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10歳
まだ生き残っていた。
これほど生きる、ということが大変だとは思ったことはなかった。
10歳になったが、もう働かせられている。
というより、働かないと食っていけない。
子供でもできる仕事はいくらでもあるのだ。
さぼると容赦ないげんこつが飛んでくる。
子供の権利などこの時代にあるはずもない。
それでも、俺は運が有るのかもしれない。
となりの女の子は売られていった。
厳しい生活に耐えきれなくなったのだ。
親父が人買いが来たと母親と話していた。
もしかしたら、売ろうか相談していたのかもしれない。
今回は逃れられたが、次はどうなるかわからない。
それでも生きていく。
その意思は強くなっていった。