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ガーネットとカーバンクルの力と

なぜこんなことに。

ジョージは兵に守らせた城の離れの一室でイライラと考えていた。

失敗の可能性は考えていた。だが、報告のような非常識な力で負かされると誰が予測できようか。魔剣のことも知ってはいたが機能停止し、封印され、それをまた目覚めさせようとしても時間がかかるはずだった。何が状況を覆した?


「ジョージ、邪魔をするぞ」


ノックに答える間もなく入ってきたのはジョージの兄、国王ジュリアスだった。


「な……どうしてここに?」


何人も通すなと自分の息のかかった兵たちには言ったはずであるが。


「私が王だからだ」

「ああ……おまえはいつもそうだ! 僕より早く生まれただけで、すべてを手にしている!」

「……そんなに玉座が欲しかったか?」

「欲しいさ! 僕は王族だ。いや王であるはずだった。だからすべてを手にできるはずだった。おまえから奪わずとも、僕の息子がいずれ手にするはずだった……なのに、おまえの娘までもが僕から奪う! 僕から何かを奪うなど許しはしない!」


ジョージは王の弟として玉座以外のすべてを与えられていた。だから彼は貪欲ではなかった。だが奪われることには不寛容だった。

ウィリアムはジョージのものだったから、彼が王になるように期待していた。ウィリアムの政策は革新的だったが、王の力を削ぐものではなく、むしろ王の力を高めるもので、それはジョージの望むところだった。だが、ウィリアムは無欲だった。彼は父と違って与えることのできる人間だった。譲ることも知っていた。ジョージはそれが許せなかった。だから息子を殺した。


「……私も、おまえを許しはしないよ、ジョージ」


言葉とはうらはらに、憐れむように兄は言った。


「私の娘に害を為そうとしたこと、私の可愛い甥を殺めたこと、その報いをおまえに与えてやろう」

「は、おまえがか! 忘れたか、僕の魔力はおまえより強い!」

「いや、私ではないさ」


ジュリアスは部屋を出る。入れ替わりで、巨大な処刑剣を携えた騎士とその主が入ってきた。




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「平和を謳いながら、逆らう者は皆殺しか、イキシアよ」

「……否定はしませんわ。でも、叔父様。いま投降してくださるなら」

「ふざけるな! 目覚めよ炎!」


ジョージが叫び、手を振るうと天井からつりさげられていたカンテラが破裂し、瞬間的に爆炎が部屋を満たした。ガーネットは刹那の内にカーバンクルを構えイキシアの前に出て盾となった。


「姫、お下がりください」

「ガーネット……ここで、殺してはだめですよ」

「御意に」

「焦がせ灼熱よ!」


さらに襲い掛かる炎の熱も防ぎながら、ガーネットはイキシアを部屋の外に出す。

二人きりになると、ガーネットは大剣を正眼に構えなおしてジョージと向き合った。

王の弟ジョージは歴代屈指の魔力を持ち、また魔術を能く学び魔術師として一流だった。それが戦場などで振るわれることはなかったが、彼の強さはガーネットも聞き及ぶところであった。


「そうだ、貴様だ! そしてあの殺し屋! おまえたちさえいなければ僕がこうして自ら動く必要もなかった! くそ!」


彼の怒りと反応するように、空中に留まる魔術の炎が、白く眩く輝きだす。

ガーネットは思い出す。普段ガーネットが使う肉体強化や防御といった単発の魔術と異なる、本当の魔術師が使うような高度魔術は、きっかけの現象と言葉を連鎖・発展させて織り成し続けるものだと。

術を発達させる隙を与えてはならない。ガーネットは踏み出そうとするが、彼が次の具象化を開始する方が速かった。


「貫け光よ!」


光となった炎が槍のように鋭くなってガーネットに降り注ぐ。ガーネットの防御魔術ではジョージの魔術を防ぐことはできず、回避を始めるが、すると大剣が重くて攻撃に移れなくなった。


「く、この……!」

『やれやれ、本当に無様ですわね』


ヨタヨタと光の槍を避け続けるガーネットにカーバンクルが言った。


「そう、思うなら、少し軽くなって、くれませんか?」

『無理ですわね。よろしくて? 私は王権を示す刃にして、私こそが光を放つ宝石。それを忘れるではありませんわ!』

「……そうですね」


ガーネットは魔術を使えるほど賢くない。だが、ガーネットが目の前の魔術ほど高度な式と情報を編み出せずとも、手に持った剣が城のように壮麗で宝石のように精妙な術を持っていることを理解した。


「真なる輝きを示せ、王の玉よ!」

「なに!?」


ガーネットが唱えるとカーバンクルの宝石から赤い光が迸り、ジョージの光の魔術を無力化した。


「イヤー!」

「く、踊る炎と闇を見よ!」


ガーネットの斬撃はジョージの咄嗟の回避で空振りした。


「抵抗をやめてください。殺す気はありませんが、手加減するのはこれで最後です。次は痛い目にあってもらいますよ」

「そんな錆び付いた魔導具もどきで得意になるな。真の魔術というのものを見せてくれる!」


ジョージが叫ぶと同時に、部屋中に放たれてまだ残っていた光の刃が燦然と輝きだした。


『我は唱えん。叡智輝く、光と焔の園の詩を』


その一言で、ジョージの部屋は光と炎に埋め尽くされた。ガーネットはカーバンクルに頼って張った防御癖の中にしか立っていられなくなった。


『無明を焼き尽くす煌めきを讃えん。暗愚を照らし出す焦がれに歌わん』


『あらあら。部屋の中で使う魔術ではありませんわね』


楽しそうに宝剣は言う。

そう、いかなる煉獄か楽園の叙述か知らないが、実際に永き王権の誓約を見守り、数多の正義を為してきた剣に及ぶはずがないのだ。

ガーネットはカーバンクルを掲げ、静かに唱えた。


『見よ、暁の宝石を。これぞ我らが宝。我は護るものにして、宝を穢すものに裁きを与える者なり!』


『天煉降来!』


怒涛のような光と炎がガーネットに押し寄せた。

だが、ガーネットは揺るがす、剣を掲げ続けた。彼女と剣から放たれる赤い光が、押し寄せる光と炎を染めていく。真っ白に塗りつぶされたような空間の色が変わっていった。


「ばか……な……アバー!!」


そして暁のような穏やかで澄んだ光だけになったとき、ガーネットは剣を振ってジョージの足を叩き切った。


「これが私たちの正義、私たちの誓いです。あなた様が及ぶものではありませんね」


ガーネットはそう無慈悲に告げ、のたうち回る彼の口と手を縛ってから足の出血を止めた。先に言ったとおり、この場ではなく、後で処刑するためだ。咎人の目が恐怖に見開かれ、懇願するように何か言っていたが、ガーネットは意にかけた様子を見せずに現王の弟を連行した。

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