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決着と喪失と

「イヤー!」


紗月の動きが止まった瞬間、ガーネットはヴェスパに渾身の力と魔力を込めて振った。

ヴェスパは魔術刃があり武器として優秀だが、後の先を取る紗月と同じような戦い方はできない。先んじて仕掛け、流れを支配するしかない。

そう、渾身の攻撃であったがそれで紗月を破ることはできない。彼女は駆け出す。数多の死を交わし、断罪の刃を足蹴にし、宙に舞った。

ガーネットは吠え猛り、ヴェスパを切り上げた。


銀、と雨の中で斜光が走り、死と断罪が交錯した。




「むら、さめ……?」




ずしゃ、と着地した紗月の手の中の刀は折れていた。

勝った。そう思いたいところだが、


「ぐ……ヴェスパ!?」


魔力を帯び光っていたはずの剣から光が失われていた。魔力の回路が切れたことを悟った瞬間、少女の腕力だけでは持ち上げることすら難しい重量がかかってきて、ガーネットは大剣を取り落とした。

そうしてヴェスパを地面に横たえたところで気付いた。その刀身の半ばまでに村雨が食い込み、折れていることに。紗月はヴェスパを斬ろうとしたのだろうか? いや、たぶん違うだろう。ガーネットは思う。激突の瞬間、彼女の意思を無視してこの剣が動いたように感じた。ヴェスパが何を考えているのか知らないが、この魔剣はその身をもって追い求めた妖刀を捕まえたのだ。

それは契約の成就であり、その瞬間に契約が破棄されたことを悟った。もうこの剣は私のものではない。そう悟ったガーネットは魔剣を手放し、近くにあった騎士の死体から剣を取って紗月に突き付けた。


「終わりですか? あっけないですね」


ガーネットの呼びかけに紗月は彼女を一瞥した。そしてまた折れた刀に視線を戻す。

やがて紗月は立ち上がる。相変わらず雨の中でもまったく乱れのない所作であったが、いつものような透明な殺気がなく、折れた刀を鞘に納めて悟ったように言うのであった。


「そうだね。これで終わりみたい。……あとは好きにして」


そうして彼女が眼を閉じると、糸の切れた人形のように倒れ動かなくなった。


「え……? ちょっと、何の真似ですか!?」


その倒れ方があまりに無力なようだったので、一瞬彼女が死んだのかと思った。だが呼吸はしていた。脈ももちろんあり、体温が下がっているということもなかった。

ぐったりと晒された首筋を見て、このまま首を刎ねようかと思ったが、やめた。罪人であっても然るべき裁きは受けるべきだと、唐突に普通の考え方をして、ガーネットは紗月の手足を縛り、応援の騎士を探しに行った。

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