魔力草、お届けに上がりました。
お望みのものを、お手元にドゥビドゥバ
「いやー取った取った。生えてる場所にはここまで生えてるもんなんだな、もう途中から何本取ったのか数えてねぇぜ」
泉に群生していた魔力草は、3人合わせて100は下らないだろう。
1度の採取でこんなにとれてしまってもいいのか少しだけ心配になってしまった。
「こんだけあればポーション結構作れそうだよな。もう用は済んだしさっさと町にもどってポーション作ってもらうか。」
「二人とも、ちょっと待ってもらえる?」
いざ町に戻ろうとしたその時、なぜかトールから待ったの声がかかる。もうやることはないはず、訝しげにトールの方を向くと泉の水に触れていた。
「どうしたんだトール、泉に何かあったのか?」
「泉に何かあった、、と言うよりは泉そのものが注目点だよ。」
「泉そのもの?なんのこった、なんか特別な効果でもあるのか?」
「わからない?じゃぁ魔力草の説明文をもう一度よく読んでみてよ。」
魔力草の説明文。ポーションの材料、魔力が多い場所、群生……、そうか魔力が多い場所!
「泉の水か。たしかに魔力スポットになってる水場なら水に何かあってもおかしくないな」
「そう、正解だよウィズ。魔力草が生えてる理由をね?考えたんだけど、この泉の水が魔力を含んでるとしか考えられなくてね。もしかしたら、と思って鑑定してみたら案の定だよ。ほら、二人も見てみてよ」
と、いいながらトールは掌に水を掬って俺たちに見せてくる。
《【魔力水】。豊富に魔力を含んだ液体。大抵は地脈から魔力を吸い上げながら湧き水として各地の地脈の上に湧いている。地脈の濃い魔力を含んでいるので、ただの人間が摂取すると体を壊す。薄めて薬に混ぜると効力が上昇する。》
なんだこれ、都合良すぎだろ。
MPポーション欲しさに魔力草取りに来ただけなのにその効果を高めることが出来そうな素材を発見できた、ぶっちゃけ都合良すぎてビビってきたぞ。
「どう?これもさ、ポーションのいい材料になると思うんだよね。持って帰ろうよ」
「あー、持って帰りたいのは山々なんだけどよ、液体つったら容器がいるだろ?誰も持ってなくねぇか?そんなの。」
ウォッカの言うように俺たちは魔力草を取りに来ただけ。水を入れることができる容器なんて持っていないのだ。これではせっかくのアイテムを見逃してしまうことになる。
「それなら大丈夫だよ。今試したんだけど、アイテムと認識されてるならインベントリにしまえるんだよね。例えば、こう」
そういいながらトールはもう一度泉に手を突っ込み、掌に水を掬って見せた。その直後、トールの掌にあった水が消えた。インベントリに収納したのだ。
「まじかよ、容器要らずで水をしまえるなんて便利なインベントリだな、ありがてぇ話だまったく!」
「あぁ、そうだな。ここは気付いてくれたトールに感謝だな、こっちも持てるだけ持っていこう。」
これで水を持ち放題、と思ったがそう簡単にはいかないらしい。
容器なしで水をインベントリに入れると、水一リットルだけでアイテムスロットを埋めてしまい、スタックが不可能であることがわかった。
「まじか、スタック不可か…………。でも無理なものはしゃーない、次取りに来るときはちゃんと容器を持ってこよう。今回は入る分だけ持っていこう。」
幸い、今の俺達のインベントリにはポーションとゴブリンのドロップ品と薬草とキノコぐらいしか入ってない。限りがあるとはいえ結構持っていける筈だ。
「これは出すときにでっかい釜とか用意してもらわないとね。」
「そうだな、きっとあの錬金術師もビックリすることだろう。魔力草取りに行ったらおまけでこんなものまで持ってくるんだもんな。」
「でもその錬金術師にとっちゃ幸運だろうよ、ほかのやつに先んじてMPポーション量産出来るんだしな。もっとも大半はウィズの物になるだろうがな……」
「違いねぇ。俺は今回の探索で得た金は全部ポーションに当てる予定だ。素材はこっち持ちだからかなり安く済むと思う。」
インベントリいっぱいに魔力水を収納した俺たちは、今度こそ町へと帰ることにした。ギャァギャァ五月蝿く鳴くゴブリンを避けながらマップを便りに森の外へと向かう。結構歩き回った気がしていたが、案外そこまで奥の方へは行ってなかったので帰るのには時間はかからないだろう。
「いやー、やっと帰れるね。町に戻ったら途中だった武器屋回りをしたいなぁ……」
「お前そんな事してたの?てっきり防具の方見に行ったかと思ってたわ」
「防具も重要だけどさ、盾なんだよね、盾。どれだけ盾で相手の攻撃を防ぐかがポイントだからね。いい盾が欲しかったんだ」
「たしかに、お前今回の探索でゴブリンに直接体を殴られたのって1度か2度位だよな。そんだけ盾使えるなら良い盾から優先しても良さそうだな」
