折れた妖刀と元所有者と
ガーネットの様子が元に戻った。
サツキという暗殺者が捕らえられて数日、自分の騎士の様子を見てイキシアは思っていた。
あの無闇に大きくて物騒な剣を持って歩いていないというだけで印象が変わるが、言動も落ち着いたようだ。ヴェスパと共に満身創痍になって戦場から戻ってきてからというもの、ガーネットは情け容赦なく貴族に対する畏れもなく首と見れば刎ね続けていたが、ヴェスパが使えなくなった途端に大人しくなり、逮捕させた孤児院の子供たちも早々に釈放していた。
「殿下、失礼いたします」
ガーネットのことを考えていたら、彼女が別の騎士に通されて執務室に入ってきた。
「紗月……いえ、レインの調書が完成しました。裁判の日程は調整中ですが、殿下には先にお目通しいただきたく」
「わかりましたわ。あ、あなた下がっていてくださいな」
イキシアは護衛をしていた騎士を退室させた。ガーネットと二人だけになる。彼女を椅子に座らせて、イキシアは調書に目を通した。
サツキ、いや、レインという名だったらしい少女は大人しく、速やかに自分の犯行を供述したようだ。取調官を威嚇することもなかった。ガーネットの所見では取調官が勝手に委縮したり怒ったりして、ガーネットが時々様子を見に行かなければならなかったようだが。供述の内容は血に塗れていた。争いを好まぬイキシア個人としては、読むに堪えない内容だ。だが今の彼女の様子はどうなのだろうか?
彼女も魔剣の類を持っていたようだが、それを手放したことで性格が変わった?
イキシアの思考が調書から遠ざかり、そんなことを考え始めた。しかしここ数日ずっと考えていたことでもある。魔剣とは何だったのか。平時であれば魔術師に調べさせてよかったが、今もあのときも忙しく、ガーネットを余計なことで別行動させる気もなかったので、結局調べずに終わった。しかし今は使えなくなったといってガーネットが魔剣を手放したので、聖堂に預けてある。もしかしたら何らかの調査が行われているかもしれない。
イキシアは執務補佐の者を呼び、しばらく予定を空けさせるように命じた。
「姫、どちらに?」
「聖堂と、牢に。魔剣と魔剣の元所有者に会いたくなりましたわ」




