい島で綺麗な水を作れるのだろうか。


東。島の中央に行ける道があった。それも草や木が無く、平らに整備されたものだ。この小さい島に誰か住んでいるのかな。道以外に何か目立ったものは無いけれど、いくつか小さな花が咲いているのが目に止まった。


中央に向かってみる。道中には何故か加工された鉄の残骸があちこちに散らばっている。この島で鉄なんて取れる訳が...もしかしたら船が漂着して、その鉄を加工した?よく見るとプロペラのような部品がいくつかと、奥には大きめの鉄板が何枚かあった。


歩いた先にはひとつの小屋があった。木で出来た、かなりしっかりとした小屋だ。お金持ちの別荘と言われても信じてしまうほどに綺麗なものだ。


その完成された作品とも言える小屋に見惚れながら、私はドアを叩いた。


「すみません、誰かいらっしゃいますか?」


少し待ったが返事はない。もしかして寝ているのかな。それとも漁に出てる?...もう居ないとかだとどうしよう。


「お、おじゃましまーす...」


このまま入り口に突っ立っていても埒が明かないので小屋に入れさせて貰うことにした。


小屋の中は外見とは違い、随分と寂しいものだった。リビングのような場所には一人分の机に椅子、キッチンのような場所には水溜めのような桶とまな板、火を起こすための小道具、そして包丁。


見た目は寂しいものだ。でもそのひとつひとつ全てが精錬された芸術品。特に包丁は名刀と言える出来だ。こんな包丁は包丁マニアなおじいちゃんでも持っていない。持ってみると手に吸い付くような感覚。それでいて全く重さを感じない。本当に金属で出来ているのか分からなくなる。


気づいたのはこの包丁、いや、全ての家具に『エル』と名前が彫られていることだ。この小屋を作った人の名前だろう。

...なんで日本語じゃない、見たこともない文字を読めたのか。分からない。けど、知っている。


最後に残ったのは寝室と思われる部屋。あまり気は進まないけど、少しだけ気になって見てみることにした。


入ってみるとベッド、机、椅子とこれまた寂しい、けれど目を引かれてしまう家具たちが並んでいた。


私が思っている以上に手の込んでいるであろう家具たちは、使い古され、それでいて作られたばかりのように綺麗だった。こういうのをなんて言うんだろう。アンティーク?でも飾りがある訳では無い。


ふと机の上に置いてあった写真立てを見てみた。白黒で、恐らく隣に置いてある旧式のカメラで撮ったものだろう。そこには笑顔で映る3人の女の子...


でもその女の子達のうちの1人に見覚えがある。


「この子...今の私...?」


そこには確かに、今の私のこの身体と寸分変わらない女の子の姿が写っていた。



サ「転生あるあるその2!自分の知らない姿になってる!まぁ、転生ですしね。これがないと転生というより転移ですから。」

ナ「いきなり転生した本人の気持ちも考えてよ。」

サ「かわいい」

ナ「?!」

サ「作者だからね、君の心境なんて簡単に読めてしまうのだよ。」

ナ「な、なにを...」

サ「さて、可 愛 ら し い 姿になったナギサと、写真に写った3人の少女たち。どんな関係があるんでしょうか!次回!明らかになるところとならないところがあるかもしれないし無いかもしれません!お楽しみに!」

ナ「そこはハッキリさせなよ?!というか可愛らしいを強調するな!!」



かわいい姿、見てみたいです(本心)

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