現実の再現度が高いと色々悪いこと出来そうだよな
どうでもいいけど魔道具作ってた奴らは錬金術師の派生職業だったりします。
魔工技師とかそんな名前です、きっと。
「ここが錬金術ギルドの受付で合ってますよね?」
無事に話したがりを回避した俺は、目的を果たすべく受付へ話しかける。間違いないだろうが、心配性の俺はとりあえず1度確認を挟んでしまう。昔からのクセなのでどうしようもないんだ、こればっかりは……
「はい、こちらで合ってますよ。本日はなんのご用でしょうか?」
デジャヴ、下の総合受付でも同じ様な会話をした気がする。
でもまぁ、こっちは間違いなく錬金術ギルドであるのでなんの問題もないだろ。早速手持ちの魔石を買い取って貰おう。
「ここで魔石の買い取りをしてくれると聞いて。ゴブリンから取れた低級魔石なんですけど、買い取りをお願いしてもいいですか?」
「魔石の買い取りですね。では、査定を行うので売る分は全てこのカウンターに出してもらえますか?」
今日狩ったゴブリンは大体30を越えないくらいだった。そいつらからは、5個程の魔石がドロップしたので確率は悪くは無いが良くもない、って所だな。
掌に容易に収まる小さな魔石を取り出し、カウンターに乗せた。
受付嬢は、ルーペのようなもので魔石を注視している。そういえばNPCは全員が鑑定を使えるわけではないのだったな。ということはあのルーペは魔道具の一種なのだろうか?
鑑定にはそこまで時間はかからなかった。
「んー、はい、低級魔石5つ確認出来ました。それではこちらを買い取りという事でよろしいですね?」
「あぁ、全部買い取ってほしい。」
「では、低級魔石1つにつき500Gで2500Gとなります。代金を用意しますので少々お待ち下さい」
…………やっす!!低級ってもここまで安いのかよ!ゴブリンまじで良いところないな、あいつら狩るだけ損な気がしてきたぞ……
何か良い金稼ぎの手段ねぇかな、ウチはヒーラーいないからタンクの回復がポーション頼りになってしまうのでポーションは常に沢山持っておきたい。ただこのままだとMPポーション分の代金すら払えるかどうかって所だぞ……
「はい、こちら2500Gです、ご確認下さい。」
受付嬢から渡されたお金を、きっちり2500あることを確認してインベントリにしまう。
「2500しっかりありました、ありがとうございます。また魔石が手にはいったら寄らせてもらいますよ。」
「はーい、魔石は常に買い取りしていますので何時でもお越しになってくださいねー」
………全然金にならねぇ!モンスター狩りってここまで効率悪いのか……?いや、きっとゴブリンだけだ、そうに違いない。
……はぁ。
無言でウィンドウを開き個人チャットを開く。
『狩り行くぞ。』
『いいけど、今度はどこに行くの?』
『北行こう、北。南よりワンランク敵が弱いらしいから今なら多分余裕だと思う。』
確か北には丘陵地帯があったはずだ。どんなモンスターがいるかはわからんが何か金になりそうな採取アイテムとかがあってほしい。
ちなみに東には湿地があり、この最初の町の近隣では一番敵のレベルが高いらしい。ここまでは事前情報で公開されていた。
『北、ね。また門に集合でいい?』
『OK、俺も今から行く。そっちが先に着くと思うからすまんが待っといてくれ』
特に文句も言わず了承するあたりこの付き合いって感じだよな……ほんと気が楽だよ。
さ、俺も北門に行くとするか。あんまり遅れないようにしないとな。
「よ、やっぱりそっちのほうが早かったな。」
北門に到着すると、既に二人が待っていた。
「来たか、今回も早い召集だったな。何かあったのか?」
「…………魔石がくっそ安かった。1つ500にしかならなかったから稼ぎが少なすぎたんだ。」
「あー、そこまでかぁ……。俺達も武器とか買いたいしもっと金稼がんといかんな。」
「クエストとか無いのかな?他ゲーだと定番じゃない?各ギルドで依頼とか出してたりしてたりするかもね」
「それも要確認だなぁ、今回の探索から帰ってきたらちょっとばかり情報収集したほうがいいかもな。今の俺達には情報が少なすぎる」
「そうだね。じゃあとりあえず行こうか、この探索から終わらせよう」
「よっしゃ、行くか!何があんのか楽しみだな!」
時間も惜しいしさっさと出発してしまおう。ゲーム内は体感加速のお陰で現実の3分の1位の時間しかたたないが、体感加速は地味に体に負担がかかるので長時間のログインは厳しい。現実での時間が10時間を越えると強制的にシステムが落とされて現実に戻される。安全装置の一種だな。
探索から帰ってきたら、飯と休憩で一旦落ちるとするかね。
「おー、いい景色だなぁ。ピクニックとかにいいんじゃねぇか?、ここ」
青々とした丘の頂点に立ち、辺りを見渡すウォッカ。ここがモンスターの出るフィールドじゃなければ俺も同意していただろう。
それくらい見晴らしがよく綺麗な風景が見えていた。
「おお、モンスターと一緒に弁当でも食うつもりか? 呑気な奴だなお前」
「誰もそんな事いってねだろ!んなことしたら俺がモンスターの弁当になっちまうわ」
「大丈夫だよウォッカ。ちゃんとそこに墓作ってあげるよ、『バカここに眠る』って墓標立ててね。」
「そりゃいいな!リスポンして自分の墓を見るってどんな気分になるんだろうな、なぁウォッカ?」
