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5歳
次郎は5歳になった。
感慨は特にないがよく生き残ったと思う。
この時代、医者はいないし医学もない。
いや、いても農民なんかが診察を受けることができない。
近所のガキ共はバタバタ死んでいく。
病死、餓死、凍死、いろいろだ。
自分は運がよかったと思う。
しかし、生活はきつい。
家は隙間だらけ。
服はボロボロでほつれたところを何度も継ぎはぎして着ていた。
メシも食えない日が多い。夏は食い物があるが、冬はひもじい日が続く。
一番厄介なのは武士だ。
メシは持っていく、女は持っていく、家は焼き討ちする、ロクなことしない。
羨ましいとも思うが、ガキの体ではどうしようもない。
生きる。
ただ今はそれだけだ。