「でしょ?今まで他ゲーでも盾使ってて思ったけど結局どれだけ盾を上手く扱うか何だよね。鎧はその次でいいんだよ」
そんな会話をしながら歩いていると、前方から強い光が見えてきた。森の出口だろう。
「出口だ、漸くこの森から出れるぞ。」
「さぁ、町までもうすぐだよ。頑張っていこう!」
町に戻ってきた俺たちは、真っ先にあの錬金術師がやってる露店へ向かった。まだあそこにいたらいいのだが……
「たしかあの辺に……いたいた!まだ同じ場所にいてくれて助かったよ。トール、ウォッカ、あっちだ。あのポーション並べてる露店商が俺らのターゲットだ」
「あそこか、余り人が来てるようには見えんな。上手くいってないのかねぇ。」
「まぁ、その辺も含めて話してみるよ。」
「よぉ、景気はどうだい?ポーションの売れ行きは?」
そう気さくに声をかけ錬金術師のもとへと近づいていく。
「あぁ、あなたですか……、それがさっぱりで、僕以外にもHPポーション売ってるところがあるので余り客が回ってこないんですよね……」
「あー、そのへんは客商売の辛いとこだな。早いとこ他の店とは違うとこを見せていかないといけないな。」
「違うとこ?……そういえばあなた魔力草を取りに行くと言ってくれていましたよね?もしかして……」
「そう、それだよ。驚くなよ?100本以上あるぞ、これで存分にMPポーションを作って貰うぞ、用意はしていたか?」
「100本!100本も取ってきたのですか!……おっと、失礼。少々驚いてしまいました……。」
100本。その個数を聞いた錬金術師は一瞬驚いた様子をみせたが、そこは商売人。直ぐ様持ち直して見せた。
「ポーションの作製ですが、スキルによる作成なので特に大掛かりな準備は要りません。このポーション作製キットだけで下位のポーションは作れてしまうんですよ。」
そう言ってインベントリから謎のアイテムを取り出す。あれがポーション作製キットとやらなのだろう。
「MPポーションの材料も草と水だけなのか?」
「はい、下位のポーションなら基本素材は水と草で出来ます。あと追加で何か適した素材を混ぜると効力が上がったりするんですけど、今は持っていないので……」
「そんな君に朗報が一つ。とっておきがあるんだが、何か大きい水を入れれるような容器をもってないかい?」
「容器……ですか。すいません、持ち合わせておりません……」
「あぁいいんだ、なければ。ちょっとその辺のNPCの店で売ってそうだから見てくるわ。」
そう言っていったん錬金術師のもとをはなれ、NPCの店を軽く回る。狙いは陶器とか金属のとこだな。
探しはじめて数分、俺の目の前には金属製の大釜があった。
食器等を売っている店だが、ダメもとで聞いてみたら裏の方から持ってきてくれた。
「そんで、こいつはいくら位になるんだ?結構良い値段しないか?」
「そいつな、使い古しでそろそろ新しいの買おうかと思ってたんだよ。うちの商品なにか一つ買ってくれたら持ってってもいいぞ。」
「まじか、そんなんでいいならめっちゃ買うぞ!助かったよ、店主!」
心優しい店主の好意で大釜を譲ってもらえることになったので、ついつい調子にのって初期からもってる所持金3000Gは全て食器類に消えてしまった。こんなのどこで使うんだろうか……
まぁ、これで大釜は入手できた。あいつらのところに戻ろう。
「あ、戻ってきたね。入れ物は手にいれたの?ウィズ。」
「やぁやぁ、待たせてしまったね。それじゃお待ちかねのとっておきのお披露目といこうか。」
そう言ってインベントリから大釜を取り出す。
「おお、けっこうでけぇな。これなら全部入るかもな」
「それじゃ、二人とも。全部こんなかにぶちこんじまえ。」
そう言う俺も大釜へと魔力水をぶちまける。
3人で持ってきた魔力水は、大釜を丁度満たす位の量になっていた。
「この水が、とっておき……ですか?」
「そうよ。まずは鑑定してみな。見る目が変わるぞ」
訝しげに大釜を満たす水を鑑定する錬金術師。直後、その効果を知った彼は驚いたようにこちらと大釜を交互に見る。
「な?ビックリするだろ?俺たちも、魔力草だけとってくるつもりだったんだけどな、こんなものまでとれちまってな。どうだ?こいつを使えば他とは違うポーション、作れんじゃねぇか?」
「もちろんですよ!これをつかえば、おそらく下位のポーションではトップクラスの品質ができるはずです。これならきっと人も集まりますよ……!」
これから訪れる繁盛を想像したのか、彼は興奮ぎみだ。
「そいつはいいな。ところで、このキノコとかも使い道……ない?」
俺は余分にとりすぎたキノコの処理をしたかった。
一応NPC見せ売りのMPポーションもありますあります。
でもめっちゃ高い上に数に限りがあるのでなおきです。




