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コイバナと黄昏と

「しかし、主はどんな男が好きなのかえ?」


マリオを話をし、彼を見送ったときに不意に自分の刀がそんなことを言ってきた。

紗月はその問いが馬鹿らしく思えて深い溜息を吐いた。


「知らないよ……」

「もしやおなごが好きかえ? しかしニムは相手にせぬから、もしや妾のような童女が!?」

「なに急に馬鹿なこと言ってるの? 血を吸わないと力が衰えるって言ってたけど、馬鹿にもなるの?」

「あんまりじゃのう。主が老いては洞窟に籠って寂しい余生を過ごさぬように心配しておるというのに」

「余計なお世話だよ」


紗月はマリオがもう見えなくなった方向を見やった。


「私も恋に憧れぐらいはあるよ」


先ほど、急に何やら憂い顔で現れたマリオは、好きな人はいるのかと聞いてきた。藪から棒だった。それは何かしらのテンプレートの気がして、紗月は身構えたが、たぶん違うだろうなとその次の瞬間には悟った。誰かに嗾けられたかと思うと、孤児院の子供たちから言われてもとっくに相手にしなくなっていたし、そうだとしても心境の変化のきっかけがいるはずで、それは一人しか思い当たるところがなかった。

マリオくんのことは結構好きだよ、とあえて紗月は言った、彼は驚いていた。お兄さんっぽいけど病弱で、料理が上手で気遣いもできて、ポイントは高いよ。だから、もっと自信を持ったらいいんじゃないかなと紗月が言うと、そうかなと彼は言った。もっと思い切りがいいと良いし、でも残念ながら私は私より強い相手としかお付き合いできない。すると彼は、そうか残念、でも良いことを聞いたと言って軽やかな足取りでいなくなった。

ちょっとだけ惜しいと感じたが、それよりも彼と彼女が良い感じになってくれればいいなと未来に期待した。


「やはり主には早いか……」

「そういうこと。……もうちょっと、時間をちょうだい?」

「しかたのない主じゃ」


村雨のその言葉に苦笑で返しつつ、紗月は空を仰いだ。

黄昏だった。

曇りのない空に、金色の光が澄み渡るように染みこんでいる。

溜息を吐きたくなるほどに見事な金箔細工の黄昏だったが、その神々しさに紗月は胸騒ぎを覚えた。


そう――



「サツキおねえちゃん!」



――いつだって、



「ニムおねえちゃんが!」



――血と刃はそばにある。


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