表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

旅行先で迷ったときは現地民を捕まえろ

土日に仕事したくない侍

「魔力草......ねぇな...」


「無いね...いい加減ゴブリンは見飽きてきたよ、レベルも上がりにくくなってきたしさ。」


魔力草を求めて彷徨う俺たちは、幾度かのゴブリンとの戦闘を経てレベルが15まであがっていた。

しかし、ここまで連戦できていたのはレベルアップによる回復があったおかげであり、同レベル帯となった今は簡単にはレベルが上がらず、消耗が目立ってきた。

特に顕著なのは俺のMPだった。


「そろそろ俺のMPがマジできつい。あと1、2戦くらいなら初期配布のMPポーションでしのげそうだけど、限界は近いぞ。早いとこ魔力草みつけて帰らないとな...」


初期配布でもらったポーションは5個、回復量は1つで20パーセントだ。これ以上の戦闘はマジできつい。


「それなら、ここからはゴブリンとの戦闘はなるべく避けていこう。ウィズが置物になるのは勘弁願いたいよ」


「それがいいな、やつら索敵能力が低いから大抵こっちが先に気付けるし避けれる戦闘は避けていこうぜ」


ウォッカの言う通り、ゴブリンどもは索敵能力が低い。上位種とかなら違うと思うがやつらは鈍感だ。

目的の魔力草を見つけるまでは戦闘を控えていこう、節約は大事だ。





戦闘をせずに静かに探索をしていると、とあることに気が付いた。

よくよくあたりを見てみると、動物がいるのだ。この森で暮らしている野生動物たち、先ほどまでは戦闘をしながら探索していたため、大きな音を立てていたので周囲から逃げていたのだろう。

木をよく見てみるとリスっぽいやつもいるし、先の方には鹿らしき生物も見えた。こっちを警戒しながらいつでも逃げれるように構えている。


「ゴブリン以外もいたんだねぇ、この森。」


「あぁ、さっきまではうるさくしてたからな。驚いて逃げていたんだろう、野生動物らしいな。こういうとこはリアルに作るんだなぁ...」


「でもよ、こいつら多分ゴブリンの餌だぜ?この森ゴブリン以外のモンスター見てねぇしよ、やつらの食い物っていったら肉しかねぇだろ...?」


このゲームは、ゲームである以上需要には答えないといけない。モンスターが狩りつくされると、新たな個体がリポップするのだ。

しかし、一度POPするとこの世界の住人として生きていくことになるため、モンスターであろうとも食事等が必要になってくる。そこでここのゴブリンたちの食事になっているのがあの動物たちなのだろう。

そう思うと同情の念もわいてくる。


その気持ちを読み取ったのか、俺たちに敵意がないことを悟ったのか、鹿っぽい生き物はゆっくりと反転し歩き出した。


「お、あの鹿どっか行くみたいだぜ。もしかしたらあいつの行き先に何かあるかもしれないし、ちょっとつけてみねぇか?」


「お前なぁ、警戒を解いたからってそう簡単に跡をついて行けると思うか?相手は野生の獣だぞ」


「でもウィズ、試す価値はあると思うよ。このままやみくもに探し回っても見つかるとは思えないし、何かの手掛かりになるかもしれないよ。」


トールの言うことももっともだ。さっきまでただ歩き回って探していて見つかっていないのだ。

これもいい機会だったのだろう、やってみるか。


「そうだな、このままじゃ埒が明かないしそれもありだな。ついていくとするか」


「遅れないでよ、ウィズ?君INT以外ステータス振ってないから絶対遅いでしょ。走ったら追いつけないと思うよ」


そう、俺はINT以外にステータスを振っていない。激しい動作などに必要になってくる『スタミナ』は、VITやAGLなどが上がるにつれ増えていくが俺は降ってないうえジョブも魔術師。レベルアップで上昇するステータスにVITやAGLは含まれていない。一応人間の特性で全項目が少しだけ上昇しているが、ほんとに微々たるものだ。そんな俺が走ったら、すぐに息切れしておいて行かれることは容易に予想できた。


「勘弁してくれって...砲台が機動力に振ってたら意味ないだろ...。ん?ということはお前らが俺を背負えば機動力も火力もあるし最強なのでは???」


「なにその人間戦車」


「弱そう」


くそう...。特化に犠牲はつきものなのだ、遅くてもいいじゃないか...




鹿を脅かさないようにしつつ後をつけていると、1つ気付いたことがあった。

それは、

「おい、この鹿が通ってるところ。何回か通って踏み固められたような感じの地面だぞ。獣道の類じゃねぇかな」


「あぁ、この鹿はただ歩いているだけじゃなくてしっかりと目的地があるらしい。もしかしたらあたりかもしれないな」



「二人とも、どうやら目的地はもう近いみたいだよ。この先に開けた場所が見える、多分そこが目的地なんだとおもう。」


「お、ようやくついたか。これ以上歩き回るのは勘弁願いてぇところだったんだよ」






鹿が案内してくれて(をストーキングして)見つけた場所、そこにあったものは、


神秘的な光をはなつ、小さな泉だった。



「ほぉ、なかなか神秘的な場所じゃねぇか。森の中にこんなとこがあるなんてな」


「いいとこだね、ここ。ゲームの中とはいえどこういうとこは落ち着くね。野生動物のオアシス的なところになってるのかな」


木漏れ日を泉の水が乱反射し、辺りに光をまき散らす。薄暗い森の中ではだいぶきれいな光景だな。

と、水にばかり目が行きがちだが、俺はそれを見逃さなかった。


「お前ら、泉のまわりをよく見てみろ。なにか見えないか?」


俺がそういうと、二人は泉の周りに目を凝らす。


「...草が光ってる?」


「おい、ウィズ!これってもしかして...」


そう、ここら一帯に生えている草がすべて採集アイテム特有の光を発していたのだ。

俺は泉に近づき、青白く光るその草を1つむしりアイテム詳細を鑑定する。

《【魔力草】。魔力が集まる場所などに生えている。辺りの魔力を吸収し蓄える性質があるので、魔力回復薬の材料になる。特定のスポットにしか生えていないが、生えている場所には大抵群生している。》


ビンゴだ。

「あたりだ、二人とも。この辺に生えてんの全部魔力草だ。やっと見つけたぞ...」



「マジ?これ全部…?取り放題じゃん、やったぜ!」


「これが魔力草かぁ...ようやく見つけたよ。こんな場所にしか生えてないなんてね...」


「よっしゃお前ら、根こそぎ持ってくぞ!どうせしばらくしたらリポップするはずだ、取れるだけとっていこうぜ」



しばらく目的のものを見つけきれなかった反動か、馬鹿みたいにテンションを上げて採集を始める。

急に騒がしくなった俺たちに驚いたのか、動物たちはいっせいに逃げて行ってしまった。







数十分後、インベントリの中にある大量の魔力草をみて、ほくほく顔で帰路につく俺たちの姿がそこにあった。

まだ初日なんですよね。このゲーム難易度低くないですか?


まぁ素人じゃないんでちょっとくらい頑張ってもらわないと、ね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