「お前ら…………」
もはや定番となりつつあるウォッカ弄りだ。これ以上は拗ねるので控えるがやはり楽しいんだな、これが。
まぁこんなことをしているがもうこの辺は戦闘区域、いつモンスターが出て来てもおかしくはない。そのために見晴らしがいいここに立っているのだが。
「あ、みて二人とも。向こうに何かいるよ、獣型のモンスターみたいだね」
そうトールが指す先には、確かに4足歩行の獣型のモンスターがいた。距離は遠くない、だが俺の魔法は射程圏外だ。感知範囲外から一方的に蹂躙するのはロマンがあるが今の俺には出来ないことだ。いつか出来ることを願っておこう。
「いるな。見た感じヤギっぽいモンスターだな、突進と角の攻撃に気を付けて行くぞ。」
「了解、2匹いるから1人一匹ずつ受け持つよ」
前衛二人が前へ出ると、向こうもこちらを感知したらしく、真っ直ぐこっちに走ってきている。サイズは……馬くらいあるな、結構でかいぞ。
「おー、中々迫力あるねぇ。あれにぶつかったら痛そうだよ……」
「悠長だな、もうすぐそこまで来てるぞ!」
接触、その瞬間二人がとった行動は同じく回避だった。
ウォッカは直前で斜め前に体を翻し、トールは角の先端に盾を沿わせて相手の勢いを利用して綺麗に受け流している。
このままだとこのヤギどもは真っ直ぐ俺のほうに来ることになるが、そこは二人も分かっているのでヤギの側面に回った瞬間に攻撃をぶちかます。
「おらよっ!その足貰うぜ!」
ウォッカのはスキルを使わない攻撃だった。突進中のヤギの足を狙い、剣を振るう。
その斬撃は狙い通りヤギの足に命中し、しかし切断にまでは至らなかった。だがしっかりとダメージは入ったようで突進の勢いのままヤギはずっこけ、倒れ伏した。
「ちっ!ちょっと威力が足りなかったみてぇだな、完全に落とすつもりで斬ったのによ」
とは言うが、斬られたほうのヤギは足を痛めて起き上がるのにすら苦労している。部位ダメージが動きに反映されているみたいだな、動きを止めるときは足狙いとかいいかもしれん。
「ぶっ飛べ、【シールドバッシュ】!」
トールは【シールドバッシュ】を使用していた。
無防備なヤギの横っ腹に、トールのシールドバッシュが命中。あれはキレイに入ったな、めちゃくちゃ吹っ飛んでるぞ……
トールは吹き飛んだヤギをそのまま追撃し、倒れているヤギに剣を突き立てた。前足の付け根辺り、現実の動物なら心臓がある位置だな。突き立てられた剣は、普段と違う派手なエフェクトとともにズブッとヤギの体に刺さった。
「おー、これもしかしてクリティカルかな?急所に当てると発生するみたいだねぇ」
まぁ確かに、部位ダメージで動きが鈍くなるゲームだ、急所に当たった攻撃がクリティカルというのもおかしくない。それに俺は確率は嫌いなんだ、こんな感じにはっきりしてたほうが好きだな。
ウォッカのほうもダウンさせたヤギに止めを刺していた。こっちは首に振り下ろしの一撃、クリティカルはなかったな。
「やるねぇ、二人とも。闘牛士にでもなったら?」
「この時代にそんなもんねぇよ……」
「回復が限られてる以上被弾は抑えないといけないからね、立ち回りも回避重視になるよ……」
レベルに余裕があったお陰でヤギの速度にも対応できたし、ゴブリンとの戦闘も無駄ではなかったな。
ちなみにヤギは『ラッシュ・ゴート』って名前のモンスターだった。ラッシュゴートね、そのまんまじゃねぇか……
「んで、ドロップはどうだった?何かいいのでた?」
「おお、俺のは毛皮と角だったぜ。角って何に使うんだろうな?」
「こっちは山羊肉と毛皮だね。毛皮ってどこに売ればいいんだろうね?」
見た感じ体の部位がドロップになってるな。
「にしても俺が魔法撃つまでもなく処理出来るってなると節約できて探索の時間が増えてきそうだな。この調子でもっと金になりそうなもの探していこうぜ」
「そうだね、次行こう次。僕らにはもっと金が必要なんだ」
ヤギが2、3匹なら楽勝。この時はそう思ってました……
「お、おい、あれヤバくねぇか……」
「ヤバくねぇか、じゃねぇ!ヤベェんだよ!逃げろ、轢き潰されるぞ!」
今、あれからちょっと進んだ先で、ヤギの大群が目の前から迫ってきていた。
「逃げろってもどこにだよ、この辺は障害物なんてねぇぞ!走っても追いつかれる!」
「いいか、障害物が無いんだったらなぁ、障害物を作ればいいんだよ!見てろ、【ファイヤボール】!」
全力で走って逃げていた俺達は、取り敢えず丘の上に陣取り、ヤギの大群を見据える。そして先頭を走るヤギの足元に向けてファイヤボールを打ち出す、ヤギの細めの足にも当たりやすいように範囲を少し上げているやつだ。
そして狙い通りファイヤボールは命中し、先頭のヤギの体勢を崩す。こうなれば後はなにもしなくても勝手に処理できる。
体勢が崩れ突進の勢いが弱まったヤギは、後ろを走るヤギに激突された。
そこからはもう同じことの繰り返しだった。ひたすら前のほうのヤギの動きを止めるだけ、それだけで後ろのヤギ達は勝手にぶつかって止まってくれる。運が悪かったのか、首が折れて死んでるやつもいたな。
「なにもない道だからって飛ばしすぎじゃないか?これに懲りたら車間距離はしっかりと空けとけよな。来世があったらだけどな!」
交通マナーは守ろうね!




